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【TGS 2010】ミクシィとグリーが大激論~TGSフォーラム「ソーシャルゲームセッション」

2時間という長丁場で専門性の高いセッションが行われる、東京ゲームショウのTGSフォーラム。2日目に開催された「ソーシャルゲームセッション」では、大ブレイクをはたしたソーシャルゲーム市場の現状と見通しについて、熱い議論が繰り広げられました。

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2時間という長丁場で専門性の高いセッションが行われる、東京ゲームショウのTGSフォーラム。2日目に開催された「ソーシャルゲームセッション」では、大ブレイクをはたしたソーシャルゲーム市場の現状と見通しについて、熱い議論が繰り広げられました。

登壇者はミクシィの安部聡氏、グリーの青柳直樹氏、芸者東京エンターテイメントの田中泰生氏で、モデレータは日経ビジネスオンライン副編集長の戸田顕司氏。ミクシィとグリーはSNS事業者で、芸者東京は『おみせやさん』などで人気のSAP(ソーシャルアプリケーションプロバイダー)です。

あえて説明の必要もないと思いますが、ミクシィ、グリー、そしてモバゲータウンは、昨年から今年にかけて相次いでオープン化戦略をとり、SAPの参入を促しました。現在ではさまざまなソーシャルゲームが提供されており、ほとんどが基本プレイ無料のアイテム課金モデルで運営されています。

これに伴い市場も急速に拡大。今年度中に一千億円市場になるという予測もあります。これはPCオンラインゲーム市場や、来のモバイルゲーム市場とほぼ同額。一方で一過性のブームという声も囁かれています。こうした背景もあり、会場はぎっしり満員。熱心な議論にみな耳を傾けていました。

ミクシィ安部聡氏グリー青柳直樹氏芸者東京の田中泰生氏



■ソーシャルグラフプロバイダーへの進化~ミクシィ~

はじめにミクシィの安部氏はさまざまなデータを元に、ミクシィアプリのこれまで分析。さまざまなAPIの取り組みを紹介しました。その上でスマートフォン対応や、多用なアプリケーションとの連動の取り組みを紹介。今後ミクシィは「ソーシャルグラフ・プロバイダー」になるとの姿勢を示しました。

ミクシィアプリは「ソーシャル/ネットワーキングサービスの1つ」で「友人・知人とのコミュニケーションを媒介するもの」・・・安部氏はこのように整理します。アプリランキングでトップ10のうち9アプリが、友人とのコミュニケーションを重点においたもの。ソーシャル性の高いアプリは低いアプリに比べて月間アクティブ率も2倍近く高い・・・これらが裏付けています。

成長の鍵は、いかにバイラル(口コミ)を喚起するための多彩なAPI(OSやプラットフォームにある機能をアプリ側で呼び出す仕組み)を整備し、SAPに活用してもらうか。これまでにも「ボイス連携」「フォト連携」などのAPIを公開してきました。今後も9月末に「ソーシャルギフトを活用するためのリクエストAPI」を予定しています。

またトップページからアプリへの導線の強化や、プロモーション強化、マネタイズ支援、スマートフォン対応の強化などを行うことが示されました。iPhone向けには9月10日より『まちつく!』など9タイトルがスタート。さらにネイティブアプリでの配信についても、iPhone・Android向けに環境が整備中とのことです。

さらに「今後はオープン化第2弾として、外部サイトやデバイス、サービスとの連携を図っていく」と表明。「mixiチェック」の提供や、スマートフォン向けのソーシャル電話帳機能などを展開していくとのことです。その上で単なるSNS事業者から、ソーシャルグラフを軸にさまざまなサービスを提供する、ソーシャルグラフ・プロバイダーに進化するとまとめました。

アプリのトップページを改良予定PC&モバイル、スマートフォンでマネタイズ支援
サービス・デバイス連携でソーシャルグラフ・プロバイダーに(イメージ図)



■市場の成長で「産業化」を達成~グリー~

続いてグリーの青柳氏は、会員数2125万人と国内ナンバー1のSNSを達成したことを紹介。新たな目標として「3000万人以上が利用するプラットフォームになる」ことを示しました。ちなみにこの数はニンテンドーDSの国内出荷台数に相当します。

そのためにはゲームラインアップの拡充が不可欠。これまでグリーでは「釣りスタ!」をはじめ、良質な内製コンテンツと全方位ユーザーを対象としたテレビCMなどで会員数を伸ばしてきましたが、さらなる成長のためオープン化に踏み切りました。青柳氏は2011~12年に本格ソーシャルゲーム時代が到来し、市場規模は数千億円に拡大。「産業」になると予測します。

「信頼される、オープンなプラットフォームをめざし、過度な囲い込みは行わない」「集客・利用・収益化の底上げめざし、サイトの使用・機能追加・改善を繰り返す」「パートナー(SAP)向けデータ提供を充実させ、コンサルティング専門のチームを立ち上げて、情報共有を図る」・・・これがグリーのオープン化に伴うスタンスです。

その上でマーケティング面でのサポートも拡充。年末までに『しろつく』など30本のパートナータイトルで、テレビCMを実施することを明らかにしました。またモバイル広告出稿も拡大。KDDIからパートナー向け特別枠の提供も予定されています。

