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【DEVELOPER'S TALK】Wiiと奮闘した、チュンソフトクリエイター「コダワリ」の数々、『428〜封鎖された渋谷で〜』開発秘話(前編)

セガ×チュンソフトプロジェクトの最新作として先日発売された『428〜封鎖された渋谷で〜』は、サウンドノベルの本家とも言えるチュンソフトが10年ぶりに再び渋谷という街を舞台に描く作品です。「DEVELOPER'S TALK」ではチュンソフトにて、本作の総監督であるイシイジロウ氏を始めとした開発陣にゲーム開発の裏側について伺いました。

任天堂 Wii
セガ×チュンソフトプロジェクトの最新作として先日発売された『428〜封鎖された渋谷で〜』は、サウンドノベルの本家とも言えるチュンソフトが10年ぶりに再び渋谷という街を舞台に描く作品です。「DEVELOPER'S TALK」ではチュンソフトにて、本作の総監督であるイシイジロウ氏を始めとした開発陣にゲーム開発の裏側について伺いました。



■登場人物

イシイジロウ
総監督 過去作では『忌火起草』のプロデュース、『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』のディレクションなどを担当。本作ではプロジェクト全体を統括。

中嶋康二郎
サウンド 『トルネコの大冒険』『かまいたちの夜』『風来のシレン』『忌火起草』などチュンソフトの多くの作品に関わる。本作ではミュージックディレクターを務める。

沖邊美佐紀
サウンド 『ポケモン不思議のダンジョン』『忌火起草』などに関わる。本作ではSEのサウンドディレクターを務める。

金田元貴
プログラム これまで『忌火起草』のPS3、Wiiなどを担当。プログラムのディレクションを行う。

寺田圭伸
プログラム 『忌火起草』の開発からチュンソフトに入社。本作ではサウンドやスクリプトまわりを担当。

イシイ氏沖邊氏金田氏
寺田氏中嶋氏チュンソフト


―――まず『428〜封鎖された渋谷で〜』を制作することになった最初のきっかけから聞かせてください

イシイジロウ: セガ×チュンソフトプロジェクトというものが4年ほど前に立ちあがったのですが、その中で、セガとチュンソフトが再び組むのであれば、やはり実写サウンドノベルをもう一度作ろうじゃないか、という話が盛り上がって、そこで中村(光一氏、現チュンソフト代表取締役社長)から私に「やってみないか?」という話があったんです。

―――なるほど、開発期間はどのくらいだったのでしょうか?

イシイ: 構想や実際の開発を合わせると4年弱くらいのプロジェクトになります。開発としてはPS3の『忌火起草』とパラレルで進行していた面もあって、基本システムはほぼ同じです。『忌火起草』と『428』はどちらも当初はプラットフォームが決まっておらず、開発としてはPCベースで動くものを作って、それからPS3やWiiに移植していくという形を取りました。

―――今回、プラットフォームをWiiにした理由はどのようなことからでしょうか?

イシイ: プラットフォームに関してはすごく悩みました。前回、 PS3の『忌火起草』で、HDで5.1chというのは素晴らしい表現力があると感じました。ただ、最近のサウンドノベルはどちらかというとマニアックな受け方をされていると思うのですが、本来はそれだけで満足してはいけない、『Wii Sports』や『Wii Fit』をやっている方がプレイしても楽しめるゲームなんだという思いがありました。そこで、あえて幅広いユーザーさんのいるWiiで挑戦してみようということでWiiを選びました。

―――WiiということでWiiリモコンならではの操作を検討されたりはしましたか?

イシイ: あえてWiiリモコンならではの操作は採用していません。僕らとしては、サウンドノベルというゲームは普通のコントローラーさえあればプレイできるものだと思っています。ただ十字キーとABボタンを同時に押すことがないので片手でもプレイできるんです。Wiiリモコンの縦持ちだと片手操作が本当に楽なのでオススメですよ。テレビに向けてなくても遊べるので、自然体で、いちばん楽な感じに遊んでください。一応、昔ながらの横持ちでプレイしたいという方もいらっしゃるかと思いますので、横持ちやクラシックコントローラーにも対応しています。

―――チュンソフトのサウンドノベルと言えば『街』という渋谷を舞台にした素晴らしい作品がありますが、続編というわけではないのですか?

イシイ: 我々としては『428』は『街2』である、という認識はしていません。『街2』については、皆さんの中にも「こうだろう」とイメージされているものがあると思います。続編を作るというよりは、『街』を気に入ってくれた人はもちろんですが、今までプレイしたことがないという人にも広げていける作品にしたいという思いが強いですね。

―――渋谷という街を選んだのはどうしてでしょうか?

