「屍竜~」は『モンスターハンター』と同じ手法で作曲をして、そこに『ドラゴンズドグマ』のフィルターを掛けていますね。前作では敢えて踏まない様にしていた部分なので、戦闘曲でも横に流れる様な楽曲が多かったのですが、この曲は縦で刻む力強い曲です。『モンスターハンターポータブル 3rd』の「閃烈なる蒼光~ジンオウガ」同様、僕個人的にも気に入っています。「雫が~」は、Coils of Lightと同時に作った曲ですがあのフレーズを基に考えた時、二つの曲に何か統一した楽器が欲しかったのと、フルオーケストラとソロバイオリンのコントラストが逆に印象的になるんじゃないかと思いました。サントラに収録されている正式な形に持っていくまでは、ものすごく難しい曲でしたが、象徴的な一曲になったと思います。
牧野:「Eternal Return」は『ドラゴンズドグマ』の統一テーマとして、「Coils of Light」は『ダークアリズン』のテーマとして作曲してますのでその曲を聴くと色々な情景を思い出せてもらえる様な曲作りを心がけていますので、完成するまでには相当な時間がかかります。作ってみて、寝かして、また聴いて直して…を繰り返し、テーマとして意味のある曲になっているかを長期的にチェックします。
「Eternal Return」は直訳すると「久遠」。その環を断ち切るのが前作の覚者であり「Finish the cycle of eternal return」という詞に反映されています。このドラゴンズドグマの世界を母なる者が見つめている印象ですね。
一方、「Coils of Light」はその世界に生きたアッシュ、グレーテ、オルガのストーリーをアッシュ目線で歌っています。彼の自責の念に近いかも知れません。タイトル名「光の螺旋」には、竜の理の「環」という大きな循環がひとつ。もうひとつはグレーテの金髪、円状に振るう剣の切っ先の光、という、イメージで命名しました。『ドラゴンズドグマ』である以上、「Eternal Return」は外せないメロディーですが、より歌いやすく耳に入りやすい楽曲にしようと思っていました。
僕が個人的に気に入っている詞は、「When thou pulledst this boy from the sand, Didst thou see him bread, with brand?」直訳すると、「砂からその子供を起こした時、剣と髭を蓄えた英雄になると思った?」となりますが、本来の意味は「英雄になれなかった(=あなたを救えなかった)僕を、あなたは笑うだろうか?」という、アッシュからグレーテへの問いかけです。
木下ディレクターにも、「Coils of Light、ダイモーン戦で使います」って言ったら「ここでこの曲?」みたいな顔をしていましたが実際に映像で見てみると、すごくマッチしていて。 即Goサインが出ましたね。ユーザーの皆様も印象に強く残っているのではないでしょうか。すごくポジティブな評判をたくさん頂いています。
―――Raychellさんが歌い上げられた、タイアップ版「Coils of Light」の歌詞はRaychellさんご本人が書かれたということですが、日本語メインの歌詞となっていますね。前作では曲中に日本語は全く出てこなったので少し意外だったのですが、日本語でというオーダーをされたのでしょうか?
牧野:これは、「Coils of Light」を聴いた松川プロデューサーが思いついた展開ですね。今作では「フルボイス日本語化」という大きなトピックスがあったので、それをよりアピールする為の日本語歌詞でした。当初、僕自身にはイメージがなかったのですが、実際に聴いてみると母国語の威力を感じましたね。純粋に耳に入ってくるのは、やはり自分の慣れ親しんだ言語なんだな、と。