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弦楽器の音色で味わうクリスタルの輝き。『FF3』と『FF9』の演奏会「Melodies of Crystal」レポート

ゲーム音楽演奏団体「Melodies of Crystal」の第一回演奏会が、2012年12月16日に東京・練馬区の練馬文化センターで開催されました。その模様をレポートします。

その他 全般
オニオン弦楽合奏団の皆さん
  • オニオン弦楽合奏団の皆さん
  • 会場の練馬文化センター
  • ホール前には行列が
  • 弦楽器の音色で味わうクリスタルの輝き。『FF3』と『FF9』の演奏会「Melodies of Crystal」レポート
  • さらに伸びる行列
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  • ロゴのデザインが初期のFFを彷彿とさせます
ゲーム音楽演奏団体「Melodies of Crystal」の第一回演奏会が、2012年12月16日に東京・練馬区の練馬文化センターで開催されました。その模様をレポートします。

この「Melodies of Crystal」(以下、MoC)は、『ファイナルファンタジーIII』(以下『FF3』)および、『ファイナルファンタジーIX』(以下『FF9』)の楽曲を、弦楽合奏や室内オーケストラで演奏するというものです。演奏会は二部構成となっており、お昼開催の第一部では『FF3』が、夜開催の第二部では『FF9』が演奏されました。また、第二部では『FF9』のほかに、アンサンブルによる『勇者のくせになまいきだ:3D』の楽曲も披露されました。

演奏規模としてはフルオーケストラより小さめながらも、ゲーム音楽を愛する実力派奏者が集い、熱のこもった演奏が繰り広げられました。本記事では、第一部と第二部、両方の模様をお届けいたします。


会場の練馬文化センターには、開場前から長蛇の列! 座席数600弱のホールはほぼ満員となっていました。

第一部は、『FF3』をこよなく愛するアマチュア弦楽器奏者と、音大生・音大卒業生によって結成された楽団「オニオン弦楽合奏団」による『FF3』の演奏です。プログラムは、『FF3』の楽曲を全十一楽章の組曲形式で構成し、ゲームの進行に沿ったものとなっていました。なんと42曲という、『FF3』サントラのほぼすべての楽曲が網羅され、観客は『FF3』という作品を音で追体験するかのように楽しむことができたのです。


≪「Melodies of Crystal」第一回演奏会 プログラム≫

【第一部】
■ファイナルファンタジーIIIより
(作曲:植松伸夫 演奏:オニオン弦楽合奏団)

第一楽章
プレリュードおよびFF3の断片による序奏 - バトル1

第二楽章
オープニング・テーマ - 故郷の街ウル - 悠久の風 - 小人の村トーザス - 古代人の村

第三楽章
ギザールの野菜 - チョコボのテーマ - でぶチョコボあらわる

第四楽章
山頂への道 - ネプト神殿 - オーエンの塔 - ハインの城

第五楽章
ジンの呪い - バトル2

第六楽章
レクイエム - エンタープライズ海を行く - エンタープライズ空を飛ぶ - 果てしなき大海原 - 水の巫女エリア

第七楽章
アムルの街 - 4人組じいさんのテーマ - 隠れ村ファルガバード - 巨人都市サロニア - 勇者の帰還

第八楽章
ドーガとウネの館 - 潜水艇ノーチラス - 海底神殿 - ノアのリュート - ウネの体操

第九楽章
巨大戦艦インビンシブル

第十楽章
クリスタルのある洞窟 - クリスタルタワー - 禁断の地エウレカ - 最後の死闘 - 闇のクリスタル

第十一楽章
エンディング・テーマ

アンコール
ピアノのおけいこ1 - ピアノのおけいこ2 - スイフト・ツイスト


MCは一切なく、全編が“『FF3』の楽曲を弦楽器の音色のみで演奏する”ことだけで構成されていました。そのため観客は最初から最後まで、幻想的で艶やかな弦の音をじっくりと集中して味わうことができ、悠久の風が吹く『FF3』の深遠なファンタジー世界へと誘われたのでした。

この演奏会で特筆すべき点は、編曲です。全体を通して、ある曲の中に異なる曲が織り交ぜられていたりと、非常に巧みな編曲がなされていました。「巨大戦艦インビンシブル」に「悠久の風」のメロディが自然に混ざっていたり、「最後の死闘」の途中で「バトル2」や「果てしなき大海原」が入ってきたり…。感心して思わずうなってしまうほど凝った編曲になっており、聴いていて非常に面白く、気持ちのよいものでした。この編曲はMoC代表の大澤久氏がすべて担当されたそうですが、氏のゲーム音楽に対する深い愛がなせるものと言えるでしょう。

