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フェイスブックとも"共闘"でVRを盛り上げていきたい、改めてSCE吉田修平氏に聞く「プロジェクト モーフィアス」

3月にサンフランシスコで開催された、世界最大のゲーム開発者向けカンファレンスイベントGDCにてSCE ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏らによって発表された“Project Morpheus”(以下プロジェクト モーフィアス)について改めて吉田氏を直撃しました。

ソニー PS4
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―――そうなるとプロジェクト モーフィアス=ゲームエンタテインメントじゃないものをも開拓できますね。

そうですね。VRは新しい産業を開拓するのに匹敵するポテンシャルがあります。最初はPS4もプロジェクト モーフィアスも必要で、新しい体験が大好きな人をターゲットに考えていますが、深海探検を楽しめるデモ『THE DEEP』を体験すれば分かるように、ゲーマーではない人も楽しめるものになっています。博物館で展示している恐竜の骨格を等身大のサイズで体験するなど、魅力的で新しい使われ方が出来れば面白いと思います。

―――映画で「ナイトミュージアム」という作品があって、博物館に飾っている恐竜や歴史的な立像が、夜な夜なうごき出すという作品があるんですが、そういう感じの演出を、プロジェクト モーフィアスを使って、博物館で体験ができるようになると面白いですね。ゲーム体験のみならずあらゆるエンタメ体験にVRの演出ができる新しいデバイスだと思います。

プロジェクト モーフィアスのプロトタイプを開発していて思うんですけど、たとえばクルマのレースゲームに使用したとき、運転席でクルマを走らせているのも楽しいけど、クルマを止めて外へ出て、景色を楽しむということもありますよね。自分の車を外から眺めるという経験です。あとはカッコいいスポーツカーを保有してみたりとか、自分のバーチャルガレージにクラシックカーを保管して愛でるとか、ドライブしたりというのがいいと思うんですね。

あとオキュラス・リフトのデモ映像にもあったんですが、自分が学校の先生になって、教壇にたって、女生徒の視線を一身に受けるというデモがありますね。それも面白いと思います。

―――初音ミクのデモ映像とかもありますね。

■フェイスブックとは「共闘」関係です。

好きな人たちや愛でる対象が手に入るとか、その関係性が近くなるということにVRのユニバーサル(世界共通)なバリューがあると思うんです。ですからGDCでプロジェクト モーフィアスを発表して様々な業種の方々からお声掛けをいただいております。それは、とてもうれしいことですね。

そうやって、いろいろなところでオキュラスリフトやプロジェクト モーフィアスが使われだして、VRに触れる方を増やすことで、VRの存在に気づいてもらうという意味で、オキュラス・リフトとは協業ではなくて「共闘」関係ですね。

―――なるほど「共闘」関係ですね。御社のプロモーションコンセプトですね。笑)

そうですね。どっちから入っていただいても、お互いのためになるというのが現在の状況です。ゲームで言えばインディーズ系の方はオキュラス・リフトで開発していますが、PS4はPCベースのアーキテクチャーですのでプロジェクト モーフィアスに比較的簡易に移植ができると思います。

―――SCEさんは、「インディーストリーム」を推進していますが、プロジェクト モーフィアスにもインディーズ系メーカーが簡単にエントリーできるようになっているのでしょうか。今の印象はメジャースタジオや海外スタジオが主に開発しているように見えますが?

GDCまでは、開発環境やツールの数が限られていました。つまり手造り的にやっていたんです。しかし、今はGDCで展示したキットを幅広く提供できるようになっています。インディーズのほうが発想にオリジナリティがあると思いますし、ブレイクスルーしたコンセプトのものが多くありそうですね。大手とガチンコで勝負するというよりも、発想で抜きんでているものを感じますので、積極的に参加してほしいと思っています。

■ソーシャルスクリーンは周りの人たちを巻き込むソーシャル要素です。

実はプロジェクト モーフィアスには「ソーシャルスクリーン」という機能があります。画面に普通の再現映像が出ているですが、実はオキュラスさんなど他社さんは、複眼の画面になっていることをご存知ですよね?

