ソニー・コンピュータエンタテインメントのアンドリュー・ハウス社長兼CEOはメディアとのラウンドテーブルに臨み、今後のプレイステーションの戦略について語りました。中でも日米のゲーム市場の乖離については質問が集中しました。 ―――日米欧のゲーム市場の乖離が無視できなくなってきたように思います。日本は携帯ゲーム機中心、欧米は据置型ゲーム機が中心になっています そのことについては私が日本に来てから色々な業界の方と課題として共有しています。一つに日本の市場が欧米よりもコンテンツドリブンであり、一つのヒット作が市場全体に与えるインパクトが強いのではないかと考えています。また、チキンエッグ(鶏が先か、卵が先か)ではないですが、作り手も携帯ゲーム機に力を入れていて、それも市場にも良い影響を与えていると思います。 欧米では大きなトレンドとしてネットワーク対戦が支持されるようになっていて、それが据置型ゲーム機中心の文化を形成していると思います。それから、ライフスタイルですね。日本と違って電車で通勤する人は少なく、ゲームは家に帰ってから遊ぶというのが文化になっています。 ―――欧米でのPSPの遊ばれ方もそうした感じなのでしょうか? そうですね、家で、というのが多いと思います。今はマルチスクリーンで生活している人が増えています。テレビを付けたままゲーム機を付けたり、家族がテレビを見ている横でゲームをするといった事です。また現状として携帯機のユーザーは割りと若い子供が中心になっています。これが何に起因するのか、ハードなのか、コンテンツなのか、ライフスタイルなのか、子供がクルマの後ろでゲームを遊ぶからなのか、色々な要因があると思います。 ―――今後、据置機と携帯機はどのような住み分けが必要でしょうか コンテンツが重要というのは変わらないと思います。しかしデバイスによってコンテンツの体験は変わります。例えば「アンチャーテッド」はこれまでPS3で人気を集めてきたタイトルですが、PSVitaのロンチでも登場します。何故こうした早い段階で投入するかというと、「アンチャーテッド」の世界観をまた別の角度から体験して欲しいからです。過去のコントローラーでの体験も素晴らしいものでしたが、タッチを使った新しい体験も価値があるものです。 据置機、携帯機、ありきではなく、コンテンツありきでどういう体験を提供したいかによってプラットフォームは選ばれていくようになるのではないでしょうか? どうコンテンツへのタッチポイントを作るかという問題です。 また、PSVitaはPS3との連携が可能になっていて、これは日本のクリエイターさんにも関心を持ってもらっている点です。据置機と携帯機で連携することでタッチポイントを増やして質も変えることができると思います。 ―――具体的にPSVitaの海外での戦略はどのようになるのでしょうか? まずは素晴らしいゲーム機としてコアなユーザーが満足できるものとして売り込んでいきたいと思います。また、PSPと比べるとネットワークやソーシャルの要素が強化されています。ですから、人と人を繋ぐという点も大きな柱として考えています。今までの携帯ゲーム機でここまでネットワークを重視したものはありませんでした。ここでもう一つのゲーム機の魅力を生み出せるのではないかと思います。 ―――据置機と携帯機という違いだけでなく日本と欧米では人気のゲームの種類も異なっています 欧米ではPS2の時代からフォトリアリスティックのゲームが主流になっています。現行世代でも『Battlefield』『Call of Duty』などリアルな戦争ゲームが人気を集めています。日本はそのトレンドとは異なりますね。またチキンエッグ(鶏が先か、卵が先か)の話になりますが、ユーザーが違うからなのか、出るゲームが違うからなのか、個人的にはその中間くらいかと思いますね。 ―――例えば映画だとハリウッド映画が日本でも人気です。でもゲームがそうならないのは・・・? それを日本人がイギリス人に聞くというのは・・・(笑)。でも、ある日本のクリエイターは「まだそうなっていないが、少しずつそうなっている」と話していました。いわゆる洋ゲーがそこそこ売れ始めていて、「アンチャーテッド」もその例に含めてもいいと思います。何故いまそのトレンドが始まったのか不思議に思いますが、現時点では答えは持っていません。 ―――SCEとして日本のゲームを支援するような活動は考えられるのでしょうか 直接的な答えではありませんが、今回PSVitaでは過去には考えられないくらい早いタイミングからパブリッシャーやデベロッパーの皆さんと意見を交換しながら作ってきました。当然、これは日本に限ることではありませんが、発売日に24タイトルを揃えられたのはこのためです。今までのハードと比べてロンチにしてハードを十分に活用したゲームが揃いました。こうした努力は今後も続けていきます。
《土本学》
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