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【hideのゲーム音楽伝道記】第29回:『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』 ― アルカードの戦いを彩る、クラシカルで壮麗な旋律

インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第29回目となる今回は、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』をご紹介します。

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【hideのゲーム音楽伝道記】第29回:『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』 ― アルカードの戦いを彩る、クラシカルで壮麗な旋律
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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第29回目となる今回は、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』をご紹介します。



『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』は、1997年3月20日にKONAMIからプレイステーションで発売されたアクションゲームです。1998年にはセガサターンで移植版が発売され、2007年にはプレイステーション・ポータブル用の『悪魔城ドラキュラ Xクロニクル』内に収録されました。また、2010年からはゲームアーカイブス版が配信されています。

本作はKONAMIの人気アクションゲーム『悪魔城ドラキュラ』シリーズの1作で、1993年にPCエンジンで発売された『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻(ロンド)』の続編になります。初期のシリーズで展開されたステージクリアタイプとは異なり、広大なドラキュラ城を探索するタイプのゲームシステムとなっています。ドラキュラ伯爵の息子である「アルカード」を操作して城内を探索し、ドラキュラ伯爵を倒すことが目的です。

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そして本作の大きな魅力となるのが音楽です。本作の音楽は、『悪魔城ドラキュラ』シリーズをはじめ、ファミコン版の『がんばれゴエモン2』や、『出たな!!ツインビー』、『OZ -オズ-』など多数の作品の音楽を手がけた作曲家の山根ミチル氏が担当しました。全体的にクラシカルで荘厳な雰囲気の楽曲が多く、『悪魔城ドラキュラ』の重厚な世界観を壮麗に彩ってくれます。僕が本作を初めてプレイしたのは今から2年ほど前で、ゲームの発売からすでに15年以上の時が経過していたのですが、ひとたびプレイしてみると素晴らしい楽曲群に魅了され、一発で山根氏のファンになりました! それでは、本作でおすすめの楽曲をピックアップしてご紹介していきたいと思います。

まずは、はじめにセーブデータを選ぶ時の音楽「祈り」です。讃美歌のように神秘的なコーラスが非常に美しく、心が洗われるような1曲ですね。本作で共同ディレクターを務めた五十嵐孝司氏によると、実はこの楽曲でコーラスを担当しているのは、山根氏の妹さんなのだそうです(声楽を専攻されていたそうですよ)。

続いては、オープニングムービーで流れる楽曲「月下の夜想曲」 。夜空にぽっかりと浮かぶ満月と、妖しくそびえ立つドラキュラ城を背景に流れる、重厚かつ荘厳なオーケストラが、物語の始まりを告げます。「闇に浮かぶ月だけが、真実を知るのか――」というナレーションと共に奏でられるこの音楽があまりにも格好よすぎて、ゾクゾクッと鳥肌が立ったことを僕は鮮烈に覚えています。

城内に入ってすぐに流れてくるのは「ドラキュラ城」。怪しげなイントロに続いて響き出す、ギューーーンというエレキギターの叫び。続いてドラムも入って展開されるロックサウンドが、プレイヤーの心を震わせ、広大な城の探索に挑む勇気を奮い立たせてくれます。楽曲の後半に入ってくる、切なげな旋律の美しさもたまらないものがありますよ。

ゲーム序盤で訪れる、錬金研究棟で流れるのは「黄金の舞曲」です。ストリングスをメインに奏でられる、重厚さに満ちた荘厳な音色が素敵です。錬金術を研究している場所というためか、旋律にもどことなく妖しさがあるのがまたいいですね。

蔵書庫で流れる「木彫パルティータ」は、クラシック曲のような壮麗さに満ちています。チェンバロ(鍵盤を弾くことで、弦をはじいて発音させる楽器)で織りなされる、繊細できらびやかな音色が非常に優雅です。

続いては、ボス戦で流れる楽曲「しもべたちの祭典」。終始ドコドコと打ち鳴らされるアップテンポなドラムと、掻き鳴らされるエレキギターの熱い旋律がたまりません。ボスたちと繰り広げられる死闘を、サウンドで大いに演出してくれます。

オルロックの間で流れるのは「パール舞踏曲」。優雅で気品あふれる、ピアノの繊細で美しい旋律が素敵です。オルロックの間では背景に満月が見えるのですが、この満月と、美しい音楽をバックに進むアルカードの姿は本当に凛々しくて絵になります!これはぜひゲームをプレイして体験していただきたいですね。

