人生にゲームをプラスするメディア

『ワールドフリッパー』11・12章で「アルクの正体を暴きたかった」ー完結記念メインシナリオライターインタビュー

『ワーフリ』のメインストーリーを担当し、その魅力的な世界を作り上げてきたメインシナリオライター氏へのインタビューを実施。完結編となる11章・12章を中心にお話を伺いました。

ゲーム スマホ
『ワールドフリッパー』11・12章で「アルクの正体を暴きたかった」ー完結記念メインシナリオライターインタビュー
  • 『ワールドフリッパー』11・12章で「アルクの正体を暴きたかった」ー完結記念メインシナリオライターインタビュー
  • 『ワールドフリッパー』11・12章で「アルクの正体を暴きたかった」ー完結記念メインシナリオライターインタビュー
  • 『ワールドフリッパー』11・12章で「アルクの正体を暴きたかった」ー完結記念メインシナリオライターインタビュー
  • 『ワールドフリッパー』11・12章で「アルクの正体を暴きたかった」ー完結記念メインシナリオライターインタビュー
  • 『ワールドフリッパー』11・12章で「アルクの正体を暴きたかった」ー完結記念メインシナリオライターインタビュー
  • 『ワールドフリッパー』11・12章で「アルクの正体を暴きたかった」ー完結記念メインシナリオライターインタビュー
  • 『ワールドフリッパー』11・12章で「アルクの正体を暴きたかった」ー完結記念メインシナリオライターインタビュー
  • 『ワールドフリッパー』11・12章で「アルクの正体を暴きたかった」ー完結記念メインシナリオライターインタビュー

※本記事には『ワールドフリッパー』メインストーリー第2部12章までおよび各種イベントのネタバレが含まれています。ストーリー未読の方は、読んでからの閲覧を推奨します。

※本インタビューは2023年8月に行われました。

2023年11月に4周年を迎える『ワールドフリッパー(以下、ワーフリ)』。同年5月にはメインストーリー完結となった本作ですが、3年以上かけて綴られたアルクたちの物語は、それを彩る『ワーフリ』ならではの表現技法と相まってとても素晴らしい「完結」を迎えました。

今回は『ワーフリ』のメインストーリーを担当し、その魅力的な世界を作り上げてきたメインシナリオライター氏へのインタビューを実施。前回のインタビューから引き続き、完結編となる11章・12章を中心にお話を伺いました。

なお、改めてになりますが、本記事には『ワールドフリッパー』メインストーリー第2部12章までおよび各種イベントのネタバレが含まれています。ストーリー未読の方は、読んでからの閲覧を推奨します。


ーー『ワーフリ』にはずっと初期から携わっていたのでしょうか?

ほぼ最初期から携わっていました。現在はストーリー部門のトップを務めさせていただいています。

ストーリーに関する部分ではドット絵の背景などの監修も行っており、色々やってはいるのですが、基本的にはストーリーを書く人です。特にメインストーリーは全て私が担当していました。

ーーあれだけのストーリーを書き上げるのは相当な苦労だったと思います……。

最初はなにもないところから、本当に道なき道を開拓していくような感じでしたので、苦労は多かったですね(笑)。最終的には他に監修していただく方も増えて、その上で最後に私がチェックするといった体制になりました。

ーーそうして紡いできたメインストーリーがついに完結を迎えましたが、どんなお気持ちですか?

「ありがとうございます」という気持ちが強いですね。『ワーフリ』のストーリーはグラフィック、サウンド、演出が一体となった物で、そこには多くの人達が携わっています。一人では絶対にやりきれなかったことを、共に走り切れたのは感謝しかないです。

でもやっぱり一番は、ユーザーのみなさまが支えてくれたことですね!

正直、ストーリーをこんなに評価していただけるとは考えていなかったんです。もちろん私個人としては、絶対におもしろいストーリーだという自信はありましたが、「えっ、そんなに!?」と(笑)。そういった声に後押しされて続けられたところもありますし、生放送等も含めてコミュニティが『ワーフリ』を盛り上げてくれたという思いも強くあります。

完結させる事が難しいと言われるスマホゲームで、ここまで走り切れたのはなによりもユーザーのみなさまの声あっての事だと思います。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

ーーこちらこそ、感謝の気持でいっぱいです。ありがとうございます!ちなみに、『ワーフリ』の物語が12章で完結するというのは、最初から決まっていたんですか?

