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150ヵ国で展開するソーシャルゲーム『Warriors of Odin』成功の秘密とは? gloopsの開発陣に直撃

日本を代表するソーシャルゲームデベロッパーの一つ、gloops(グループス)。主に「Mobage」プラットフォーム向けにゲームを開発していますが、その中の一つ『大連携!!オーディンバトル』は国内市場のみならず海外でも多くのユーザーを抱えます。

ゲームビジネス その他
『Warriors of Odin』タイトル画面
  • 『Warriors of Odin』タイトル画面
  • ソーシャルゲームを代表する企業の一つgloops
  • 制作を統括する板垣護氏
  • ディレクターを務める築地聡氏
  • インフラを担当する富樫英雅氏
  • 150ヵ国で展開するソーシャルゲーム『Warriors of Odin』成功の秘密とは? gloopsの開発陣に直撃
日本を代表するソーシャルゲームデベロッパーの一つ、gloops(グループス)。主に「Mobage」プラットフォーム向けにゲームを開発していますが、その中の一つ『大連携!!オーディンバトル』は国内市場で大きなヒットを記録しているだけでなく、海外でも『Warriors of Odin』としてリリース。北米と欧州を中心に150以上の国と地域でリリースされ、多くのユーザーを獲得しています。本インタビューでは海外展開に当たっての苦労やポイント、そしてGMOインターネットが提供する「GMOアプリクラウド」を利用したサーバー環境について聞きました。

板垣護
ソーシャルゲーム事業本部 コンテンツ運営部 Native企画部門 マネージャー
『Warriors of Odin』を含めたさまざまなネイティブアプリを統括している。

築地聡
ソーシャルゲーム事業本部 コンテンツ運営部 Native企画部門 Warriors of Odinチーム
『Warriors of Odin』のディレクターを務める。

富樫英雅
ソーシャルゲーム事業本部 システム基盤部 インフラグループ インフラエンジニア
サンフランシスコオフィスで、『Warriors of Odin』のインフラ担当をしている。

■国内でヒットしたタイトルで海外へ

―――まず『Warriors of Odin』の概要を教えていただけますか?

築地: 北欧神話をベースとした、リアルタイムバトルが楽しめるソーシャルゲームです。月に1度「ラグナロク」という闇の軍勢が攻めてくる大きなバトルが行われるので、ユーザーはそれに向けて毎日定期的に行われるバトルイベントに参加していただきます。日本版である『大連携!!オーディンバトル』と、基本的な部分は変わっていませんね。

板垣:オリジナルとなっている『大連携!!オーディンバトル』は元々、コアゲーマーをターゲットに作ったタイトルです。その辺りが、日本で人気が出た要因かもしれません。

―――gloopsでは数多くのタイトルをリリースしていますが、その中から『大連携!!オーディンバトル』が海外進出タイトルとして選ばれた理由は何でしょうか。

築地:やはり、多くのユーザーに長く遊んでいただいているという点ですね。さらには、これまで海外へ進出しているタイトルとは少し趣が違うタイトルなので、これならば先駆者になれるだろうという意図もありました。

―――北欧神話をテーマにしていますが、最初から海外展開を視野に入れていたのでしょうか。

築地:そういう意図はなかったですね。ただ、オーディンやトールなどは海外でも認知度がありますので、結果的にうまく繋がってよかったな、という感じです(笑)。

―――海外向けとしての『Warriors of Odin』を制作する際に、気をつけた点などはありますでしょうか。

築地:英語圏の方に向けてリリースするので、文化的・言語的な違いをふまえて、画面のUIレイアウトやイラストを変更しております。また、イベント開始時間や回数などを、各国の状況に合わせて調整しています。本作はリアルタイムバトルが特徴となっていますが、世界各国でタイムゾーンが異なりますので、その辺りの表記なども気を配りました。コミュニティでも時間帯が異なるとコミュニケーションが困難になりますので、なるべく同じタイムゾーンのユーザーをレコメンドするような工夫もあります。

―――インフラ関連についてお伺いします。『Warriors of Odin』のインフラ構成は、どのような形になっているのでしょうか。

富樫:日本における『大連携!!オーディンバトル』とほぼ同じ構成のサーバーを、アメリカに置いています。GMOインターネットさんの「GMOアプリクラウド」を採用しているのですが、かなり柔軟に対応してもらったので、スムーズにリリースすることができました。

―――GMOアプリクラウドを採用した理由はどこにありますか?

