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【hideのゲーム音楽伝道記】第47回:『ダンガンロンパ』 ― 生き残りをかけた学級裁判の緊張感を演出する音楽

インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第47回目となる今回は、『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』をご紹介します。

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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第47回目となる今回は、『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』をご紹介します。


『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』(以下『ダンガンロンパ』)は、2010年11月25日にスパイク(現スパイク・チュンソフト)からプレイステーション・ポータブルで発売された推理アドベンチャーゲームです。2012年8月にはiOS版およびAndroid版が配信され、2013年10月10日にはプレイステーションVitaで、本作および続編の『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』がカップリングされたソフト、『ダンガンロンパ 1・2 Reload』が発売されました。


本作は、“超高校級”と称される様々な才能を持つ15人の高校生たちによる、脱出不可能な閉鎖空間「希望ヶ峰学園」での学園生活を描いた作品です。学園に閉じ込められてしまった生徒たちの間で発生してしまう殺人事件の真相を暴きながら、すべての事件の裏に潜む黒幕の正体に迫ってゆく……というゲームです。

本作の主人公・苗木誠は、特筆すべき才能を持たないごく普通の高校生。彼は、超高校級の才能を持つ現役高校生しか入学できない、「卒業すれば人生の成功が約束される」という希望ヶ峰学園に、“超高校級の幸運”として抽選枠で入学が決まります。そして臨んだ入学式の日、苗木は学園の玄関ホールで急激なめまいに襲われてしまうことに。彼が目を覚ますと、学園は異様な雰囲気の閉鎖空間と化していました。苗木は同じ境遇の新入生たちと出会い、自分たちが学園に幽閉されてしまったことに気づきます。

そこへ、「モノクマ」という希望ヶ峰学園の学園長と名乗るクマのぬいぐるみのような不思議な生き物が突如現れ、「オマエラは学園の中で一生暮らし続けるんだよ」と理不尽なことを告げられます。そして、彼から提示された、学園から脱出できる唯一の方法。それは「誰か他の生徒を殺すこと」――。こうして、学園の外へ脱出するためのサバイバル、“コロシアイ学園生活”が始まるのでした。

◆証拠品という弾丸で、相手の発言を論破する




学園内で殺人事件が発生してしまうと、まずは調査パートで犯人を特定するための証拠探しを行います。そして充分な証拠が集まると、「学級裁判」と称される裁判パートで犯人探しを行うことに。この裁判で犯人を見つけることができれば、モノクマから犯人に、“おしおき”という名の処刑が執行されるのです。ただし、もし犯人を見つけることができなかった場合、犯人以外が全員処刑されてしまうという、残忍極まる非情な裁判なのです。苗木達は生き残りをかけて、必死に犯人を探すことになります。




調査パートで見つけることができる本作の証拠品は、言弾(コトダマ)と呼ばれています。この言弾を、学級裁判中に相手の矛盾した発言へ向けて撃ち、議論を進めていくのです。証拠品の弾丸(ダンガン)で、相手の発言を論破(ロンパ)する。これが本作の『ダンガンロンパ』というタイトルが持つ意味です。

本作は、個性的な登場人物たちによって展開されてゆく二転三転するストーリーに、強烈な魅力と中毒性があります。一度プレイを始めてしまうと、先が気になってしょうがなくなり、なかなか止めどきが見つかりません。かくいう僕も、初めてPSP版をプレイした際には非常にハマりまくって、何回か徹夜したクチです(笑)。


さて、そんな『ダンガンロンパ』の魅力のひとつが音楽です。本作の音楽を担当したのは、『地球防衛軍』シリーズ、『シルバー事件』、『Killer7』、『GOD HAND』など多数の作品に携わってきた、作曲家の高田雅史氏。ロックサウンドをメインにした個性的な楽曲たちが、『ダンガンロンパ』の世界を存分に彩ってくれます。

本作は、ゲーム中の緊張感・閉塞感のある雰囲気を表現した、暗めでシリアスなものが多いです。しかし殺人事件が発覚して学級裁判が開廷されると、一転してアップテンポでノリノリな楽曲が多くなり、生死をかけた学級裁判の緊張感と高揚感を演出してくれます。それでは、本作で印象的な楽曲をご紹介していきましょう。

◆『ダンガンロンパ』の世界を彩る音楽たち


(※曲名の後の数字は、サントラでのディスク番号および曲順を表しています)