私の中では、大まかにですがこういう形で完結させようというのはリリース前から決めていました。特にアルクと星くん(星乃ミコト)との関係性や、アルクの死の場面などは構想の通りでした。

ではそこに行き着くまでにどのような物語を辿っていくかというのは、プロジェクトの積み重ねや、自分たちも予想していなかった盛り上がりなどにあわせられるように多少流動性を持たせていました。書いている内にドライブしすぎて変わってしまった話などもありますしね(笑)。

そういったことを踏まえつつ、2部に入った頃には完結までの道筋をイメージするようになっていました。

ーーそれにしても、こうやってきれいに完結させるのはスマホゲームとしては珍しいと思います。

それはよく言われますね。まず、どうであれアルクたちの始めた物語を終わらせるべきだと思ったんです。それ以外の要素については、アルクたちの物語にとっては核心というわけではなく、連鎖的に発生してきたもので、そこを更に追っかけていくのはおもしろいと思っていましたし、追っかけられるように作っていました。なので、まだまだ拡げようと思えば無限に拡げられるとは思うのですが、まず終わりを結ぶのはアルクたちの物語であるべきだと。それは本当に最初から決めていました。

ーー確かにプレイしている側としても、アルクたちの物語に対する満足度はとても高いです。もちろん、先の話も見てみたかったのですが、それ以上にこうして完結させてくれたことに対する喜びと満足感があります。

ありがとうございます。

ーーそれでは個々の章についてもお伺いできればと思います。まず11章「決意のきざはし」についてですが、11章としてのテーマみたいなものはあったのでしょうか。

11章と12章「さよならの時」については、完結に向けたセットだと考えていました。

『ワーフリ』の物語では「反復」を意識的に行っています。12章で語っていることも、この「反復」に則って、これまでに語られたことの繰り返しと、そこから少しだけアップデートした話をしていくというのは意識していました。それを示すために、11章で布石をいくつか打っていたんです。

12章の話が先になってしまいますが、12章はアルクが決断をするけれど大失敗をする話だとも私は思っていて(笑)。そこから再起はするけど、そのときに「自分はこの程度の人間なんだ」「本当はこう思っていたんだ」というのをさらけ出した上で、「でも、こうしたいんだ」と答えを見つける話だと考えていました。

11章には、そこに至るまでのヒントがなくてはならないと思っていました。なので、グラムが必要なあのような人物になっているんですね。独りで大失敗していた男が、独りでなんとかしようとするけれど、ついに音を上げてしまったと(笑)。しかも、その根底には別れた奥さんへの屈託などもあって……。だけどそんな彼が再起できたのも、やはりニルヤーナが「助けて」と言ったからこそだと思うんです。

自分独りで頑張っていたところから一歩踏み出すために、誰かの手を借りる。それが繋がって突き抜けていく。それが、アルクに示されているヒントだというのは意識していました。

アルクも12章では強くなってしまったが故の決断と、前へ前へ進む中で取りこぼしてしまったものがありましたので、グラムに近い存在になりつつありましたが、そうじゃないんだと。アルクには仲間がいて、最終的にはショウタも呼んじゃえばいいんだよと(笑)。そこに気づくための11章でしたね。

また、ある意味では通りすがりの話だった1部から、2部では自分たちの本拠地をどうするかという問題を突きつけられます。それも10章でアルクがあんなことをしたせいで、責任から逃れることもできない。けれどそれも、仲間達が駆け付けて送り出してくれるのが11章です。だから、時間稼ぎさえすれば残していった彼らが助けに来てくれると考えることができる。これをやらないと、12章がただただアルクが頑張って解決する話になってしまうので、そういう意味でも11章は結構ガチガチにプロットを固めて作っていました。