アンコールでは、指揮者も務めた大澤氏がソロでヴァイオリンを披露。…と思いきや、演奏されたのは「ピアノのおけいこ」! ゲームの一幕で見ることができる、へたっぴな演奏がヴァイオリンで再現されており、観客からは大きな笑いが起こっていました。間髪を入れずに演奏されたのは「スイフト・ツイスト」! ノリのいいこの曲は、観客からの手拍子も入って、第一部を楽しい雰囲気で締めくくっていました。


第一部の終演から数時間後。とっぷり夜も更けて、第二部の開始です。こちらも多くの人でにぎわい、当日券を含めて、チケットは完売となっていました。

≪「Melodies of Crystal」第一回演奏会 プログラム≫

【第二部】

■『勇者のくせになまいきだ:3D』よりメドレー
(作曲:はまたけし、坂本英城)

すべてのはじまり:3D
手のひらの世界       
はじまりはいつもダンジョン
ダンジョンは上々だ      
魔王を守れのテーマ:3D   
眠る魔王          
悪のトライアングル     
ファイナル・ギャザリング!
来たるべきセカイ

第二部でまず演奏されたのは、アンサンブル演奏による『勇者のくせになまいきだ:3D』のメドレーです。金管および木管楽器の10名ほどのメンバーによって、『勇なま』のやさしくメロディアスな楽曲が披露されました。

休憩を挟んで、お次は『FF9』! ゲーム音楽をこよなく愛する音楽大学の在学生、卒業生によって今回のために結成された楽団「シュデンゲン室内管弦楽団」による演奏です。演奏前の大澤氏の挨拶によると、今回のプログラム構成は、『FF9』の登場キャラクターのひとりである黒魔道士「ビビ」に焦点を当てたものになっているとのことです。大澤氏からは、ビビというキャラクターから見た音楽を味わってもらったうえで、最後の「Melodies of Life」では、ぜひ観客のみなさんで歌ってほしいとの呼びかけがありました。


■ファイナルファンタジーIXより
(作曲:植松伸夫 演奏:シュデンゲン室内管弦楽団)

1.いつか帰るところ I
2.バトル1
3.いつか帰るところ II
4.ビビのテーマ
5.プリマビスタ楽団~ジタンのテーマ~ガーネットのテーマ
6.いつか帰るところ III
7.隠者の書庫ダゲレオ
8.モーグリのテーマ
9.ローズ・オブ・メイ
10.いつか帰るところ IV
11.Vamo'alla flamenco
12.銀竜戦
13.Melodies of Life
アンコール.眠らない街 トレノ


『FF9』の代表曲「いつか帰るところ」は、4つのアレンジパターンで演奏されました。不安定なアレンジになったり、せつない表情のアレンジになったりと…自らが生きる意味について悩むビビの心情を表現しているかのようです。

「ビビのテーマ」では、奏者のみなさんが手で自分のふとももを叩いたり、指を鳴らしたりといった方法で音を出す場面も。ビビが舞台袖からトコトコと歩いてきそうなほど、原曲のかわいらしさがよく再現されていました。

ラストの「Melodies of Life」では、大澤氏の呼びかけに応えた観客たちが、演奏にあわせて大合唱しました。500人以上もの人数で歌う「Melodies of Life」は、会場をやさしく包み込むようなあたたかさに満ちていました。力強いメッセージが込められた歌詞も、じんわりと心に沁み入ってきます。涙を拭う方も見受けられました。プログラムには表記されていなかったものの、続けて演奏されたのは「ファイナルファンタジー」。もちろん『FF9』のバージョンです。ゲームをプレイした方は、思わずエンディングを思い返し、胸を熱くさせた方も多かったのではないでしょうか。

アンコールで演奏されたのは「眠らない街 トレノ」。原曲はピアノの穏やかな曲で、はじめはそれに沿ったスローテンポの穏やかな曲調でした。しかし最後はテンポが早くなり、楽しげなアレンジに! 演奏終了とともに拍手が巻き起こり、演奏会は閉幕となりました。


MoC代表の大澤氏は、とにかくゲームが大好きなのだそうです。また、第一部・二部ともに、MoCの奏者の方々は全員“ゲームが好き”という思いは同じとのことで、各作品への愛が、編曲からも演奏からもあふれていました。

凝った編曲、そして弦楽合奏や室内オーケストラという表現手段によって、新たなかたちでのゲーム音楽演奏会となったMoC。今回「第一回」とのことですので、ぜひ第二回の演奏会開催を期待したいと思います。
《hide/永芳英敬》
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