イシイ: 理由は2つあります。まず、渋谷という街自体がシナリオを描きやすい街だということですね。渋谷は若者の街というイメージもありますが、実際に行ってみるとサラリーマンも沢山いますし、少し奥に入れば住宅街もあるということで、雑多な物語を描きやすいんです。全国的な知名度があって、スクランブル交差点やハチ公などは日本中の人が知っているだろうというのも大きなポイントです。

イシイ: もう1つの理由としては、『街』の舞台が渋谷だったということです。『街2』というつもりではありませんが、『街』が好きだった方々も、チュンソフトが再び渋谷に挑戦するというのを喜んでいただけるのではないかということですね。

舞台は渋谷の街発売記念イベントより


―――でも渋谷って撮影に苦労しそうですよね・・・

イシイ: それで横浜になるかも、という話もありました(笑)。というのも渋谷は文字通り「眠らない街」で、撮影するのが本当に大変だったからなんです。

―――渋谷での撮影が実現できたのには、何か秘訣があったのでしょうか?

イシイ: 今回の撮影を実現できたのは『忌火起草』で撮影班の助監督をやってくれた毛利さんという方がいたからなんです。映画の経験が豊富な方で、黒澤清監督の「Cure」や「回路」などを手掛けられた方です。「回路」の中で無人の銀座を走り抜けるシーンがあって、銀座の真ん中なのに人が誰もいないんです。それで「これCGですよね?」と聞いてみると、「実写で人は消してない」と言うんです。その際は早朝に撮ったそうですが、都市でどういう撮影をしたら、何が出来るか出来ないかを熟知している方で、その方に出会えたことで、渋谷で『街』を超える撮影が出来るのではないかと決意できたんです。

―――『街』からのノウハウというよりは新しい力を得たというイメージですか?

イシイ: そうですね、やはり『街』は10年前の作品ということもあって、ノウハウ自体は途切れてしまった感じがあります。今回は『忌火起草』で集まったスタッフが、『街』を解析して、もっと良いものを作るにはどうしたらいいか考えたものが『428』に反映されていると思います。『街』はVシネマのスタッフが中心になっていたのですが、『428』は劇場映画のスタッフが中心になっています。実際のゲームをプレイしてもらえば分かると思いますが、『街』がビデオ映画のクオリティだとしたら、『428』は劇場映画のクオリティです。音も含めて『忌火起草』でやった新しいことが活かされていると思います。

―――なるほど。では4月28日という日を選んだのはどうしてですか?

イシイ: 実は最初は10月のとある日にしようと考えていたのですが、諸事情で春にしか撮影ができないということで泣く泣く4月にしたんです。それで4月25日ということで撮影を行ったのですが、後からゲームタイトルが渋谷のダジャレで決まってしまって(笑)、渋谷=428だけだとあまりに安易すぎるだろうということで、設定も4月28日にしたんです。

―――非常に丁寧なチュートリアルが収録されているのが印象的ですね

イシイ: チュートリアルは最後の最後に導入しました。僕らはサウンドノベルにチュートリアルはふさわしくない、ともともと思っていました。なぜかと言うと、文字に文字を重ねるのはタブーだからです。あくまでも物語を進めるのを丁寧にサポートしてあげるだけでいいと思っていたのですが、もっと幅広い方にサウンドノベルを楽しんでもらいたいと思い、チュートリアルの導入を決めました。

金田: チュートリアルの導入は、本当に全部の作業がようやく終わって、さあデバッグだという段階でした…。7月頭くらいだったでしょうか。ただ、イシイが言ったように、非常に意味のあることだということも感じて、そこからなんとか頑張ってチュートリアルを入れました。

イシイ: スタッフで一日中議論して、チュートリアルの導入も含めて徹底的に見直しをしました。まだ誰もサウンドノベルを遊んだことが無いという世界を仮定して作ろうと決めました。システムの表記などでも、分かる人はニヤっとするようなマニアックなものがあったのですが、それらも全て誰にでも分かり易いように直しました。チュートリアルもとても丁寧に作って、これならサウンドノベルを今まで触れてこなかった方でも楽しめるという自信のあるものを作ることができました。その甲斐もあって、体験版を制作しようという決断にもつながりました。

―――ボーナスシナリオに、『かまいたちの夜』の我孫子武丸氏とTYPE-MOONさんが参加していますが、非常に豪華ですね。

イシイ: 今回はサウンドノベルの集大成を作りたい、ここで一度区切りを作ろうということで作ってきました。本編は『忌火起草』や『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』などチュンソフトのスタッフがいる中に、『かまいたちの夜』の我孫子さんや新しい形のサウンドノベルを成功させているTYPE-MOONさんが参加することで、本当のサウンドノベルの集大成と言える気がしたんです。一度みんなで区切りをつけようということでお二方には声をかけました。

豪華なボーナスシナリオを収録


■開発の裏側を聞く

後編はこちらから


株式会社CRI・ミドルウェア
http://www.cri-mw.co.jp/

●記事に登場するミドルウェア「CRIWARE」についてのお問い合せ
http://www.cri-mw.co.jp/inquiry/
TEL: 03-5414-3011

●「CRIWARE」の採用タイトル一覧
http://www.cri-mw.co.jp/example/

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