―――はい、あ、そういえば、今まで、当り前のように画面を見ていましたが、確かにそうですね。プロジェクト モーフィアスの再現された画面は、普通の画面ですね。オキュラスの画面は、複眼のメガネの画面みたいになっていますね。全く意識していませんでした。

でしょ!!(笑)。そうなんですよ。実はプロジェクト モーフィアスの体験者の周りにいる人にもわかりやすくなっているんです。VRだからと言ってパーソナルな体験だけに終わらせたくないんですよ。VR体験をしている人が「なんか、すごい変な人」みたいに見られたくないんですね。VRをみんなで楽しめるものにしたいんです。

プロジェクト モーフィアスはヘッドマウントユニット単体じゃなくて、プロセッサーユニットというものがあります。その組み合わせで動いています。PS4のほうではオキュラス・リフトと同じく、複眼向けの映像を生成していますが、PS4に繋いだプロセッサーユニットで片目分の映像を取り出して、普通の平たいスクリーン向けに映像を直して送っているのです。

―――おお、なるほど、それはすごいですね。複眼から単眼にコンバートしているんですね。

これは、周りにいる人にもVR体験をしてもらいたかったからなんですよ。また、『THE DEEP』にもVR体験を周りの人と一緒に楽しんでもらう仕掛けがあります。鮫が来て亀をガブリと噛むシーンがありますが、周りの人が海の上から見たカメの動きをタブレットのアプリケーションを使って指定することができるのです。それによって、鮫の動きを誘導することができます。任天堂さんの「Wii U」でも同じようなコンセプトのものがあると思いますが、一人がタブレットを持っていて他の人は逃げるようなものとか、1人がオバケ屋敷に入り、他の人がタブレットでお化けの出る場所を決めて驚かせるようなものに近いです。

ヘッドマウントユニットを被っている人の体験を、周囲の人も共有できることからソーシャルスクリーンと呼んでいます。周囲の人もワイヤレスコントローラーなどで楽しめるゲームが作れることを、これからデモやサンプルなどを通じて見せていきたいですね。

■フェイスブックのオキュラス社買収はいいことだ。

―――フェイスブック社にオキュラス社が買収されたことにより、オキュラスリフトの製品版は、従来以上に資金を元手にデバイスのクオリティをあげてリリースしてくるような気がしますが、そのあたりはいかがでしょうか。

同じVRですから、基本的にはやろうとしていることは同じでしょう。おそらく、使っている手法や技術は非常に近いものだと思います。

何が違うのかというとフェイスブック社の投資があったことで資金が潤沢になり、以前よりも投資がしやすくなるということはあるでしょう。でもそれ以上に感じるのは、フェイスブックが注目をしたということにより、VRがメインストリームのメディアに注目されたということですね。

オキュラス社という若い会社がフェイスブックに買収されたことへの注目や、ソニーやフェイスブックという会社が参画することで「VRがメインストリームになってくる」と話題にしていただけるのはいいことだと思っていますし、ソニーとフェイスブックはもはやVRの「共闘」関係にあると言ってもいいと思います。

―――フェイスブック参入は歓迎ですね。

フェイスブック社のマーク・ザッカーバーグ氏は「モバイルの次の、将来のプラットフォームがVRだ」と言っています。具体的にはどのようなことを指しているのかはわかりませんが、VRにインパクトやポテンシャルを感じているのではないでしょうか。

フェイスブックですからコミュニケーションの部分でのメリットを感じてらっしゃるのでしょうが、VRでいいのは、相手がそこにいる感じ、近くにいる感じがすることですね。それはおそらく、PlayStation Homeでやっているサービスや、もしくはセカンドライフでやっているようなものに近く、VRはそれ以上の存在感が演出できる部分が魅力なのでしょう。オキュラス・リフトもプロジェクト モーフィアスも最初はゲームユーザーなりゲームアプリケーションがVRを市場として立ち上げるきっかけになるであろうと思っていますが、その先にはゲーム以外の様々なアプリケーションがあるでしょうし、疑似体験やコミュニュケーションをするメディアとして、よりパワフルになるというビジョンがあるのではないでしょうか。

■発売時期はどうなる?

―――今後の予定は、6月中旬の「E3」でのデモ展示、プロジェクト モーフィアスは年末商戦への投入かと思っていましたがいかがでしょうか?それと価格面などのはいかがでしょうか。

残念ながら、年内の発売はありません。プロトタイプの完成度の向上や、技術自体を見直しますので時間がかかります。さまざまなテストをこれからやります。最終仕様も、価格面もまだ全く未定ですね。

―――最後に意地悪な質問ですが、VRを牽引するにはエロ系コンテンツのポテンシャルがあると思いますが、いかがでしょうか?

それは、すべての新しい技術に言えることなのではないでしょうか。先日開催されたユニティ社主催の「Unite Japan」にはオキュラス・リフトを用いた、それを少し感じさせるコンテンツもあったようですね(笑)。

―――ありがとうございました
《黒川文雄》
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