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【GDC2012】エキスポブースには大小様々な企業の開発関連製品が、政府ブースも充実

講義と並んで、GDCを訪れる人にとって重要なのがエキスポエリア。大手からベンチャー企業までさまざまな規模のブースが出展しており、著名なゲームエンジンやミドルウェア、ツールなどが、ところせましと展示されています。

ゲームビジネス 開発
例年と同じく入り口脇のベストポジションに陣取ったSCE
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講義と並んで、GDCを訪れる人にとって重要なのがエキスポエリア。大手からベンチャー企業までさまざまな規模のブースが出展しており、著名なゲームエンジンやミドルウェア、ツールなどが、ところせましと展示されています。ゲーム開発環境を支えるこれらの製品群は、ほとんどが海外産とあって、日本のディベロッパーにとっては直接情報を仕入れる良い機会となっています。

会場入り口のベストポジションには、例年どおり右手にSCEの大型ブースが設置されましたが、左手にはゲームエンジンベンダーのクライテック社が同規模のブースを出展しました。アンリアルエンジンやユニティに比べて、今ひとつマニアックかつ地味な印象を受けるクライエンジンですが、巻き返しに力を入れている印象を受けました。その左手には、こちらもおなじみとなった任天堂ブースです。他にゲームエンジン系ではGamebryo、HERO ENGINEなどが見られました。

例年と同じく入り口脇のベストポジションに陣取ったSCESCEの対面にはクライエンジンが精力的にアピール任天堂ブースは3DSなどの最新ゲームをデモ


またツールベンダーと並んで昨今急増しているのが、各国の政府系支援ブース。地元ディベロッパーの海外展開支援や、企業の誘致合戦、イベントのプロモーションなどが激しく行われています。韓国(2団体!)・中国・ドイツ・スコットランド・ノバスコティア州&ニューファンドランド州(カナダ)、北欧などの常連国に加えて、今年は新たにチリがブースを構えました。

チリではゲームデザイン大国になるべく、2年前から国をあげてゲーム産業を支援中。5年前は10社程度しかなかったディベロッパーが、現在は約25-30社に増加しました。数こそ少ないものの、成長率には目を見張るものがあります。2011年にはDeNAがゲーム開発会社のアタカマ・ラブズを買収し、南米初の開発拠点を設けました。担当者に話を聞くと、「チリは日本のゲーム業界に大変興味を持っており、親近感を感じている。ぜひ南米の玄関口になりたい」と熱いメッセージが帰ってきました。

GDCでは初出展となったチリブース韓国は国とソウル市で別々にブースを出展政府系では最大規模となったドイツブース


一方で驚かされたのが「ブラックベリー」でおなじみの、カナダのスマートフォンベンダー、Research In Motion(RIM)が大型ブースを出展し、ゲーム開発者むけにアピールしていたことです。

ブラックベリーは日本ではNTTドコモがサポートしていますが、ビジネスマン向けの情報端末というイメージが強く、ゲームアプリの存在もほとんど知られていません。しかしブースでは7インチのフルタッチパネル液晶端末を中心にゲームのデモが行われ、ディベロッパー向けの講演を行って開発資料を配付していたほどです。

ブラックベリーと言えばノキアと共に市場の覇者でありながら、スマートフォン市場の流れを読み切れず、iOSやAndroidにシェアを急速に奪われています。これに対してノキアはかつてのライバル、マイクロソフトと提携を発表。ブラックベリーもゲーム開発者を取り込むことで、ブランドの再定義と付加価値の向上をめざしているように感じられました。GDCのモバイルゲーム開発に関する講演でも、しばしば遡上にのぼっており、今後の動向が注目されます。

ブラックベリーがゲーム機としての存在感をアピール 7インチ端末と大型ディスプレイをミラーリング展示ブラックベリー=ビジネス端末の固定概念を否定


このほかエキスポ会場で出展はありませんでしたが、Amazonが昨年11月に発売したAndroid端末「キンドル・ファイア」についても、講演中で何度か議論が聞かれました。GDC会場の外ではアップルが新型iPadを発表するなど、スマートフォン・タブレットはゲーム開発者にとって、ますます重要なプラットフォームになりそうです。

一方エキスポの中でもひときわ人口密度が高いのが、インディ(独立系)ゲームの祭典、インディゲームフェスティバルで入選したタイトルを集めた試遊コーナーです。ゲームを遊んだり、制作者とゲーム談義をしたりと、ここだけ「学園祭」といった感覚。中でもテクノロジー部門を受賞した『ANTICHAMBER』と、NUEVO AWARDの『Storyteller』は、ともに東京ゲームショウで開催される「センスオブワンダーナイト(SOWN)」で入選した経歴があります。ブースを訪ねると、どちらも当時の経験を懐かしく語ってくれました。

特に『ANTICHAMBER』の開発者、Alexander Bruce氏は「SOWN2009」の応募作品『Hazard — The Journey Of Life』の入選をきっかけに、プロのインディゲーム開発者になる決心を決めたと語ったほど。おそらく同じような人生を辿る人がこのブースから大勢、出てくるのではないでしょうか。

常に人でごったがえしていたインディブース『ANTICHAMBER』の開発者、Alexander Bruce氏『Storyteller』の開発者、Daniel Benmergui氏


また大手だけでなく、ベンチャー企業からも意外な技術や製品が飛び出してくるのも、エキスポのおもしろいところです。今年は日本からユビキタスエンターテイメントがブースを出展し、同社のHTML5+JavaScriptベースのゲームエンジン「enchant,js」をアピール。ブース前では特定のテーマにそって9分間でミニゲームを作る、即興のライブバトル大会が行われ、会場の注目を集めていました。

最後に会場で思わず目を見張った製品を紹介しましょう。シリコンバレーのベンチャー企業、infinite Z社が開発した3Dディスプレイ「z space」です。24インチの特製HDディスプレイと3Dメガネ、レーザーセンサー付きペンデバイスの組み合わせで、モニター上にS3Dで表示された映像を見ながら、ペンデバイスで奥行き情報を加味した入力操作を可能にしています。



ブースでは画面上のアイテムをペンでクリックして手前に、奥にと自由自在に動かしたり、建物の外壁をなぞって断面図を切り替えるなどのデモを行っていました。画面との距離はペンデバイスから照射されるレーザーで計測され、奥行き感にまごつくこともありません。ようやく本格的で直感的な3D UIが登場してきたという印象を受けました。

「z space」は昨年11月にオートデスク社のイベントで登場したばかり。GDCでゲーム開発者むけにアピールすることで、どのような化学反応を起こすのでしょうか。今後の展開に期待したいところです。

初出展のUBIは9分間のライブコーディング大会を開催同じくベンチャーのinfinite Z社が「z space」を展示レーザーペンデバイスを用いたUI操作は想像以上にスムーズ
《小野憲史》
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