ーーアルク、これまでの物語でも散々「人を頼れ」と言われていましたよね。

アルクは聡い子ではあるので、周りの話を聞いて「こうしたらいいんじゃないか」という時が一番輝くんですよね。でも、追い詰められて余裕がなくなってしまうと、いつの間にか「自分で全部やる」と抱え込んでしまう。そのやり方は向いてないんじゃないかと、結構チクチク色んな人から言われていて(笑)。その度に「そうだなぁ」とアルクも思うんですけど、結局抱え込んでしまうというのは彼の弱いところですね。

アルクはどんどん強くなっていくんですけど、実はその反面すごく弱いところがある。その「正体」を暴いて、彼は本当はこういう男だと明かさなければならないというのが2部における私の目標の一つでした。

「反復」と「アルクの正体を暴く」という部分に関連するのですが、10章でのショウタとのやりとりはアルクの正体が垣間見える話にしたかったんです。あの場面では、アルクがショウタのことを憐れんでいるのではないかと言われます。これはショウタの被害妄想の部分もありつつ、半分は正しい指摘でもあるんじゃないかなと。

これはユキもそうなのですが、同年代と比べて目線も意識も高い彼らが、若干デリカシーに欠けるショウタに対してそうした目線を持っていたところはあると思うんです。もちろん、人間的には尊敬しつつ、ではあるのですが。

いつもならアルクも「勝手に決めるなよ!」と怒って対決するところなのに「そうだったかもしれない」とその場を去ってしまうんですよね。そういう自責もあって、ある意味では勝手にショウタの関係を終わったと見做して先に進む事を選んでしまうのですが。おそらくこのままだとうまく行かなかったと思います。

だから、その後ショウタが「やっぱさっきのなし!」と駆けつけてくれたのは、アルクとしては「そんな馬鹿なことある!?」という衝撃であると同時に、なによりも嬉しい出来事だったと思います。アルクは、彼が最も嫌いに思っている「決めつけ」をショウタに対してやってしまったのに、当の本人は(鷹森先生のサポートもありましたが)3秒経ったら立ち直りました!みたいなノリでやってくるという(笑)。この出来事は、アルクの世界観をガラッと変えるものになったはずです。

これはステラもそうですが、アルクの予想とはぜんぜん違うところで物事を覆してくるような人たちというのは、彼にとっての救いですし、同時に希望でもあります。12章で「自分はこの程度の人間だけど、そうじゃない人たちもいるから手を貸してくれないか」という決断ができるようになったのは、ゼッヘルの言葉やショウタの行動など、2部での出来事があったからこそだと思います。

ーーアルクがショウちゃんを切り捨ててしまったときの気持ちや、12章で仲間たちの到着を信じていたところなどは、アルク(通常)のキャラエピにもつながるところがあったのではないかと個人的には思っていました。

キャラエピで描かれていたアルクが結局どういう人間だったのかを語る必要があるとは思っていました。「凡才」として生きていた彼も物語が進むに連れてどんどんと精神的に強くなっていき、ライトやシロにも言われたように、もはや強者側の人間になっています。そもそも彼が持つ「どんな時でも一歩前に進めるしそれでいい」という思想は、ある意味マッチョ思想なんですよね。

それって本当に進めなくなってしまった人には、優しくはない思想ですよね。勿論、アルク自身も口にしたりはしないでしょうが、やはり根本的にそういう思想の持ち主なのだと。そんなアルクに対して、星くんやレムナといったどうにもならなくなってしまった人たちをどう受け入れるのか、という問いかけをしなければならないと思っていました。

マッチョな思想だけでは友達は救えないという現実にアルクがどういう答えを出すのか。思想をどう変えてまた一歩進むのか、というのが12章であり、2部でずっと示されていた「独りの力でやる必要はない」という部分に繋がっています。