●「DANGANRONPA」(1-01)
『ダンガンロンパ』のメインテーマ曲です。ロックサウンドと女性コーラスが組み合わさった楽曲で、不気味な雰囲気がありながらも、クールさと格好良さを合わせ持っています。ゲーム中ではオープニングのほか、終盤のとあるシーンで流れます。ネタバレになってしまうので詳しくは控えますが、終盤で流れる際には、プレイヤーを勇気づけて&奮い立たせてくれるかと思いますよ! なお、本作の公式サイトでもBGMとして流れますので、ご興味をお持ちの方は聴いてみてください。ちなみに僕は初めて公式サイトを訪れた際、ひと目ぼれならぬ「ひと耳ぼれ」をして、ずーっとサイトを開きっぱなしにして音楽を聴いていました(笑)。


●「おしおきロケット」(1-03)
本作を象徴する悪役・モノクマによって執行される、“おしおき”と称された処刑シーンで流れる音楽です。奇妙に明るい曲調と、「ワワワワッ、ワワッ」という不気味な男性コーラスが、残酷さと不気味さに加えて、不思議な高揚感を演出していますよ。なお、ゲーム中のいくつかのおしおきシーンでは、この曲と同じフレーズが使用されています。

●「Beautiful Days」(1-04)
希望ヶ峰学園の入学式の日、学園の正門前に苗木がたたずむシーンで流れる楽曲です。落ちついた穏やかな旋律の中に、不規則に上下する音色が入っているのが特徴的で、希望を胸に抱きつつも緊張感を隠せない苗木の心情が演出されているように思います。

●「モノクマ先生の課外授業」(1-07)
苗木たちが学園内に幽閉された後、モノクマが登場するシーンで流れる楽曲です。ロックサウンドの裏で何度も繰り返し響く「チャッ、チャラッチャ、チャッチャ♪」というフレーズが、モノクマのフリーダムさと、無邪気な悪意が混じった不気味な雰囲気を引き立てています。


●「DISTRUST」(1-10)
DISTRUST = “不信”、“疑惑”。生徒たちそれぞれに、疑念が生じるシーンで流れる楽曲です。お互いへの疑心暗鬼が強まってゆくような、生徒たちの揺れ動く心情を、ドロドロ感のある渦巻くような曲調が演出しています。

●「絶望汚染ノイズミュージック」(1-18)
苗木たちが、学園内で死体を発見してしまった際に流れるジングルです。ノイズがかかったような恐ろしげに響く叫び声が混じったサウンドが、死体発見のショッキングさの度合いをさらに増してくれます。


●「BOX 15」(1-08)
殺人事件発生後の調査パートで流れる楽曲です。ロックサウンドで奏でられる音色が緊張感たっぷりですね。真実を見つけ、そして生き残るために必要な証拠を必死に探しまわっている苗木たちの姿を演出しています。また、途中から入ってくるトランペットの切なげな音色は、このような境遇にあってしまった彼らの哀愁をも描いているように感じられます。

●「BOX 16」(2-06)
「BOX 15」をさらにギュンギュンなロックにアレンジした、ゲーム後半の調査パートで流れる音楽です。少しずつ死者が増えてゆく中でも、「絶対に生きて脱出してやる」、という苗木達の闘志を表現したかのような熱さがあります。プレイヤーをも鼓舞してくれるような熱いサウンドが非常に魅力的ですよ!

●「ようこそ絶望学園」(1-23)
深い哀しみと儚さを帯びた透明感が印象的な楽曲。超高校級のスイマー・朝日奈さんが深夜にベッドで震えながら、「もうイヤだ……家に帰りたい……」と涙するシーンなどで流れます。精神的に打ちひしがれる寸前の、生徒たちの絶望感が表現されています。

●「Beautiful Morning」(1-26)
学級裁判を終えた翌朝のシーンなどで流れる音楽です。過酷な裁判を乗り越え、なんとか生き延びることができた。しかしこの狂った学園生活はいつまで続くのだろうか――、といったような生徒たちの倦怠感が感じられる、けだるげな雰囲気があります。

●「モノクマ先生の授業」(2-03)
モノクマの登場シーンや、ゲーム中に時々挿入されるモノクマの寸劇中に流れる楽曲。コミカルでかわいらしさのあるメロディでありながら、ごつい男性の暑苦しい歌声が入ってくるのが実にインパクトがあって印象深いですね。得体の知れない、モノクマの摩訶不思議なイメージが音楽で見事に表現されています。

◆緊張感あふれる学級裁判を演出する音楽


ここからは、学級裁判中に流れる音楽をご紹介していきましょう。


●「開廷アンダーグラウンド」(1-15)
学級裁判前の準備を行う際に流れる音楽です。ノイズがかかったような低い電子音で奏でられる、不安感と緊張感。それに加えて奇妙な高揚感とワクワク感をも合わせ持っていて、生死をかけた学級裁判に臨む決意を奮い立たせてくれます。


