説明会で岩田氏は、任天堂が掲げ長年貫いてきた「世の中の人々を、商品やサービスを通じて笑顔にしていく」というテーマを堅持しながら、任天堂が考える「娯楽」というものを広げ、「QOL(Quarity of Life、生活の質)を楽しく向上させるもの」と再定義。ゲームとは異なるプラットフォームの展開も始め、その最初のテーマとして健康分野に取り組んでいくと説明しました。
新しいプラットフォームは、いま市場にある製品やサービスとは異なる、独自のアプローチを行います。Wiiの戦略が「ブルーオーシャン戦略」を意識したものであったことは広く知られますが、岩田氏は今回の取り組みについても「新たなブルーオーシャンで展開したい」と述べました。そして、ノン・ウェアラブル「身につける必要がない」領域のハード・ソフト一体型のプラットフォームビジネスだと解説しました。
加えて、ユーザーが継続的に健康に取り組んでいくためには、娯楽企業として培ってきた、おもてなし能力が活かせると岩田氏は言いました。DSで大ヒットした『脳トレ』『Wii Fit』『えいご漬け』『絵心教室』など、学習体験を楽しさに溶かし、苦痛なく身につけさせることに成功しました。一時期世間を賑わせた「ゲーミフィケーション」とも相通じるところがありそうです。
「任天堂が健康分野に進出する」というニュースはセンセーショナルな見出しとなります。しかし、よく読み解くと、これはあくまでも任天堂が大事にしてきた「娯楽」であり、培ってきたものの延長線上です。「ブルーオーシャン戦略」の中に、"市場の境界を引き直す"というものがありますが、まさに、健康という強固に確立された市場において、その定義を引き直し、異なる方向からアプローチし、娯楽とハード・ソフト一体型のビジネスという任天堂の土俵に持ち込もうとするものです。
ゲームジャーナリストの平林久和氏は「色々なものがゲームになっていく」と述べました。古くはあらゆるものに動力がもたらされ、近年ではあらゆるものがデジタル化されていきました。動力は移動や運搬の苦労を取り払い、デジタルは記憶や情報伝達の困難さを取り払いました。同じように、あらゆるものが娯楽になっていく未来、健康維持や学習の難しさを娯楽が取り払っていく未来を任天堂が創造するならば、人々の生活を大きく変えるものであり、スマートフォンやタブレットへの参入云々とは次元の異なる、チャレンジする価値のある事業に思えます。
昨年9月に亡くなった前社長の山内溥氏は「任天堂は、我々が考え、形成し、創造し、歩む。人に影響されたり他の会社の動向に左右されるようなビジネスをするつもりはない。そうなったら、任天堂という会社はやめにしてもいい」(週刊東洋経済 98.10.24)と述べました。様々なメディアが連日、業績について短絡的な解決策を取るべきと主張する中で、任天堂がその思想を曲げず、自らの強みを活かし、大きな市場が拓ける可能性のあるブルーオーシャンを進むと宣言したことを大いに評価したいと思います。
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