ゲームの後半に訪れる時計塔で流れる「悲境の貴公子」は、エレキギターがギュンギュン掻き鳴らされる、バリバリのロックサウンドで格好良さ満点です。しかしただ格好良いだけではなく、物悲しさを帯びた旋律によって、アルカードの過酷で哀しい境遇が表現されているように思います。また、後半のアップテンポで盛り上がる部分は、そんな運命にも果敢に立ち向かっていくアルカードの姿を演出するかのような、底知れぬ熱さがあります。この曲をゲームで初めて聴いた時は、思わず胸が熱くなり、ぞわっと鳥肌が立ちました。非常に印象深い1曲です。

そして「失われた彩画」です!ゲームの後半で訪れる、異端礼拝堂、禁書保管所、天井水脈で流れます。この楽曲は非常に神秘的かつ不思議な透明感にあふれた音色で、哀愁を帯びた旋律が絶品の美しさですね。思わずコントローラを動かす手を止めて聴き惚れたことを強烈に覚えています。僕は「失われた彩画」をずっと聴いていたいがために、この曲が流れる場所で延々とレベル上げしていたことが何度もありました(笑)。

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本作は、緻密に描かれた秀麗なドット絵、軽快な操作性、切なくも心に残るシナリオ、そして山根氏が手がけた美しい音楽など、総合的な完成度が極めて高い、素晴らしいアクションゲームです。

『悪魔城ドラキュラ』シリーズを未プレイの方には、本シリーズに対して「難しそう」というイメージをお持ちの方もおそらくいらっしゃるのではないでしょうか? 何を隠そう、以前は僕もそのひとりでした。

でも、ご安心ください。本作は、初心者の方でもプレイしやすいゲームシステムとなっています。具体的に言うと、アルカードは敵を倒すと経験値を得られ、それが一定量貯まるとレベルアップして各種能力をパワーアップさせることができます。また、様々な武器や防具を装備してアルカードを強化させることができたりと、RPG的な要素が入った形になりますので、アクションゲームが苦手な方や、『悪魔城ドラキュラ』シリーズを初めてプレイされる方でもプレイしやすいかと思います。

あとは、装備するとアルカードの身長がちょっと高くなる(笑)、「シークレットシューズ」などの小ネタアイテムが存在したり、「いちごのタルト」や「あんまん」、「ラーメン」などの食べ物が回復アイテムとして出てきたり(「どこから調達してきたんだ!?」と突っ込みたくなります(笑) )、シリアス一辺倒ではないコミカルな要素もあります。

また、主人公に同伴して回復や攻撃などのサポートを行ってくれる「使い魔」というキャラクターもいます(コウモリ、妖精、子悪魔など、様々な使い魔が存在しますよ)。さらに、あるアイテムを取得すると、アルカードがコウモリやオオカミ、霧に変身できたりもします。じつに様々な要素が盛り込まれており、非常に遊びごたえがある作品ですよ。

本作は現在、ゲームアーカイブス(PS3、PS Vita、PS Vita TV、PSPに対応)で617円 (税込)で配信されているので、今でも気軽にプレイすることができます。ご興味をお持ちの方は、ぜひプレイしてみてくださいね! 本作はゲームのクオリティの高さもさることながら、ドラキュラの世界観を十二分に彩る山根氏の音楽が本当に魅力的ですので、プレイ中、ぜひじっくり耳を傾けてご堪能ください。

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ちなみに、本作の物語は『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』のラストシーンから始まる形になり、最初だけ『血の輪廻』の主人公・リヒターを操作する形になります。初プレイの方はその点に少し戸惑うかもしれませんが、その後は全編アルカードを主人公とした物語が展開する形になります。また、解説書やオープニングでは『血の輪廻』からの物語の繋がりが説明されますので、『血の輪廻』を事前にプレイしていなくても、特に問題は無いと思います。

もし『血の輪廻』も気になる!という方は、PSP版の『悪魔城ドラキュラ Xクロニクル』に『血の輪廻』のリメイク版およびオリジナル版、そして『月下の夜想曲』のオリジナル版が収録されているので、こちらでプレイするのもよいかと思います。(ただし、まず『血の輪廻』のリメイク版をプレイして、特定の条件を満たすと『血の輪廻』と『月下の夜想曲』のオリジナル版が出現するという形になっているので、ご注意ください)


なお、本作はゲーム音源を収録したオリジナル・サウンドトラックも発売されています。このサントラは1997年に発売されたものですが、2016年3月現在でもAmazonでは新品を定価で購入可能なので、容易に入手できますよ。今回ご紹介した楽曲以外にも良い楽曲が多く、非常にクオリティの高い名盤なので、普段ゲームをプレイする時間があまり取れない方も、ぜひサントラで音楽をお楽しみいただければと思います。

クラシカルで壮麗な旋律と、熱いロックサウンドで織りなされる山根氏渾身の『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』の音楽を、あなたもぜひ堪能してみてください!

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。プレイステーションVRがとっても気になる今日このごろです!

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

(C)1997 Konami Digital Entertainment
《hide/永芳英敬》
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