●「学級裁判黎明編」(1-06)
モノクマが学級裁判についての説明を行う時や、裁判中に思考をめぐらせる時に流れる音楽です。リズミカルかつクールな電子音で奏でられるサウンドが、真実へたどりつくための冷静に考える時間を演出してくれます。

●「議論 -BREAK-」(1-17)
学級裁判シーンの通常議論の際に流れる、ノリノリでリズミカルな楽曲です。アップテンポで奏でられるリズムに、低くうごめくように入るコーラスが不安感と緊張感をあおります。

●「議論 -HEAT UP-」(2-10)
学級裁判シーンでだんだんと核心に迫ってゆき、犯人を追いつめていくシーンで流れる楽曲です。アップテンポで盛り上がってゆく高揚感が、まさに犯人をじわじわと追いつめているような印象で、テンションが上がることうけあいです。


●「議論 -HOPE VS DESPAIR-」(2-12)
最後の学級裁判で、黒幕と直接対決するシーンで流れる楽曲です。「議論 -HEAT UP-」がさらに高速なテンポでアレンジされており、“希望”と“絶望”が激しくぶつかりあう様子を熱く演出してくれますよ。緊張感はもちろん、高揚感も最高潮に達します!


●「クライマックス推理」(1-27)
学級裁判の最後に、マンガのコマを埋めていく形式で事件の全貌の推理を行う際に流れる音楽です。ピアノをメインにして静かに響くクールなサウンドが、冷静に落ちついて推理をまとめる苗木&プレイヤーの手助けをしてくれます。

●「クライマックス再現」(2-16)
クライマックス推理の答え合わせと、事件全容の再現を行う際に流れる音楽です。コーラスの入ったアップテンポな曲調が、犯人の思惑や行動を次々に暴いて白日のもとに曝してゆく爽快感を表現しています。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆


本作では、閉鎖空間での“コロシアイ学園生活”という極限状態に追い込まれた生徒たちによる人間模様が、二転三転するシナリオと、緊張感あふれる演出で彩られます。先の読めない展開には、プレイを進める手が止まらなくなってしまうかもしれません。そして高田氏の紡ぐ音楽は、緊張感あふれる物語をサウンド面から存分に彩ってくれています。きっとあなたの気持ちを、ある時はどん底まで暗く落として、ある時はテンション高く盛り上げてくれることでしょう。

また、音に関することで忘れてはならないのは、緒方恵美氏ら豪華声優陣による熱演です。非常に熱のこもった声優陣の演技は、必ずプレイヤーの皆さんを『ダンガンロンパ』の世界に引き込んでくれることでしょう。特に、1979年から2005年まで26年間ドラえもんの声優を担当していたことで有名な大山のぶ代氏によるモノクマの声は非常にインパクトがあり、物語を大いに盛り上げてくれます(なお、『ダンガンロンパ』最新作の『V3』では、モノクマ役は大山氏からTARAKO氏にバトンタッチしています)。また、詳細は伏せますが、黒幕を演じる声優さんの「怪演」とも言える鬼気迫る演技は圧巻です。プレイの際には、声優陣の熱演もぜひご堪能いただければと思います。

本作のゲーム内容は刺激が強く、また事件内容やモノクマによる“おしおき”には残酷な表現も含まれているため、まず間違いなく人を選ぶ作品だとは思います。しかし、この猥雑で、奇妙で、カオスで、痛快な……一言で言えば「とんがった」面白さは、他にない引き込まれる魅力があります。閉鎖空間モノ、推理モノがお好きな方にはぜひ挑戦してみていただきたいですね。果たして、この事件の裏で暗躍する黒幕はいったい誰なのか。いったい何の目的でこんなことをしているのか――。あなたの手で暴いていただきたいです。一度プレイしはじめると止まらない、底知れぬ魅力が『ダンガンロンパ』にはあります。ご興味をお持ちの方はぜひプレイしてみてください! 本作のような、意欲的で「とんがった」ゲームが、これからもどんどん新しく生まれてきてもらえたらいいなと思います。


なお、本作のサウンドトラックCDは、サウンドプレステージ合同会社より『ダンガンサントラ ダンガンロンパ オリジナルサウンドトラック』というタイトルで発売されています。音楽単体でも楽しめる良曲ぞろいのサントラなので、ご興味をお持ちの方はお聴きになってみてください!

そして来年2017年の1月12日には、『ダンガンロンパ』シリーズの最新作である『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』が、プレイステーション4およびプレイステーションVitaで発売されます。今度は一体どんな物語が展開されるのか、『ダンガンロンパ』ファンの1人として楽しみです!

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬

ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、ゲーム音楽関係の記事を執筆。面白いアドベンチャーゲームをプレイすると、たいていハマって徹夜しちゃいます(笑)。
[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

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《hide/永芳英敬》
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