
<-GAMEBOX->―――初めまして、INSIDEのMr.Cubeです。今日は須田さん自身の話から『NO MORE HEROES』まで色々お訊きしようと思っていますのでよろしくお願いします。
須田剛一(以下須田): | よろしくお願いします。 |
―――早速ですが、須田さんが最初にゲーム作りに関わるようになったきっかけはなんだったのでしょうか。
須田: | そうですね…、ヒューマン(*1)という会社に入ったのがきっかけといいますか、ゲーム会社に入れて、そこにプロレスゲームを作るポジションがあったというのが一番のきっかけになるんですかね。 |
―――ヒューマンに入社される前には、何かゲームに対する関わりというのがあったのでしょうか。
須田: | ヒューマンに入る前の仕事で、ちょっとSEGAさんに出入りしたことがあるんです。グラフィックデザインの仕事をしていたので。で、SEGAさんの開発の内部を見た時に、それまでゲーム会社ってすごく敷居の高い世界だと思っていたんですけど、実は年代の変わらない人達ばかりで、そんなに感覚も違わない人達がゲームを作ってるんだっていうことが分かってちょっとショックを受けたんですね。机に置いてあるCDとかを見ても、自分とそんなに変わらないものを聴いているわけです。 ただ、そんなことがあって思ってたよりゲーム会社って近い場所なのかなと思いつつも、それでも遠い場所だと思っていたので、当時はそんなに意識はしていませんでした。その後、たまたまヒューマンという会社が求人を出していたのを見つけまして。ヒューマンってプロレスゲームでは当時ほぼナンバーワンの会社でしたので、プロレスゲームであれば自分でも作れるんじゃないかって考えたんです。それで、たまたまうまく入れたっていうのが一番のきっかけだったんです。 多分、そういったヒューマンとの偶然の接点がなければこの業界には入っていなかったでしょうね。 |
―――その後に須田さん自身がグラスホッパーという会社を興されたわけですが、その背景にあるきっかけはどういうものだったのですか。
須田: | 先に言ったようにヒューマンという会社に所属していたのですが、ヒューマンにいるとやはり続編を作るはめになるんですよ。オリジナルの企画も出してたんですけど、「ゲームじゃない」とかなんとかで、理解されないことが多かったです。 現場のサイズ自体もほぼ決まってましたので、大体定期的に『ファイプロ(※ファイヤープロレスリング)』があって、『フォーメーションサッカー』があって、その他…ってなるんで大体1年に2〜3本ぐらいの間でオリジナル企画の取り合いになるんですけれども、僕の場合、『ファイヤープロレスリング』と『トワイライトシンドローム』が回ってきて、『ムーンライトシンドローム』を作って、その後にオリジナルをやるにしても、もうスーツ着てゲーム作るのは限界があったので、早く脱出しようというのも含めて、グラスホッパーを設立するに至ったんです。 |
―――やっぱり作りたいものがあって、そこの器が必要だったと…。
須田: | ヒューマン自体がそれなりに大きくて、当時100人以上はいた会社ですので、何をするにしても政治力がかなり必要だったんです。上司にも気に入られる必要があったのですが、なかなか気に入られないというか、ゲームをいかに作るかってことだけを考えていたので、まったく気に入られようとも思っていなくて、それも面倒臭かった…、というかそれが面倒臭くて出たっていうのが一番あるかもしれない。 |
一同: | (笑) |
須田: | 上司っていうか部長ですね、課長には、すごく面倒をみてもらいましたね。 |
―――そんなに具体的に言っちゃって良いんでしょうか(笑)?さて、須田さんのゲームで、例えば『キラー7』なんかを見ていると、社会性といいますか、政治に絡めたような要素がすごい強く出ているように感じるんですけど、そういう社会性を出していこうという志向のようなものがあるのでしょうか。
