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権利問題を乗り越えついに復刻!『ゴールデンアイ 007』スイッチ/Xbox版が“悲願の復活”である理由

“チョップ縛り”がオンラインでも!

任天堂 Nintendo Switch
権利問題を乗り越えついに復刻!『ゴールデンアイ 007』スイッチ/Xbox版が“悲願の復活”である理由
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2022年9月13日に放送された「Nintendo Direct 2022.09.13」にて、名作FPS『ゴールデンアイ 007』がNintendo Switch Online + 追加パック加入者向けサービス「NINTENDO 64 Nintendo Switch Online」向けに復刻配信されることが決定。同時にXboxプラットフォームおよびXbox Game Passでのリマスター版の配信も発表されました。

ご存知の方も多いタイトルかと思いますが、実は本作は復刻にあたり紆余曲折を辿ったタイトルであり、今回の発表は悲願ともいえる作品なのです。本稿ではこの作品が復活するまでに辿った道を解説します。

スパイものらしいストーリーモードに、ハチャメチャ対戦のマルチプレイ!1粒で2度美味しいクラシックFPS

『ゴールデンアイ 007』は、1997年にNINTENDO 64向けに発売された1人称視点で銃撃戦が楽しめるFPS。1995年公開のスパイアクション映画「007/ゴールデンアイ」を原作としたゲームであり、開発は『スーパードンキーコング』や『バンジョーとカズーイの大冒険』で知られるレアが担当しています。今年で発売から25周年という節目を迎えるタイミングでの復刻の発表となりました。

64版発売当時はCEROレーティングがまだ施行されていなかったため、今回の復刻で初めて本作のレーティングが判明。区分はZの18歳以上対象となります。

「NINTENDO 64 Nintendo Switch Online」向けに配信されるニンテンドースイッチ版はオリジナル版を忠実に移植した上でオンラインプレイに対応し、離れた場所のフレンドとも最大4人での対戦が楽しめます。Xbox版は残念ながらローカルマルチプレイのみですが、4K解像度、16:9のワイドスクリーン対応、よりスムーズに動作するフレームレートなど快適かつリッチな環境のリマスター版となります。

シングルプレイヤーモードでは、映画版のストーリーをベースに、様々なシチュエーションのミッションが用意。ただ敵を倒していくだけでなく、科学者に変装して紛れ込む仲間に接触したり、ところどころにある監視カメラを破壊したり、様々なガジェットを使って攻略したりとスパイものらしいゲームプレイに仕上がっています。操作形態もNINTENDO 64コントローラー向けに最適化されており、エイム時に画面が固定され照準だけ動かせる、非エイム状態で射撃した際に自動で敵に弾が当たるなど遊びやすい工夫も見られました。

また、本作はマルチプレイ対戦モードも搭載。単純なデスマッチ・TDMルールに加え、2回死亡すると負けな「007は二度死ぬ」、できるだけ長い間旗を持って逃げ回る「リビング・デイライツ」、敵を一発で倒せる「消されたライセンス」など、映画「007」シリーズのタイトルになぞらえたものが見られるのもユニークです。NINTENDO 64が最初からコントローラーポートを4つ搭載していたこともあり、友達とコントローラーを持ち寄って熱中した方も多いのではないでしょうか。

また、画面分割であるため相手の行動が丸見えだったり(これをテーマにした作品も存在します)、最強である代わりたった1発しか打てないピーキーな性能の黄金銃が存在したりと、現代の対戦FPSではあまりなさそうなユニーク要素が多いのも特徴。他にもセンサー爆弾を設置してトイレに立て籠もったり、近接攻撃のチョップ縛りで楽しんだりとユーザー間での独自の楽しみ方も見られました。近年の対戦FPSではe-Sportsや競技性が重視されがちな傾向がありますが、ハチャメチャでパーティーゲーム的な対戦が楽しめるのも魅力のひとつ。スイッチ版では気心の知れた仲間とオンラインで楽しむのも良さそうです。

なお当時の開発者の証言によると、本作のマルチプレイモードは開発のタイムリミットギリギリで開発されたものであるとのこと。ゲーム自体もスーパーファミコン・バーチャルボーイ向けに開発されていた、64向けに変更された際もレールシューターとして開発がスタートしていたなど正式版と比べて数々の違いが見られます。正式版とは異なる形でリリースされていたら、今日のFPS市場はまた違ったものになっていたかもしれません。