ーーありがとうございます。11章・12章はアルクの正体を暴く話であると同時に、オールスターキャストで贈る「劇場版」のような豪華さでしたね。

これまでの積み重ねが無駄にならないような、むしろ全てが結実するような話にはしたいと思っていましたね。

ーーそして、各々がいるべき場所にいるというのがドットの背景でも示されていて、やっぱ『ワーフリ』っていいな…と思いました。

これはもうライター冥利に尽きますね。ワーフリは物語のリズム感や、読む時のタップ数などを非常に意識している作品なので、それを崩してまで都度説明を入れるようなことは避けたいんです。でも、パルペブラの大ピンチに彼らが何をしているのかを語らないなんて、ありえないんですよね。背景にキャラのドット絵が置かれるだけで、物語られるところがあるというのは『ワーフリ』ならではの表現であり、表現媒体としての強さを改めて感じましたね。

例えば、崖の上にユーウェルとヴェロンが現れるというシーンを見せるだけで、彼らが駆けつけてくれたことやここから反撃が始まるということを示せる。情景で語れるんですよね。その分、このシーンにはこの崖を使うなど、ちゃんと意識しながら書かないといけないので、大変なこともあるのですが(笑)。

これは隙あらばどこかで言おうと思っていたのですが、こういう『ワーフリ』ならではの表現をするにあたって、よくドット絵担当が心配されるのですが(笑)、実はドット絵担当とはまた別に、ドッターが作った素材を使ってムービーシーンを作る映像作家陣もいるんです。その彼らもドッターと同じぐらい大変な目にあっていて(笑)、素晴らしい仕事をしてくれているんです。彼らも『ワーフリ』が大好きで、僕らライターの指示なんかなくても、背景にキャラたちを置いてくれますし、それがまた間違ってないんです。ちゃんといるべき人を置いてくれます。凄まじいアクション描写や、演出も含めて『ワーフリ』ならではの表現には絶対に欠かせない方たちですので、ドット絵担当とともにぜひ映像作家たちの仕事も知っていただけると嬉しいです。

ーー『ワーフリ』のそういった表現にはとても説得力があると感じています。ただそこいるだけではなく、なぜいるのかが理解できるというのがキャラエピも含めてきちんと補完されています。だからこそ、今回の11章・12章や、周年イベントのアツさがすごいです(笑)。

ありがとうございます。粛清者討伐戦もちゃんとみんなで話しながら登場人物を決めていきましたね。ここにあの人がいないわけない!と。オルヴェールはまさにそれで、天使だと思っていたものがやってきて、彼女が出ないわけない!みたいな(笑)。

ーー粛清者討伐戦で言うと、チャルアとレシタールには驚きました。

彼女たちが実は――というのはずっと考えていました。最初に偉大な賢者に出会うというのは、物語の王道構造として踏まえていたのですが、レシタールってどう見ても悪そうな見た目だし、死人なのになぜ賢者役として出ているのか?と違和感を持たせたかったんです。1章はすごくサラッと読める話なのですが、レシタールの暗い過去や、「生と死」という『ワーフリ』において最もアンタッチャブルな部分をほんのり示しつつ、それをポジティブに使えるのがチャルア、というのをずっと匂わせていて。それをいつか出したい思っていたので、粛清者討伐戦で「今しかない!」と(笑)。

ーー『ワーフリ』の物語でずっと、少しずつ示されていた「生と死」の話がそこで出るのか!と感動しましたね……。レシタールさんは本当に何をしたんでしょう。

ありがとうございます(笑)。ろくでもないことをしたんですよ、彼は。レシタールについては是非、ハロウィン版チャルアのエピソードと星見の図鑑をご覧いただければと思います……!

ーー気になりますね(笑)。言ってしまえば低レアリティのキャラが、ストーリーでもバトルでも意外なところで活躍するというのも『ワーフリ』のいいところだと思います。

低レアリティだからなんでもないキャラというのはしたくなかったんです。みんながこの世界で生きているというのを示すのは、絶対に必要なことだと思っていましたね。

特にリリース直後って、必ず低レアリティのキャラを編成に入れるじゃないですか。その最初に組んだ、思い出に残るであろうその子たちのキャラエピを見たときに、低レアリティだから明らかに手抜いてますみたいな見え方になってしまっていいのか?と考えたのです。なので、低レアリティのキャラでもエピソードで「おや?」と思わせるような何かを入れるように意識していました。ただ、自分の首を絞める事にもなったのですが(笑)。

