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【hideのゲーム音楽伝道記】第33回:『ワギャンランド』― 音波砲と知力で戦うワギャンの冒険を彩る音楽

インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第33回目となる今回は、僕が特に愛してやまないゲームのひとつ、『ワギャンランド』をご紹介します。

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【hideのゲーム音楽伝道記】第33回:『ワギャンランド』― 音波砲と知力で戦うワギャンの冒険を彩る音楽
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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第33回目となる今回は、僕が特に愛してやまないゲームのひとつ、『ワギャンランド』をご紹介します。


『ワギャンランド』は、1989年2月9日にナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)からファミリーコンピュータで発売された横スクロール型アクションゲームです。

本作は、小型の恐竜のような姿をした不思議な生物「ワギャン」が主人公のアクションゲーム、『ワギャンランド』シリーズの記念すべき第1作です。ワギャンの暮らす島「ワギャンランド」を征服した悪の科学者・Dr.デビルを倒すため、彼のアジトである「悪魔の木」を目指して、冒険を繰り広げてゆきます。

ワギャンの最大の武器は、「ワッ」という自分の叫び声を敵に浴びせてしびれさせ、一定時間動きを止められる「音波砲」。しびれて動けなくなった敵の上に乗り、足場として利用することも可能です。ワギャンは音波砲を使って敵に立ち向かいながら、先へと進んでいきます。

僕はこの『ワギャン』シリーズが、小学生の頃に何度も何度も繰り返しプレイしていたほど大好きでした。あまりにも好きすぎて、学級文集に『ワギャン』について書いたこともあるほどで(笑)、非常に思い入れの深い作品なのです。

◆『ワギャン』の世界観にマッチした明るい音楽


さて、そんな『ワギャン』の世界で欠かせない魅力のひとつが、音楽です。本作の作曲を担当したのは、クラッシュなおみ氏と、ストロングよしえ氏(スタッフロールより)。なぜか女子プロレスラーのようなお名前だったのが、初めてクリアしてスタッフロールを見た当時から印象的でした(笑)。

※なお、「ストロングよしえ」氏は、その後『コズモギャング・ザ・ビデオ』や『鉄拳』、『スターフォックス アサルト』などの音楽を手掛けた荒川美恵氏と同一人物です。

各ステージで流れる楽曲は、『ワギャン』の明るい世界観に合った、ポップで軽快な音楽が多いです。楽しげな旋律が、ワギャンの冒険活劇を盛り上げてくれますよ。個人的には、すべり台ステージのリズミカルで楽しげなメロディが特に印象深いです。くねくねとした形の大きなすべり台を高速ですべってゆくステージなのですが、その雰囲気に合った、軽快なサウンドが心地よかったことを今でも覚えています。

また、ゲーム中「ワギャナイザー」というアイテムを取得していくと、ワギャンの叫び声が「ギャ」「ガー」「ギャー」とパワーアップしていき、より長い時間敵をしびれさせることができます。そしてワギャナイザーを4つ取るとワギャンが無敵状態になるのですが、無敵時の音楽がアップテンポかつ疾走感があって、気持ちいいんです!無敵状態になってこの曲が流れてきたとたん、僕はテンションが上がり、ここぞとばかりに敵をふっ飛ばしまくってガンガン先に進んでいました。これはとても爽快感がありましたね。

◆“裏読み”が熱い、しりとり対決!


そして『ワギャン』を語るうえで忘れてはならない一番の醍醐味と言えば、なんといってもボス戦のミニゲーム対決ですね。

各ステージの最後まで到達すると、不穏な音楽とともにボスが登場します。僕は初めて『ワギャン』をプレイした当時、てっきり普通のアクションゲームのように、互いの肉体がぶつかりあうバトルが始まるのかと身構えていましたが、画面が切り替わって登場したのは、様々な絵が描かれたたくさんのパネル群と、明るい音楽。そして、「しりとりで しょうぶだ!」というボスのセリフ。「え??」と当時の僕は戸惑いを隠せませんでした(笑)。

そう、『ワギャン』のボス戦は、パネルを使った「しりとり」や「神経衰弱」のミニゲームで行われるのです。特に「しりとり」では、ひとつの絵に複数の読み方が存在し、意外な形でしりとりが成立する“裏読み”システムが熱いですね。「いか」のパネルを「するめ」と読んだりするのは序の口で、「いえ」のパネルを「ひらやいっこだて」と読んだり、「そんなのアリかよ!?(笑)」と思わずツッコミを入れたくなるような読み方もあります。この独特のボス戦は、その後『ワギャン』シリーズに欠かせない名物的存在になりました。

また、このボス戦の際に流れる音楽は、戦いをイメージさせるような激しいものではなく、テレビのクイズ番組のような、ポップで軽快な旋律になっています。ボスとの知恵くらべ対決を楽しく盛り上げてくれますよ。ちなみに、この音楽は後続のシリーズ作品や、近年になって配信された『ワギャン』のしりとりをモチーフにしたスマートフォンアプリ(後述)でもアレンジされて使用されている、『ワギャン』の顔のような1曲ですね。