Xbox 360、バーチャルコンソール、『Rare Replay』……権利問題で何度も挫折した復刻

そんな本作はこれまで何度か復刻配信が試みられてきましたが、オリジナル版のリリースから現在に至るまでの約25年間、復刻配信は叶いませんでした。

まずXbox 360のLive Arcadeでリリースが噂されていたリマスター版は権利関係の問題によりお蔵入りとなりましたが、先日オンライン上でプレイ映像がリークされ、シングル・マルチ共にほぼ完全な状態で遊べる状態まで開発されていたことが明らかに。この件はBBC Newsも取り上げるほど大きな話題となりました。

その後もレアがWiiのバーチャルコンソールでリリースされる可能性に言及。ここでは「実現不可能ではないが、あまりにも多くの人が関わっている」とされており、結局リリースされることはありませんでした。ちなみにバーチャルコンソール向けのレア開発タイトルは任天堂が完全に権利を所有する『ドンキーコング』関連のタイトルのみリリースされています。

さらに、レアが1983年から2008年までに開発した作品を30作品収録し2015年に発売されたXbox One向けコレクション『Rare Replay』にも『ゴールデンアイ 007』は未収録(『ドンキーコング』関連タイトルも未収録)。レアのスタッフは「レアが作り出したオリジナルの作品のみ収録したかったので除外した」と説明していますが、後に『Rare Replay』用のものと思われるインタビュー映像がリークされており、やはり権利的な問題が立ちはだかったものと思われます。ちなみにこのインタビューでは、初代ジェームズ・ボンド俳優であるショーン・コネリーが自らの肖像がゲーム内で使用されることを拒否したことなど興味深い裏話が語られています。今回のXbox復刻版は『Rare Replay』に収録されるとのことなので、このインタビュー映像も見られるかもしれません。

先述した通り、本作は映画「007/ゴールデンアイ」が原作。最近では例外も見られますが、ゲーム業界では一般的に映画やアニメ、実在タレントなどを基にしたいわゆる“版権ゲーム”は復刻配信されないというのが通例とされてきました。それは本作においても例外ではなく、復刻配信には少なくとも007(ジェームズ・ボンド)シリーズの権利を保有する企業・ダンジャックの許諾が必要です。

しかし、単純にダンジャックとマイクロソフトの間で話がつけばリリースできるとも限りません。007およびジェームズ・ボンドのゲームに関しては、1999年から2006年頃まではエレクトロニック・アーツが、2006年から2014年まではActivisionが、「007」映画制作会社のゲーム部門MGM Interactiveよりゲーム化権の独占的契約を行っていたため、他の会社が007に関するゲームを発売することは難しかったと言えます。また、Xbox Live Arcade版の際はマイクロソフト、Activision、任天堂の間で契約が締結され開発が進んでいたものの、任天堂が未知の理由で突如これを却下したため復刻が叶わなかったと報じられています

「ゴールデンアイ」の名を冠した作品はこれ以外にも複数リリースされています。もっとも有名なのは数々の007ゲームを手掛けたEurocomが開発しActivisionが2011年に発売したWiiの『ゴールデンアイ 007』で、Wii版は日本では任天堂が発売しています。

本作にマイクロソフトおよびレアは無関係で、ゲーム内容も純粋なリメイクというよりは再解釈という認識に近い内容になっています。また、ジェームズ・ボンドのモデルもピアース・ブロスナンからWii版当時の俳優であるダニエル・クレイグに変更されているなど様々な点が異なる作品でしたが、パッケージ裏に「世界で800万本以上をセールスしたFPSが復活!」と記載していたり(64版は全世界で800万本以上を売り上げた)、ローカルマルチプレイ対戦にフォーカスしたCMを放映したりと64版を彷彿とさせるプロモーションが行われていました。

この他にもActivisionからは、Wii版とほぼ同内容の『GoldenEye 007』が2010年にDS向けに、Wii版のHDリマスター『GoldenEye 007: Reloaded』が2011にPS3/Xbox 360で発売。主人公がMI-6を追われたエージェントの「ゴールデンアイ」に変更されるなど内容は大きく異なりますが、エレクトロニック・アーツからは2005年にPS2/GC『ゴールデンアイ:ローグ・エージェント』、そしてそのDS版である『ゴールデンアイDS』が発売されました。

