そのため出展もハードメーカーやサードパーティ大手などが中心でしたが、今年はじめて大学向けのブース「College Game Competition」が設けられました。
ブースでゲームを展示したのは、Alamo Colleges-Northwest Vista College, Brigham Young University, Savannah College of Art and Design, University of Chicago, University of Wisconsin-Stoutの5校です。それぞれゲームを一本ずつ紹介し、学生や教員らがプレゼンテーションに当たっていました。
本企画はゲームやコンピュータサイエンスのコースを持つ全米400校以上の総合大学や単科大学を対象に実施されたもので、書類&作品審査で16作品が選ばれ、その後選考委員によって5作品が選出されました。選考委員にはESA会長のほか、米カプコンCEO、UBI CEO、業界誌Polygon編集長、ゲーム評論家、Remedy Entertainment CEO、Firaxisリードアーティスト、クリスタルダイナミックスのクリエイティブディレクターと、蒼々たるメンバーで構成されています。
今回はBrigham Young Universityのアクションシューティング『Witch Hunt』と、 Alamo Colleges-Northwest Vista Collegeのパズルアクション『Time Glitch』の開発メンバーにインタビューできたので、ゲームの紹介と共にその内容を紹介しましょう。
■アニメーションコースの学生が集まって作った『Witch Hunt』
『Witch Hunt』トップビュースタイルのアクションシューティングで、プレーヤーはガンを構えた魔女となり、森の中を動き回りながら、近寄ってくる動物たちを皆殺しにしていきます。操作はWASDキーで魔女を操作し、マウスで方向を定めて左クリックで発射、ホイールで武器選択です。動物たちはどんどん数を増していき、体にふれられるとミス。アリクイのオバケみたいなボスキャラクターも登場します。ゲームオーバーになると「そして王子様と王女様は末永く幸せに暮らしました・・・めでたし、めでたし」というメッセージが表示されるという、ちょと皮肉の効いた内容になっています。
この単純で爽快感を狙ったシューティングを作成したのは、Brigham Young UniversityのCenter of Animationコースに在籍するEric Davis君ら5人のチーム。同校は『WARHAWK』シリーズなどを開発したインコグニートが拠点をかまえるユタ州ソルトレイクシティから南に70キロのプロポ市に位置しています。Eric君はゲームデザイン・プログラミング・3Dモデル・テクスチャ・リギング・アニメーションを担当しました(つまり何でもこなしたという意味です)。チームに一人だけ趣味でUnityを触っている学生がいて、彼がメインプログラマを務めたそうです。
もともとコースはCGアニメーションが専門で、プログラミングのコースはなく、ゲーム作りを教える授業や、ゲームを作るサークルなどもないとのこと。それでもEric君をはじめ、ゲームを作りたい学生が集まって、放課後や空いている時間を活用し、約8ヶ月を費やして完成させました。ゲーム開発の経験がある先生がいて、良きメンターになってくれたそうです。GameJamについても聞いたことがないとのことでした。
■ゲーム専門コースの15名が作った大作『Time Glitch』
一方で『Time Glitch』は三人称視点の3Dアクションパズルで、主人公は物体に流れる時間を制御する特殊な時間銃を利用して、さまざまなパズルを解き進んでいきます。空中を移動する床に対して時間銃を射撃すると、床の移動が停止します。そこでジャンプすれば安全に飛び移れるというわけです。時間銃を解除モードにして撃つと、再び物体の時間が流れ始め、床が移動します。向こう側についたところでジャンプすると、ぶじ渡れるという仕組み。ただし時間銃にはエネルギー制限があり、限られた時間内に手際よく行動していく必要があります。
操作はおなじみWASDキーで、スペースキーでジャンプできます。マウスで狙いを定めて時間銃を発射し、ホイールで時間銃のモードを変更できます。このように時間制御と三人称シューティングの要素をうまく組み合わせた、荒削りながらゲームデザイン的に見所のある作品となっています。
Alamo Colleges-Northwest Vista Collegeはイド・ソフトウェアの本社があるテキサス州オースティンから150キロ南西に離れたサン・アントニオに位置しています。同校には3Dアニメーションとゲーム制作のコースがあり、ゲーム制作コースはさらにゲームプロダクションとゲームプログラミングに分かれています。3コース全体で一学年が約100名と、なかなかの規模。本ゲームは3コース15名のチームから構成され、大学の授業を利用して、3ヶ月で開発されました。プログラマとアーティストが1/4、残りがゲームデザイナ(QA、進行など含む)という構成で、こちらもUnityを採用しています。
プレゼンを担当していたChris Hathaway君は本作でパズル制作、UIデザイン、レベルデザインを担当。将来は本作のようなアクションパズルを作ってみたいとのこと。またリードレベルデザイナーを担当したSarah Richmondさんは、『モンスターハンター』が大好きだと語っていました。
ちなみに各学期に一度ずつ、課外授業として学内GameJamが実施されているとのこと。かなり先進的なゲーム教育が行われていると言えるでしょう。ただしGlobalGameJamについては、Sarahさんが聞いたことはある程度。機会があれば、ぜひ参加したいと語っていました。
今回のセレクションは初めての試みということもあり、それほどレベルが高くありませんでした。私見ですが東京ゲームショウの学校ブースの方が、クオリティが高い作品も多かったように思います。しかし、アメリカではインディペンデントゲームフェスティバル(IGF)の学生部門に選出された後に、起業したり商品化されたりする例が多く、全体的なレベルは日本と比較にならないほど高いのが実情。本イベントも回を重ねることで、飛躍的にゲームのクオリティが向上していくのではないでしょうか。
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