「次にどんなゲームを作るか、山内さんは僕に任せてくれました。時々近くにやってきて“次のマリオが要る時じゃないか?”という以外は。アイデアがある時、僕は“みんなが楽しむ新しい方法があるんですよ”と山内さんにアプローチして、これを共有するんです。山内さんがこれに同意してくれた時、それは会社のプロジェクトとなって、開発をすぐに進めることができたんです」
「時々、山内さんはすぐにゴーサインを出してくれなかったんですが、そんな時、僕はプロジェクトをコッソリ進めました。山内さんは僕の両親と同じ年だったので、僕を息子か孫のように見ていたんだと思います。ビジネスという現実があるので、結果は時に一大事になります。私のゲームが予想より売れなかった場合、山内さんは全てをひっくり返す勢いで激怒しましたね」
「山内さんが社長だった時、どんな冒険が上手くいって、何が売れないかには独特の嗅覚がありました。山内さんが“これはいいんじゃない?”といった時は、プロトタイプはほぼ完全に近づいているということ。“これはいいタイトルになるだろうね”といった時は、それは一般的ではないということなんです。山内さんはソフトがどれくらい売れるかに関して、誰よりも正確な予想ができたんです。『ドンキーコング』を見せた時、他のプロジェクトを全て中止してこれに注力するよう言われました。『スーパーマリオブラザーズ』を見せた時の言葉は今も覚えています。“これはすごいね。地上と、空の上と、水中さえ行くことができる。こりゃ、みんな驚くだろうね”」
宮本氏と山内氏のコミュニケーションは独特だったようです。「僕は山内さんにプレゼンテーションシートを出したことがないんです。僕は何枚かの短いメモやスケッチを渡して説明しました。山内さんがイメージを理解したら、今度はそれをさらに詳細に説明するんです」
山内相談役の鋭い嗅覚が任天堂の発展に寄与したのは皆さんがご存じの通り。「プレゼンテーションシートを出したことがない」のにビジョンを共有できたというのは、これは「天才は天才を知る」ということでしょうか。
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