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【GDC 2013】アフリカ勢が初参戦!知られざるアフリカ・ゲーム産業の現状と地元ディベロッパーの取り組みとは?

グローバル化が進むゲーム業界で、最新情報が集約するのがGDCのローカリゼーションサミットです。

ゲームビジネス その他
CTOのEyram Tawia氏
  • CTOのEyram Tawia氏
  • CEOのWeslsy Kirinya氏
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グローバル化が進むゲーム業界で、最新情報が集約するのがGDCのローカリゼーションサミットです。2009年では中東のディベロッパーが登壇し、注目を集めました。これが本年は初めてアフリカのディベロッパーが参加。「The Emerging Landscape of African Game Development」と題して講演し、アフリカ諸国がいよいよ本格的にゲーム業界に参入してきたことを印象づけました。

この記念すべき講演を行ったのは、ガーナのディベロッパー、Leti GamesのEyram Tawia氏とWeslsy Kirinya氏です。二人はアフリカの市場規模や人気ゲームの傾向、協会やゲームイベントなどの存在などについて説明し、欧米諸国のディベロッパーに参入を促しました。

一口にアフリカといっても55カ国・地域が存在し、人口は約10億人、約3000種類の文化が存在する広大な地域です。90年代までは日本製の家庭用ゲーム機(の海賊版)が希に見かけられる程度でしたが、2003年にアフリカ初のSNSサービス「MXIT」(南アフリカ)がサービスインし、徐々にIT化の波が押し寄せていきました。2005年にはUBIが南アフリカにスタジオを設置。徐々に地元企業も頭角を現し始めます。

こうした中でLeti Gamesが起業し、iPhoneアプリでアクションゲーム『iWarrior』をリリースしたのは2009年です。2012年にはアフリカで初となるブラウザゲームベンダー・Maliyo(ナイジェリア)も起業しています。このように現状はスマートフォン(特にAndroid)とブラウザゲームが中心的なプラットフォームだと紹介されました。

続いてアフリカ全土の携帯電話普及台数は通話オンリーが44億台、フィーチャーフォンとスマートフォンが10億台ずつで、年間増加率は60%と50%と、共に高い数値となっています。2011年の携帯電話の課金額はアフリカ全土で610億ドルにのぼり、なんと北米の305億ドルの約2倍にまで成長。インターネット帯域幅も2014年には90テラビットに達すると予測されています。

一方で国や地域ごとに文化が細分化されているのも特徴です。主にエジプトや南アフリカといった南北に位置する国々では、欧米風のリアルなグラフィックが人気。ナイジェリアやウガンダといった東西に位置する国々では、よりアフリカ色の強いグラフィックが好まれる傾向にあります。言語もかつての宗主国の影響を受け、英語かフランス語が公用語の地域が多い一方で、スワヒリ語、アラビア語を使用する国々も多く、多種多様とのこと。一口に「アフリカ」とくくるのは乱暴すぎるということが、改めて強調されました。

気になるアプリのダウンロード数は、Kola Studio(ウガンダ)のAndroid向けカジノアプリ『Matatu』でダウンロード数が約6500本、デイリーユーザーが約2万人で、75%以上がウガンダのユーザー。Leti Gamesの『iWarrior』で、無料版が8000本以上、有料版が3000本以上で、75%以上がアメリカからのアクセスとのことです。この数が多いか少ないかは、貨幣価値も違うことから一概に言えませんが、着実に地元に企業が根付きつつあるといえるでしょう。

決済手段はGoogle Playも存在しますが、それよりも民間の課金決済サービスが使われる例が一般的で、中には自社で決済サイトを立ち上げる企業も少なくないとのこと。人気のゲームジャンルは「1:シリアスゲーム」「2:プラットフォーマー(=ジャンプアクション)」「3:カジュアルゲーム」「4:パズルゲーム」だとされました。

ちなみに本講演からは外れますが、下記サイトではアフリカ産のトップ10人気ゲームとして、こういったタイトルも紹介されています(http://akorra.com/2011/07/10/top-10-african-video-games/)。MMORPGからカジュアルまで、多彩なゲームが存在することが分かります。

一方で国・地域ごとにIGDAの支部が存在し、さまざまな活動が行われている様も紹介されました。IGDAセネガル、IGDAナイジェリア、IGDAガーナ、IGDAケープタウン、IGDAヨハネスブルグです。

ゲームイベントも毎年10月に開催され、約2000人が56時間もの間、ノンストップでゲームを楽しむLANパーティの「rAge」(ヨハネスブルグ)、今年で4回目を迎え、約400人が参加した「Naija Game evo」(ガーナ)、カンファレンスやワークショップも開催された国際イベント「Gamecamp」(コートジボワール)など、各国でさまざまなイベントが開催されています。

このほかBritish CouncilやMeltwater Foundationといった団体が、地域のゲーム産業を支援していることも紹介されました。またIGDA本体とIGDAナイジェリア、そしてLeti Gamesが中心となって、新たにAGC(African Game Conference)というイベントも企画されています。

ただし課題も少なくありません。まず開発側では圧倒的な人材不足があります。市場もまだ芽生えたばかりで、各国・地域ごとに細分化されているため、なかなかスケールメリットが出ないのが現状です。もっともゲーム企業はこれから各地で増加傾向にあるとのこと。また高度な専門スキルをもった人材も次第に排出されていく見通しが語られました。

そのうえで欧米企業に対しては「1:ファンドや投資」「2:ゲームの販売や流通」「3:コミックや映画などのクロスメディア展開ができる企業や、ローカライズ企業」「4:コンサルティングや契約支援」といった分野で成功する確率が高いのではないか、とのこと。積極的な参入を呼びかけました。

ちなみにLeti Gamesでは教育とゲームの融合をコンセプトに、ゲームを中心としたクロスメディア展開を進めているそうです。代表作の『Leti Legends Africa’s Hope』は、エジプトのファラオや、13西紀にマリ帝国を建設した伝説的創始者のスンジャータ・ケイタ、19世紀に南アフリカで栄えたズールー王国の初代国王シャカ・ズールーらが活躍するもので、現代風にアレンジされたデザインになっている点が特徴。コミックを楽みながら、アフリカの歴史が学べる作りになっています。

講演は最後に「自分たちはゲーム会社を作るだけでなく、アフリカにゲーム産業を作り上げたい」と述べられて締めくくられました。会場全体が大きな拍手でつつまれたことは、言うまでもありません。
《小野憲史》
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