またスマートフォン対応について、現在はiPhone向けに機能を限定したβ版が公開されていますが、正式版についても2010年中に順次公表していくとのこと。こちらではアバターやゲームなどの機能追加や、Androidでのサポートも予定されています。アジア・北米での事業展開も計画中で、パートナー向け海外展開支援策もあわせて検討中だと語られました。

サイト導線の改良で利用者数、アプリ単価ともに大きな成果が上がった
市場はこの数年で急成長する見通しSAP向けのコンサルティング業務も開始します



■ソーシャルゲームは死語になる!?~芸者東京~

東京ゲームショウ2008でバーチャルフィギュア『電脳フィギュアARis』を出展し、来場者を驚かせた芸者東京エンターテイメント。社長の田中泰生氏は戦略コンサルティング会社を経てテクモに入社、2006年に独立しました。2009年に『おみせやさん』をmixiアプリ向けに配信開始、今年はグリー版も配信を行い、トップ10に入る人気タイトルになっています。

その田中氏はソーシャルゲームのヒットについて「敷居が高い」「初期投資が必要」「飽きたら終わり」というコンソールゲームの問題点が解決された、極めて革新的なサービス形態であるとコメント。ヒットアプリとなった『おみせやさん』についても、ベースとなったのはtwitterでのつぶやきで、古典的な「ゲーム」ではないと解説します。

こうしたアプリ開発を実現するため、同社ではホワイトボード上でプロトタイプを作成し、仕様書などを書かずに一気に開発。開発過程のバージョンを「お茶会」と称して社内外のスタッフに触ってもらい、開発にフィードバックさせるという社内体制を紹介しました。現在は新仕様の追加を行う一方で、ようやくログ解析を行うゆとりも生まれてきたとのことです。

またソーシャルゲームの見通しについては、「かつても『今年こそファミコンブームは終わる』と言われていた」とコメントし、悲観論を一蹴しました。そして「ケータイによる少額決済実現」「ソーシャルメディアの台頭」「可処分所得の減少」という構造的背景を示し、すき間時間を有効活用できるソーシャルエンタテインメント時代の到来を指摘。ヒットアプリの形態は変化していくが、広義の意味での市場拡大は止まらないと分析しました。

ちなみに田中氏は昨今ウェブ上で普及が始まった「コネクト」によって、あらゆるゲーム機やコミュニケーションサービス、IPTVなどが繋がっていくとコメント。それによって「ソーシャルゲーム」は近い将来、死語になると予測しました。また『おみせやさん』の経験を元に開発した新作アプリ『ABATAR2(仮)』『TRAVELLER(仮)』を近く公開すると語りました。

ソーシャルゲームは革命的なサービスゲームのヒントはtwitterからできるだけ早く開発できる体制を整備
ホワイトボードでプロトタイプ作成すき間時間の娯楽産業は拡大する「コネクト」でソーシャルゲームは死後に



■β版の是非が分かれたディスカッション

その後モデレータの戸田氏による司会でパネルディスカッションを実施。ミクシィ安部氏とグリー青柳氏で、ソーシャルゲームのローンチに関して、興味深い議論が行われる一幕もありました。

三者三様で熱心な議論が行われたパネルディスカッション


安部氏はいわゆる「小さく産んで大きく育てる」やり方には疑問があると言います。ソーシャルアプリで一番露出が高いのはローンチ時で、そこでユーザーに失敗体験を感じさせると、尻つぼみで終わる恐れがあるからです。「ソーシャルゲームは100%の状態を長く続けるサービス。ローンチを遅らせてもいいから100%のアプリを持ってきて欲しい」と語ります。

一方で青柳氏は「βリリースは行った方が良い場合もある」とコメント。そもそもソーシャルアプリは一定以上のユーザーが存在しなければ、おもしろさがわかりにくいと語りました。同社の内製プロダクトでもβリリースの反応で、中身をがらっと変えたこともあるとのことです。「ちょっとした改良で大きく成長する」とも指摘。青柳氏が指摘するとおり、ソーシャルゲームが成長途中で、SNSの特性もあるということなのでしょう。

また昨今、問題になりつつある「クローンゲーム」について、安部氏は「ミクシィアプリは友達からの招待が中心で、クローンゲームはバイラルが回りにくい。オリジナルが総取りする傾向もある」と釘を刺しました。青柳氏も「『怪盗ロワイヤル』のクローンが失敗するのは、一定規模のユーザーが必要だから。ユーザーの濃さが必要なのがコミュニケーションゲームの宿命」と安易な開発姿勢を牽制しました。

田中氏はSAPとして、いかに早くアプリを作る態勢を構築できるか努力しているとコメント。社内でもJavaやFlashでゲームが作れる企画者やデザイナー、グラフィックが描けるプログラマーというように、マルチタレントな人材を育成していると明かしました。その上で「世界中のユーザーに自分の考えた悪戯を遊んでもらいたい。それができる時代に生まれた幸運に感謝している」と抱負を語りました。
《小野憲史》
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