須田: | それは選んだテーマによりますね。 今回の『NO MORE HEROES』は、そういう要素が無いとは言い切りませんが、あんまり無いです。それは主人公のパーソナリティもそうですし、彼がどういうストーリーを歩んでいくかにもよるんですけども、例えば『キラー7』はアメリカにいる殺し屋を描く時に、日本人の僕が描くにあたって、どういう捉え方で物語を作っていくかっていうふうに考えたんです。その時、日本の政治家やフィクサー達がアメリカにいて、アメリカで彼らと『キラー7』との何かしらの接触があるという構想みたいなものが生まれてくると、どうしても政治の陰謀によって殺し屋がその下で動いていくっていう図式が出来てきて、逆に政治を無視して描くことが難しくなってしまったんです。なので、『キラー7』では必然的にそうなっていったわけですが、多分主人公キャラクターのポジションで、どういうものを描くのか変わってくる思うんです。 『シルバー事件』というタイトルでは犯罪モノを描いたのですが、犯罪というものがどういう社会状況から生まれていくのかを描かないと犯罪自体を描くということにはならないというのも描いていく中で気づきました。 僕の場合バイオレンスなものを扱うことが多いので、犯罪であったりとか、殺し屋だったりとかを扱うとどうしてもそういう社会的な話になりがちといいますか、意外とそこを無視して描けなくて。それもあって『NO MORE HEROES』は、これから一流になっていく若い殺し屋を描きたくて、どちらかというと青春讃歌的な物語になっていると思います。 |
―――それでは今回の『NO MORE HEROES』どういったところからストーリーを構想されていったんでしょうか。
須田: | 『エル・トポ』っていう映画が元々のイメージですね。アレハンドロ・ホドロフスキーっていう映画監督がいるんですけども、彼の作った映画で『エル・トポ』っていう名作があって、その映画がすごく好きなんです。そのストーリーラインにちょっと近いものを最初イメージしてて、ある男が4人の刺客を連続で殺していかなければいけないという使命をこなしていってステップアップしていくという、…『エル・トポ』はステップアップではないんですけれど。まあそんなイメージがまずあって、そこから「若くて、現代の殺し屋で・・・」というパーソナリティが生まれてきて。日本のアニメオタクで、SF映画×××××××の大ファンで、というキーワードが浮かんできて、だんだんトラヴィスというキャラクターが生み出されてきたんです。 |
―――では、今回の『NO MORE HEROES』がどういったプレイ内容になるかお聞かせいただけますか。
須田: | ゲームは結構シンプルなアクションゲームになります。そんなに広くないんですけども、サンタデストロイっていうちっちゃな街がフリーランニングのフルマップであって、そこで殺し屋をランキング10位から順番に殺して行くというストーリーミッションが枝分かれで発生する、というような構造になります。 |
―――今回初めてWiiでゲームを作られたと思うんですけど、どうですかWiiは。
須田: | Wiiですか、最高ですよ(笑)。 |
―――(笑)。やっぱり振って戦うんですよね。
須田: | そうですね。Wiiの場合はリモコン操作にある程度デバイスとしての意味合いを持たせないと、そんなに面白いハードにはならないと思うんです。なので、アレをいかに使って遊ばせるかというのが、Wiiで作るゲームのほとんど命題になってきます。その点に関してはいろいろ工夫はしてますが、アイディアを盛り込みすぎると今度は操作性が良くなかったりとかするんです。そういったデザインの落としどころっていうのがすごく難しいと思いますね。 |
―――例えば、長い時間遊んでると疲れてくるんじゃないかということは真っ先に思いつくんですが、そういうところはどうでしょうか。
須田: | その辺はもうバッチリフォローされています。『NO MORE HEROES』はそんなに疲れるゲームではありません。攻撃は基本的にAボタンだけで、とどめを刺すときだけはリモコンを振るという操作になってます。僕も結構いい年なんで、振ってばっかりのゲームはデバックできないんですよ(笑)。だからそういうことも踏まえつつゲームデザインはしていますね。 |
以下続きます。
(Interview by Mr.Cube/Text by scd*)