富樫:海外展開するにあたり、今回も自社運用でということはあまり考えていませんでした。そこでいくつかサービスを検討したのですが、GMOさんではFusion-io ioDrive Duoを用意していただけるというお話をいただいて決めました。そのほか、柔軟で手厚いサポートがあったという点も大きいですね。

―――日本と構成が違う部分はありますか?

富樫:日本ではデータセンターを借りて、完全に自社運用しています。『Warriors of Odin』については、仮想化できる部分は仮想化し、物理的に運用したい分は物理的にやるというハイブリッドな体制でやっています。

―――海外展開するにあたり、インフラ面で苦労した面はありますか?

富樫:それは……あまりないかもしれません。納品がギリギリになってしまったんですが、それでもリリースは問題なく間に合いましたし。繰り返しになりますが、やはりGMOさんのサポートがありがたかったです。

―――サーバーの運用体制はどうなっているのでしょうか。

富樫:日本では全てのサービスを10名程度で運用していますが、アメリカのサーバは基本的に私一人で見ています。
過渡期などは日本側のエンジニアからサポートしてもらっているという状態です。

―――インフラ面で、今後の課題と考えている点はありますか。

富樫:国や地域によって通信状態が異なるので、どうしても快適さに欠ける部分が出てきてしまいます。そこをどう解消するのか、が今後の課題ですね。Wi-Fiが普及している国もあれば、3G回線もかなり厳しいという国もあります。

築地:ただ、例えば通信回数を減らしてプレイできるようにするなど、インフラ整備に頼らない解消の仕方もあると思います。本作は中身はブラウザアプリに近い作りになっていますが、もっとネイティブ化することで通信頻度を減らすというような事もできるでしょう。ここは改善できる領域だと思っています。

―――続いて、ソフトウェア関連でお伺いします。海外版ではレイアウトやイラストを変更しているというお話ですが、具体的にはどのような変更をしているのでしょうか。

築地:イラストについては、多様性を持たせるという形で対応しています。日本版で登場しているイラストもありますが、例えばアメリカ向けにはアメリカで受け入れられやすいものを追加するといった事をやっています。これは地域によって、色々なイラストのカードが使われるという面白さにも繋がったと考えています。また、フィーチャーフォンのゲームに親しんでこなかった国では縦長画面を見慣れていないユーザーが多く、「画面を下にスクロールする」という習慣がない国も多く驚きました。画面の下の方に置いていると全く気付かれなかったりして。なので、下に何かを配置する時はそれを明確に示すマークを付けるなど、工夫をしています。

―――日本のユーザーと海外のユーザーで、プレイスタイルは変わるのでしょうか。

築地:生活パターンの違いからくる相違点が多いですね。毎日、電車通勤というスタイルが150ヶ国すべて同様であるとは考えられません。なので、短い時間で何度もプレイするよりも、ある程度時間をかけてしっかり遊ぶ人が多いです。細切れの時間で楽しめるような作り方は日本以外には通用しないんじゃないでしょうか。給与の受け取り方や生活費の支払い方法が異なる可能性がありますので、課金額なども異なってくるでしょう。ただし、マネタイズのポイントは日本とそう変わらないと感じています。

―――『Warriors of Odin』の具体的な今後の展開について教えていただけますか?

板垣:大々的にプロモーションを行う、というのはまだ先だと考えています。お話したように、日本と海外ではいろいろと異なる点があり、まだまだユーザーに楽しんでもらえるよう改善するポイントは出てくるでしょう。そこをクリアして、ユーザーが長くプレイしてもらえるようになったら、その後にユーザーを増やすステップに移りたいと思っています。具体的には、ライフタイムバリュー(LTV)が一定値に達した段階ですね。

―――『Warriors of Odin』を含め、今後多くのタイトルを海外展開していくと思いますが、そこへ向けての意気込みや展望、目標などがあれば教えてください。

富樫:インフラ面では、『Warriors of Odin』もそうなのですが、世界中のユーザーが快適に遊べるようにする、というのが目標です。

築地:今運営しているコンテンツのクオリティーを上げて、「GooglePlay」や「AppStore」の上位に入ってくること。そして、後続のアプリと連携して、gloopsの名前を多くのユーザーに知ってほしいと思っています。

板垣:これからはスマートフォン向けのアプリが全盛になり、海外を視野に入れることも多くなるとも思います。そこで、全世界で楽しんでもらえるアプリを生み出していけるようにしたいですね。

―――本日はありがとうございました。
《恩田竜太郎》
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