ーー繰り返しになりますが、だからこそみんなが集まるとアツいんですよね。

ヴァルターとか11章で絶対出したいと思ってましたからね(笑)。

ーーオールスター集合という意味でも、これまでの総括という意味でも、11章・12章は本当に劇場版でしたね。双星アルクも相当衝撃的でした。

あれはずっとやりたかったんですよ。魔王絡みのオールドクラシックなRPGの構造を見せつつそこに違和感を持たせ、SFにまで飛んでいく。既存の物語の枠から逸脱していくような『ワーフリ』の流れの中で、最終的に主人公が魔王の力を受け継ぐというのは、『ワーフリ』の物語を書き始めた当初から絶対にやろうと考えていたことでした。

だから、アルクがオーグを意識し続けているというのは物語上でも示さなければなりませんでした。ただ、セリフでやるとあからさますぎるので、そのあたりはアルクの表情や動き、シーンなどで表現したいと考えていた部分です。特に、イルビスを抱きしめたオーグを振り返って見るアルクのシーンは個人的にも気に入っています。彼には絶対にできない事をやったオーグの姿は、アルクにとって一生忘れられないものなんだろうな……と。

ーー普通のRPGなら勇者アルクになりそうなものですが、『ワーフリ』の勇者観からしてそれはないですし、双星アルクが魔族側に寄ってるというのもまた……。

きれいなものや正しいものを目指さない、というのは強く意識していました。アルクもステラもシロも、「世界のために」とかそういう使命感みたいなものはない。どちらかといえばカオス寄りの人たちで、やりたくてやってるだけなんです。ライトは「世界平和のために!」とか言ってしまうタイプですが、それも疑問を投げかけるような構造を意識しました。最初にキノやレシタールを見て、倒さなければと思うライトと、びっくりしつつもそういうものだと受け入れるアルクとステラがいて――ライトはそうして世界観を壊される側でしたね。

だから、最後に勇者になるというのはなかったんです。最後はカレー屋になる男なので、王冠とかマントとか、権威的なものを背負う必要はなくて、ちょっと世間的には認めづらいものを身にまとうほうが彼らしい、『ワーフリ』らしいと思っていましたね。もちろん、光り輝くアルクも見てみたくはあったのですが(笑)。

ーー『ワーフリ』のメインストーリーを書こうと思ったきっかけや、その原点になっているものはなにかありますか?

『ワーフリ』の本当の初期の頃はキャライラストがなかったんですね。でも、Cygamesのゲームとして出すからには、やっぱり魅力的なキャラとそのバックストーリーが絶対に必要だと熱弁していたら、じゃああなたがやるんですよねと(笑)。もちろんそのつもりですと言ってはみたものの、実は私自身長編のシナリオを書くのは『ワーフリ』が初めてでした。

でも、ドット絵でピンボールしているのを見た時すごく「冒険」という気がして、ワクワクしたんです。この冒険をやはり語りたかったですし、先程表現の話にもあったように『ワーフリ』は絵で見せていくことができます。これを使えばどんな物語も表現できると、もうその時から思っていましたね。

それじゃあ『ワーフリ』の物語をどんな話にしていくかというのは、まずピンボールのところから考えていました。落ちていくボールがキャラなのだから、重力に引かれて落ちていくキャラをフリッパーで弾くという事で、つまり運命に抗う事とか、飛翔力を与える事か?とか、そんな感じでどんどんイメージを膨らませていきました。

また、ボール(=キャラ)がぶつかることで敵を倒すというところから、「衝突」というキーワードも見出し、自分の殻を破る・世界から飛び出る・人同士や世界同士がぶつかり合っていく物語と、その力を与えるフリッパーという構図ができてきました。

このあたりから「自由意志」というキーワードも出てきたのですが、ダッシュ機能を見て、これはつまり意志をもって運命の軌道を変えるという事だな……!と盛り上がったりもしました(笑)。ちょっとやりたい話に無理やりこじつけていった感もあるのですが(笑)、そういう話をしていきながらも、物語の輪郭を定めていきました。

ーー本当におもしろいストーリーでした。ありがとうございました。ちなみに、すごくピンポイントな質問なのですが、リンネの過去についてお伺いしても?

