米国の調査会社EEDARのアナリストであるJesse Divnich氏は、2010年のE3(Electronic Entertainment Expo、世界最大規模のゲームショー)を、新興勢力VS新技術の戦いであると位置づけます。
新興勢力とはソーシャルゲームやモバイルゲーム。新技術とは「ニンテンドー3DS」の裸眼立体視や、「PlayStation Move」、「Project Natal」といったモーションコントロールを指します。
新技術が人々の心を掴めなかった場合、投資が新興勢力の方へ流れてしまい、ゲーム産業が「更なる脱線」に直面する・・・とDivnich氏は指摘します。
「新興勢力VS従来のスタイル」という図式は他の場所でもいわれています。
英国ではゲームハードが苦戦。Wiiは前年比-45.1%、ニンテンドーDSも前年比-35.9%と落ち込みを見せています。
Parker Consulting Ltd,のアナリストであるNick Parker氏は、急落の原因がモバイルゲームやソーシャルゲームにあり、これらが「伝統的なビデオゲームを遊ぶ時間を浸食する」ことでライバルになっていると主張します。
また、米Googleはゲーム関連のプロダクトマネージメントリーダーを募集。
経験豊かな開発者であるMark DeLoura氏の雇用と併せてゲーム事業の準備を進めている模様です。GoogleはAndroid携帯を提唱していますが、アップルに続き、携帯&ネット方面からゲーム事業へ進出するというルートを開拓していくことになるようです。
新興勢力への傾倒がDivnich氏のいう「脱線」なのか、時代に合わせた「変化」なのかはさておき、2010年のE3が重要な意味合いを持っていることは間違いないようです。
「市場とユーザーが選ぶのは、ソーシャルな結びつきか、新たなゲーム体験か?」極論すれば、今年のE3の見所はこの一点にあるようです。
では、この勝負はどちらが勝つのでしょうか?任天堂の岩田聡社長は先日の決算説明会で興味深い発言をしています。「私たちが「なぜゲーム専用機を作るか」と言いますと、それは、「ゲーム専用機だからこそできる魅力的な、他のデバイスではできない体験を提案する」ということが、私たちの生命線だと思っているからです。(中略)私たちも次から次へと新しいことを考えて新しい提案をするわけですから、時代遅れになるとは全く思っておりませんし、「時代遅れになるのでソーシャルゲームを投入せねば」と考えたことなど全くございません。」
つまり「単純な技術ではなく、体験に根ざしたものを提供するし、提供したものが古くなっても新たな体験を提唱する」というのが岩田社長の考え方です。任天堂に限って言えば、2010年のE3の勝ち負けだけに限ってみても意味はないようです。勝とうが負けようが新たな弾を撃ち続けるつもりなのですから。
対する新興勢力側のメリットは何でしょう。軸足をPCや携帯電話から見られるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に置いており、利用者としては初期投資が少なくて済みます。コミュニケーションを取りたいというのは大きな欲求の一つであり、それゆえに広く訴求する可能性があります。
ここで注目したいのは新技術側の自由度の高さです。ハードウェア&ソフトウェア&ゲーム体験の組み合わせであり、その中にソーシャルな要素を盛り込むことは充分に可能。既にニンテンドーDS版『ドラゴンクエスト』シリーズの「すれちがい通信」や『ラブプラス』の「彼女通信」といった実例がありますから、独自の体験をさせつつもソーシャルな繋がりを感じさせることは可能です。
一見して新技術側が有利なようですが、皆を驚かせるアイデアが必要なのに加え、導入コストの高さは無視できない要素となります。
そう考えると、新技術側VS新興勢力側の戦いは、「人々がゲームにいくらまで出す気があるのか」という点に集約されます。不況の折りでもあり、無い袖は振れません。
「ゲームは単なる暇つぶしなのか、初期投資を行う価値のある先進の娯楽なのか」。2010年E3は人々の中にある「ゲーム」の地位を明らかにするものとなりそうです。
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