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【GDC 2013】CD Projekt REDが説く“メルセデス型”ノンリニアストーリー性の構築法

今年に入り、シリーズ累計セールスが500万本を突破した、ポーランド産アクションRPGシリーズ『The Witcher』。

ゲームビジネス 開発
【GDC 2013】CD Projekt REDが説く“メルセデス型”ノンリニアストーリー性の構築法
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今年に入り、シリーズ累計セールスが500万本を突破した、ポーランド産アクションRPGシリーズ『The Witcher』。

GDC開催3日目、開発元CD Projekt REDのMateusz Tomaszkiewicz氏とMarcin Blacha氏が、“ノンリニア”なストーリー性を持つゲームを作る上での、これまでの開発経験から得られたデザイン方法や知識をレクチャーしました。

そもそもノンリニアとは何なのか、どのような利点があるのか。話はそこからスタートします。ノンリニアとは1本道ではない枝分かれするストーリーの描き方で、プレイヤーの選択(Choice)によって異なる結果(Consequence)が用意、それによってゲームワールドへの没入感が生まれ、プレイヤー自身が物語を紡ぎ出すような体験を与えます。

ストーリー上に分岐を用意する上で、まず重要なのは、「正解 or 間違い」という単純な選択肢にせず、プレイヤーにジレンマを与えるような両義性のあるものにすること。重要な結果は、展開を予想されないようにできるだけ遅らせることで、ゲームの構造にも深みが出る。ただし、結果を遅らせ過ぎるとプレイヤーが選んだ選択肢を忘れてしまうことがあるので、途中で何度かにわたってフラッシュバックの演出を挿入するのが望ましい。

枝分かれしたストーリーは各々を膨らませてさらに厚みを持たすことができますが、以下の様な問題が生じます。

・いくら枝分かれしてもプレイヤーが辿る道はいずれか1つなのでゲームプレイ時間は増えない。
・開発に時間がかかる。
・ たくさん枝分かれすることでそれぞれを終了(Close)させるのが困難。

そこでCD Projekt REDが考えたソリューションは、“コントロールノード”というポイントを設け、枝分かれした複数のストーリーを一旦収束させること。さらに、その延長線上で、メルセデス型のストーリー構造が考え出されました。

その名の通り、メルセデス・ベンツのシンボルであるスリーポインテッドスターの形を軸としたもので、ストーリーのゴールが中心にあり、外側の円から複数のストーリーラインが連結するという構造。たくさん枝分かれしても最終的に1つの地点に収束し、またプレイヤーが好きな順番で複数のストーリーラインを辿ることができる仕組みにすれば、ゲームプレイ時間も増加します。

しかしここにも問題点が。メルセデス型に枝分かれした複数のストーリーラインは、パラレルワールド的な位置づけになるので、同じNPCを別々のラインで使い回せない。この点が、本セッションに“メルセデスの中のシュレーディンガーの猫(Schrodinger's Cat in a Mercedes)”という演題が付けられている由縁です。

他にも、自由度が高すぎてゲームプレイバランスの調整やストーリー同士の関連性を持たせるのが困難、あとから削除や追加がしづらい、そしてプレイヤーがメインプロットを忘れてしまうといった心配があり、それに対する別の対抗策が、“Replacer(代役)”の存在。Replacerとは主人公とは別のプレイアブルキャラクターを登場させる手法で、次のような利点があります。

・ 主人公ではないためストーリーの描き方に無限の可能性がある。
・ あるプロットを別の視点から描くことができる。
・ 主人公が参加していないイベントをインタラクティブな形で体験できる。

また、Replacerだけでなく、過去の時間軸を描く“Reverse Chronology”という手法も解説。複雑なストーリーを伝えるのに便利で、素早くプレイヤーの興味を引くことができ、Tomaszkiewicz氏は、『Uncharted 2』(ネイトの子供時代)や『To The Moon』を、この手法をうまく取り入れた作品としてスライドで紹介しました。

とはいえReplacerやReverse Chronologyにも、プレイヤーが混乱してしまったり、タイムパラドックスが発生したり、アイテム入手やキャラクターの成長を本編に関連させられないといった短所があるため、やはりデザイナーのさじ加減が大切だと言えます。

ノンリニアのストーリー性は、一本道のストーリーに比べ、デザインするのが困難でデバッグにも時間がかかるなど代償が大きいとTomaszkiewicz氏。今回の講演でも、その技術やテクニックはまだ試行錯誤のレベルであることが伺えました。しかしCD Projekt REDのヒット作『The Witcher 2』では紹介されたノンリニアのストーリー手法が既に多数取り入れられており、同スタジオの次回作である『The Witcher 3』や『Cyberpunk 2077』ではどのようにして昇華されているのか、期待せずにいられません。
《谷理央》
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