◆ゲーム後半には、シリアスで熱い楽曲も登場


本作は、ポップでかわいいキャラクターや世界観に合わせてか全体的に明るい音楽が多いのですが、ゲームの後半になると、意外なほどシリアスでかっこいい楽曲も顔を見せるようになります。

個人的に印象深いのは、島の北東に存在するワギャンの村で長老に会った後、分かれ道を下に進んだ後の沼ステージで流れる音楽ですね。ここでは、それまでとは一転してシリアスかつ勇壮な旋律が流れるのです。ワギャンは、村で長老に「村の者はみんなDr.デビルに捕まってしまった。助けに行った者も帰ってこない……。もはやお前だけが頼りなのじゃ!みんなを助けてくれ!」と託されるのですが、その言葉に決意を新たにして進むワギャンの雄姿を音楽で演出しているように僕は感じて、鳥肌が立ったことを覚えています。かわいい姿をしているワギャンですが、僕はこの時、彼をかっこよく思えましたね。

また、僕の中でもうひとつ印象深いのが、悪魔の木の内部を登ってゆくラストステージの音楽ですね。勇壮で熱いサウンドが、ラストの山場を盛り上げてくれます。このステージの背景には、牢屋に囚われているワギャンの仲間たちが見えるのですが、この演出が音楽と相まって、「絶対にDr.デビルを倒して仲間たちを助け出さなければ……!」という決意をかきたててくれて、プレイする僕自身も熱く燃えたのを覚えています。

そして迎えたDr.デビルとの決戦では、神経衰弱としりとりで連続して戦うことになるのですが、音楽は専用のラスボス曲が用意されています。それまでのボス戦で流れていた明るい曲とは一転して、クールかつアップテンポな、緊張感のある音楽が流れるのです。このDr.デビル戦におけるしりとりでは、それまでのボス戦とは異なり、回答しても自分の持ち時間が回復しない仕様になっているのですが、この「限られた時間の中で的確に答えなければならない」という手に汗握るような緊張感と、熱い戦いを、音楽がじつにうまく演出してくれていますよ。

果たしてワギャンはDr.デビルを倒し、島に平和を取り戻すことができるのでしょうか――。
それはあなたの腕しだいです。

◆バーチャルコンソール&アプリ情報



今回ご紹介した『ワギャンランド』は、現在WiiおよびWiiUのバーチャルコンソールで配信されていますので、ご興味をお持ちの方はプレイしてみてください!

僕は『ワギャン』のほんわかした、でも時々シリアスでかっこいい所もある独特な世界が本当に心の底から大好きで、今でもたまに無性に『ワギャン』が恋しくなってプレイすることがあります。バンナムさんにはまたぜひ『ワギャン』の続編を作っていただきたいです、切実に……! 『ワギャン』は、操作がシンプルで分かりやすいですし、殺伐としていないので、大人も子どもも、誰もが楽しめる素晴らしいゲームだと思います。昔『ワギャン』をプレイしたことがあって、現在お子さんがいらっしゃる方は、お子さんと一緒に改めてプレイするのもいいかもしれませんね。『ワギャン』のミニゲームは知育や国語教育にも良いと思いますし。

ちなみに、現在UeharaLaboから、『ワギャン』のしりとりを1人でプレイできるiOS/Androidアプリ『ワギャンのパネルしりとり』が配信されています(iOSはこちらAndroidはこちら)。このアプリは、バンダイナムコエンターテインメントが実施している「カタログIPオープン化プロジェクト」(同社のIP、すなわち知的財産を使用した二次創作が可能となるプロジェクト)を使用して制作されたもので、スマートフォンで手軽にしりとりを楽しむことができますよ。もちろん、“裏読み”も健在です。というか普通の読み方よりも、裏読みの数のほうが多いです(笑)。ご興味をお持ちでしたらプレイしてみてください!

また、先日5月16日からは、ステアシステムから、同じく「カタログIPオープン化プロジェクト」を使用して制作されたiOS/Androidアプリ『ワギャン しりとりで勝負だ!』の配信が開始されました(iOSはこちらAndroidはこちら)。この作品も『ワギャン』のしりとりをアプリ化したものですが、こちらは原作により近い、敵との対決形式でのしりとりが楽しめます。なお、本作のサウンドは『ダンガンロンパ』などの音楽を手掛けた高田雅史氏が手掛けています。こちらも、ご興味をお持ちの方はプレイしてみてくださいね。

今回は第1作目をご紹介しましたが、『ワギャンランド』シリーズには本作以外の作品にも名作、そして名曲群がたくさんありますので(『ワギャンランド2』のラスボスの曲とか!)、また機会があれば他の作品もご紹介したいと思っています。

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、ゲーム音楽関係の記事を執筆しています。ワギャンが首を高速回転させて空を飛ぶ「ワギャコプター」って、冷静に考えると怖い!(笑)

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

(C)1989 BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
《hide/永芳英敬》
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