アルク(アユム)は言わずもがな、ショウタは父親と仲がいいし、ユキも自身の悩みはありつつも家庭環境は極めて安定しています。そういった絶対的安心感の上に生きている3人に対して、トオルやリュウイチなどエイジスのメンバーというのは大人に居場所を奪われ、脅威を与えられている子たちです。リンネもやはりそうで、彼女の場合は母親とその愛人によるところが多く、彼女は家にいられなくなってしまっているんですね。

だからこそ、リンネはユキに「ヒロイン女」と強い嫌悪を示したところがあります。

ーー本当にギルドで働き始めて良かったですね……。そういった設定がいつでも見られるように星見の図鑑書籍化とかしていただけないでしょうか?(笑)

そういった要望があることは伝えておきます(笑)。本が一冊書けるんじゃないかというくらいストーリーも設定もたくさんありますので、星見の図鑑やキャラエピはぜひ全部見てほしいですね。今はログキーで未所持キャラの図鑑やエピソードを開けられるようになりましたし。

※サービス終了後はプレイ等ができなくなるものの、「星見の図鑑」を閲覧できるオフライン版へのアップデート実施が決定済み!これはうれしい!

ーー12章後のキャラたちのお話についても少し聞かせていただけますか?

その後の彼らについては、キャラエピや星見の図鑑で語られているので、ぜひ!という感じですね。ただ、そこで語られる以上にも彼らの未来は続くとも思っています。例えば今は深淵探索隊としてナオたちが参加していますが、深淵は元々上位者たちがこれ以上拡がらないようにしていたので、それがなくなったということは今後無限に拡がっていく可能性もあるわけです。そうなると、またとんでもないことが起こってしまうのですが……その一例が流星祭のソーヴィですね。

ーー平行世界の話ですね。元々『ワーフリ』に並行世界の概念はなかったんですよね?

厳密に言うと、少しだけ違う程度の世界は(世界が)重なって壊れてしまうので、ある程度違いがないと接続できないようなルールがあったはずなのですが、そういったとんでもないこともナオ達の冒険次第では起こり得るような世界になってしまったという感じです。

ちなみに、ソーヴィのキャラエピ担当は、シウエやレティシアやユカリコ。そしてノエネ以外のコルルル勢のキャラエピ、イベント「情熱のラブドリフターズ」なども担当しています(笑)。

ーーあ~…(笑)。

そこになぜか「共に誓う黎明」もはいってくるのが不思議ですね。本当に同じ人が担当してるの!?と(笑)。

ーーそれはめちゃくちゃ意外ですね(笑)。強めの女性という意味だと、ニルヤーナさんは個人的にかなりミスリードされていました。どんな悪いことするのだろうと(笑)。

悪役顔ですよね(笑)。僕は凄く好きな顔ですが……!

真理に踏み込もうとする研究者って、正しいことをしようと思っている人ではないと思っています。真理に踏み込むというのは、既存の価値の解体が必ず伴うので、ある種禁忌に触れるのは当たり前のことだと思いますし、実際そう言っちゃうような人にしてしまおうと。あとは、グラムとの対比ですね。こんな強い女性相手にしたらグラムもそうなるよねと。美しいだけではなく、見た瞬間に「強い!」とか「悪役!?」って思われるようなキャラデザにしていただいて、ベルセティアとは似たようなところにいつつも、よりヤバそうな雰囲気をもたせるという意図はありました。

ーーそれでいて、教育者としては言っていることはかなりまともですよね。

でも、組織にいたらかなり迷惑な人だと思いますよ(笑)。平気で急にルールを変えたりするので、一緒に仕事している人はひどい目に遭っているかと。そういう意味では凶暴な人ですね。それでもちょっと一緒に働いてはみたいと思わせるようなキャラクターを目指しました。