また、レアは後に本作の精神的後継作である64『パーフェクトダーク』(2000)、Xbox 360『パーフェクトダーク ゼロ』(2005)をリリース。同シリーズは完全新作である『Perfect Dark』が2020年に発表され、現在開発中です。

また、64版は非公式リメイクもいくつかみられます。Sourceエンジンでリメイクした『GoldenEye: Source』や『ファークライ5』のレベルエディタで本作のマップを再現したもの、Unreal Engine 4で開発が進められていた『GoldenEye 25』も存在しましたが、こちらはMGMおよびダンジャックからの要請により開発が中止しました。非公式リメイクは非許諾であるため著作権侵害など問題点を抱えていますが、それほど本作の復刻が望まれていたという証左でもあるのではないでしょうか。

さて、そもそもXboxと任天堂はライバルプラットフォームということもあり、マイクロソフトが権利を所有しているタイトルがニンテンドースイッチ向けにリリースされること自体がかなり珍しいことと言えます。しかしマイクロソフトはニンテンドースイッチ向けのゲーム配信に協力的で、任天堂との関係はかなり良好であるようです。マイクロソフトはニンテンドースイッチで『マインクラフト』シリーズや『オリ』シリーズ、『Fallout Shelter』などを配信しているほか、「NINTENDO 64 Nintendo Switch Online」向けにも権利を完全に所有する『バンジョーとカズーイの大冒険』を配信しています。

また、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』では、『バンジョーとカズーイの大冒険』からバンジョー&カズーイ、『マインクラフト』からスティーブ/アレックスをファイターとして参戦させ、『Fallout』のVault-boyや『DOOM』のDoom Slayer、『スカイリム』のドラゴンボーンなどMiiファイター用コスチュームという形でも参加。他にも『スーパードンキーコング』のキングクルールといったレアのテイストが色濃く反映されたキャラも参戦しています。

今回の復刻版は任天堂とXboxの関係も良好、他社の独占契約は終了済みで、ダンジャックにも許諾を得て権利関係もクリアして、満を持してついにリリース!となりそうでしたが、ここでもスムーズにいかない事情が発生し一時期停止していたようです。本作は実は正式発表前よりXbox版の実績データが発見されており、復刻版の発表は時間の問題かと思われていました。

しかしそんな最中、ロシアによるウクライナへの侵攻が開始。本作は舞台としてロシア軍の基地が登場することなどから不適切と判断されたのか、宙ぶらりん状態であったという情報が海外メディアなどで報じられていました。残念ながらロシアとウクライナの戦争はいまだ落ち着きをみせていませんが、この度正式発表に至りました。

このように、今回の復刻版は様々な大きな壁を乗り越えた悲願の復活であるのです。トレイラーや発表では「007」という名前とロゴ、楽曲、そして実在俳優が使われたキーアートなどを使用できているほか、特に表現の変更などの告知もないことからまさに「完全復活」と言えるものになっていそうです。

『ゴールデンアイ 007』が無ければ日本でFPSは流行っていなかった?本作がFPSの原体験というユーザーも多数

本作は海外での人気はもちろんなのですが、日本におけるシューターの歴史を語る際にも避けては通れない作品です。当時、FPSの発売プラットフォームはPCが主流であり、コンソールで発売されるものは限られていました。これ以前にもスーパーファミコンなどでFPSジャンルの立役者であるid Softwareの『Wolfenstein 3D』『DOOM』などが発売されていましたが、日本での大きな盛り上がりは見られません。本作は、そんな、まだ日本で「FPS」という言葉が浸透していない時期に発売されました。SNSやインターネット掲示板などでは「シングルプレイそっちのけで友達と対戦に没頭した」という思い出が語られることもしばしばあります。

現在でこそFPSは日本でも人気ジャンルとして浸透し数々の作品が人気を博していますが、本作がFPSの原体験であるというユーザーも多数見られます。本作が無ければ日本でFPSが浸透していなかった……かどうかは定かではありませんが、間違いなく日本におけるFPS市場の礎を築いた作品の1つと言えます。

『ゴールデンアイ 007』は、ニンテンドースイッチでは「NINTENDO 64 Nintendo Switch Online」向けに2023年、XboxではXbox Game Passに対応し近日配信予定です。


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