はじめにAstoundSoundについて整理すると、ゲームオーディオに対して高さや広がりといった空間情報を付け加え、より豊かでリアル観あふれるサウンド体験を提供する次世代ゲーム機向けのプラグインとなります。再生器具も既存のステレオヘッドフォンシステムから対応しており、プレーヤーは高価なスピーカーシステムを購入する必要がありません。会場ではゴーグル型ディスプレイのオキュラス・リフトと組み合わせてデモが行われており、ダイナミック3Dサウンドの威力をアピールしていました。
もっとも、同じような3Dサウンド向けプラグインは過去にも存在します。これに対してヒネイン氏はAstoundSoundの強みについて、徹底的に人間の脳の音を認識する機能を研究し、その成果にもとづいて開発された点だと語りました。「人間は目隠しをしていても、音がどこから鳴っているか認識できます。弊社創業者のジェリー・マイアブは20年前に、なぜこうしたことが可能か、疑問を抱きました。人間の脳は空間上の音をどのように認識しているのでしょうか。脳が音を認識する際のモデル化は可能なのでしょうか。AstoundSoundは、ここからスタートしました」(ヒネイン氏)
実際の研究は1988年からスタートました。人が音を認識する時の脳の働きをMRIで撮影し、7000人以上の被験者に対して調査分析を行ったのです。このデータをもとに耳の中にある蝸牛の働きがマッピングされ、これをもとにAstoundSoundのDSPが開発されました。こうした研究成果が下積みに、これまでにないリアルな3Dサウンド体験ができるプラグインが完成したのです。
会場でヒネイン氏は3つのプラグインを紹介しました。本物の3Dサウンドを実現する「AstoundSound 3D」、5.1チャンネル・サラウンドのサウンドデータをステレオスピーカで再現する「AstoundSound Fold-down」、そしてステレオサウンドを拡張する「AstoundSound expander」です。中でも一押しはAstoundSound 3Dで、β版が数週間以内に登場し、PS4・Xbox ONE、PC向けに2013年秋に正式版がリリース予定となっています。セッションでもたっぷりと時間を取って機能の説明がなされました。
AstoundSound 3Dの最大の特徴は、音の発生源に「高さ」という概念を持ち込んだことです。従来のサラウンドスピーカー・システムなどでも音が左右に回り込んだり、背後から鳴らしたり、などは可能でした(ヒネイン氏はこれを「2D」と呼びました)。しかしAstoundSound 3Dでは音の発生源を左右360度、上下90度ずつのポイントに設定できます。これにより頭上から銃撃を受けたり、足下で爆弾が炸裂したり、といった時の音がリアルに体感できるとしています。プレーヤーの周囲に、自由に移動するバーチャルスピーカーが設定できるとイメージすれば良いでしょう。
「サウンドデータとXYZ情報は1:1で対応するため、開発者が意図した場所から音が鳴っているように聞こえます。ハードウェアデコーディングを必要とせず、すべてのプロセスはランタイムにおいて処理されるため、ゲームのような常に状況がリアルタイムに変化する環境において威力を発揮します。オーディオパイプラインに組み込むことも容易です」とヒネイン氏は説明します。
ちなみにバーチャルスピーカーの設定数はデフォルトでは10となっていますが、5-6個がオススメだといいます。「一度に人間の脳も、それくらいのサウンドを同時に認識しているのです」(ヒネイン氏)。もちろん、これらの音とは別に従来のサウンドをBGMやSEとして再生し、組み合わせてサウンド体験を提供できることは、言うまでもありません。またAstoundSound Fold-down、AstoundSound expanderのサウンドと共存させられますが、その場合も各々のサウンドが別のバスに載っている必要があるとのことです。
気になるライセンスフィーですが、プロジェクトの規模別に3段階の価格設定があり、お得なパッケージ料金もあるとのこと。ゲームのパッケージや起動画面にロゴを表示することで、ディスカウントも受けられるとのことです。オーディオ制作に「Wwise」を利用しているプロジェクトなら要チェックではないでしょうか。なによりオキュラス・リフトを用いたデモは効果抜群で、頭の動きに追随してサウンドの発生源が変化する様は、なるほど次世代を感じさせました。
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