ゼッヘルさんとおなじで、大人を置きたかったんです。子どもたちにちゃんと大人として振る舞える人が必要だなと。あとは、恋愛対象にはならないように気をつけていましたね。大人だけど恋愛対象になりえるような人物は既にマリーナがいますし、彼女はどちらかといえば「先輩」なので。そうではなく、大人の世界から関わってくるような人が欲しかったんです。

ーーありがとうございます。もっと色々とお聞きしたいのですが、お時間もありますので、最後にユーザーへ一言いただけますでしょうか。

ワールドフリッパーという物語は、これにて完結し終わりを迎える事となりました。繰り返しにはなりますが、これまでの応援とご愛顧を本当に嬉しく思っております!また、ファンアートや考察など、そういった活動で『ワーフリ』のストーリーを「食べて」くださるのが、私たちにとっては本当に嬉しいことでした。終わりを迎えた後だとしても、『ワーフリ』という混沌の中でめちゃくちゃに遊んでみていただければと思います!

ーーありがとうございました!

すえなが

ソウルシリーズ大好き すえなが

1990年3月、神奈川県生まれ。パズル誌の編集を経て、イードへ。「Game*Spark」「インサイド」の編集業務に携わり、同社のアニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」も経験。幼少期よりゲームに触れ、現在はCS機・スマホを中心にプレイ中。好きなジャンルはアクションやFPS・TPSなど。『デモンズソウル』を始めとしたフロム・ソフトウェアの「ソウルシリーズ」や、2020年にサービスを終了した『ららマジ』に特に思い入れがある他、毎年の『Call of Duty』に一喜一憂したり、『アクアノートの休日』『FOREVER BLUE』の新作を待ち望んでいたりする。

+ 続きを読む
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

ゲーム アクセスランキング

  1. GWを「最大75%OFF」のセール作品で楽しもう! 『FF』『モンハン』などビッグタイトルからゲーマー向きの作品までお買い得【eショップ・PS Storeのお勧めセール】

    GWを「最大75%OFF」のセール作品で楽しもう! 『FF』『モンハン』などビッグタイトルからゲーマー向きの作品までお買い得【eショップ・PS Storeのお勧めセール】

  2. オープンワールドゲームの“マップ外”に行くとどうなる?巨大生物に食われたり、世界が壊れたり…全10作品の対応を紹介

    オープンワールドゲームの“マップ外”に行くとどうなる?巨大生物に食われたり、世界が壊れたり…全10作品の対応を紹介

  3. ゲオがGWセールの注目ソフトを予告!『パワプロ2022』2,178円などお得度満点─オンラインストアではPS4『逆転裁判456』が新品で2,999円

    ゲオがGWセールの注目ソフトを予告!『パワプロ2022』2,178円などお得度満点─オンラインストアではPS4『逆転裁判456』が新品で2,999円

  4. 「ジンオウガ」ついにフィールド初登場!『モンハンNow』5月のイベントスケジュール公開―見逃せない準備期間も

  5. 『FGO』「★5 蒼崎青子」は、宝具で変身するフォーリナーで登場!「★5 久遠寺有珠」(キャスター)や配布「静希草十郎」(バーサーカー)の実装も判明

  6. 最大85%OFF! ダンジョンRPGに国取りSLG、カンフーACTをGWに楽しもう【eショップ・PS Storeのお勧めセール】

  7. コンビニで「マリオ狩り」「クッパ狩り」しようぜ!?ニンテンドープリペイドカードをお得に買える期間限定キャンペーンが開催中

  8. 『バニーガーデン』センシティブギリギリを攻めるASMRパート、動画配信禁止の理由は「購入者に特別に楽しんで欲しかったから」…お紳士Pの愛が光る

  9. 『星のカービィ』生みの親・桜井政博氏がカービィを食べちゃった?美味しそうにフォークを入れる写真にファンも「だめぇぇぇぇぇ」

  10. eスポーツ大会の真っ最中に「マウス充電切れ」のハプニング…!しかし咄嗟の機転でチームを勝利に導く

アクセスランキングをもっと見る