
ディースリー・パブリッシャーから発売された『STORM LOVER』シリーズでお馴染みの高林祐樹さん、川人やすたけさんが参加されていることでも話題となった『KLAP!! ~Kind Love And Punish~』。「妖怪調教AVG」という名の通り攻略対象キャラクターは妖怪で、かつ彼らを「調教」するという乙女ゲームです。乙女ゲームですってば。

これに加え、攻略キャラクターについているキャッチコピーが「喧嘩上等ヤンキー天狗」「毒舌ブリザード」「アダルトセレブ河童」「貧血電波ヴァンパイア」「猫又シルバーシート」。こんなの興味を持つなってほうが難しいに決まってます!!そんなわけで、さっそく本編に入ってみましょう。


主人公は、教員採用試験に落ちまくっている山城暦さん(変更可/デフォルトで名前呼びあり)。夢を諦めかけたとき、やっと「黄泉比良坂幽魔専門高等学校(通称:黄泉校)」から採用通知が届きます。しかしそこは、人間には妖怪の名で知られる「幽魔」という存在が住まう48番目の県「逢魔県」にある学校で、暦さんは教師ではなく「調教師」の才能があると採用されたのです。

この黄泉校は暴走の危険性がある未熟な幽魔がきちんと妖力や感情をコントロールできるようになるための、いわば訓練校。一般的な学校のように人間界の常識を学びつつ、さまざまな学校行事を通じて作り出される意図的な興奮状態にも耐え、卒業試験をクリアすると自由に人間界へ行けるようになります。

暴走した幽魔は本人の意思とは関係なく暴れだし、自我も失うため幽閉される運命が待っています。そこで調教師は霊力の宿ったアイテムを駆使し、鎮めるというのが最も重要な役割。最初こそ、1年間勤め上げたら人間界の高校へ推薦してくれるという条件で調教師を始めた暦さん。今までの常識とかけ離れた世界に戸惑いや不安も抱きますが、幽魔の生徒たちを守り、導くために奮闘します。


本作は章ごとに分かれており、共通ルートや章の合間に出る選択肢で好みのキャラや好感度のアップする選択肢を選んでいくと、個別ルートへ突入します。このほか、キャラクターへの反応を「S」か「M」で選ぶものもあり、選んだものに合わせて調教中のボイスが変化。調教中にも余裕のある強気のボイスが聞きたければS、ちょっと弱々しく懇願するようなボイスが聞きたければMを選びましょう。好感度には関係しませんし、後々好きなように調教モードだけを楽しめるようになるのでお好みで。

ストーリーの合間にキャラクターが暴走する場面へ出くわすと、調教モードのスタート。画面上のハートマークが大きくなったタイミングでキャラクターの体をタッチすると右側にあるゲージが下がるので、これをゼロに出来れば調教成功です。相手によって効果的な部分、鼻や頭など特定の弱点があるので、積極的に狙ってコンボを繋げましょう。

好成績を収めるとイベントが発生し、キャラクターによってはスチルも回収できるので最低でもBランク以上を目指してみてください。状況によっては鎖で拘束されていたり、幽魔の姿になっているのはともかく突然脱げたりしますが、制限時間はないので落ち着いて挑めばそう難しくありません。画面タッチに対応してますが、きっちり調整したい場合はスティック操作のほうがいいでしょう。

暴走を鎮めるためのアイテムには精神的な愛の鞭…ではなく、本物の鞭をはじめ霊験あらたかな「ねこじゃらし」やビンタ、キャラクターによっては洗濯バサミやロウソク、聖水、札束まで登場。使うものによって反応するセリフが変わるので、新しいアイテムが増えたらとりあず試すのをおすすめします。
では、各キャラクターについて見ていきましょう。どうしても調教モードのインパクトが強くなりますが、ストーリーそのものは比較的シリアスにまとまっています。共通ルートはコミカルな部分も多いものの、個別ルートは乙女ゲームならではの胸キュンな展開はもちろん、各キャラクターの内面に迫るものになっています。ホロリとくるシーンもあるのでお楽しみ。
■美作燈真(CV:森久保祥太郎)
燈真は天狗の一族で、母や幼い弟・妹と暮らしています。少々喧嘩っ早いところもありますが根は優しく、貧乏生活で鍛えられた料理の腕前はなかなかのもの。天狗の美しさは鼻の高さで決まりますが、燈真は一族の間でも鼻が低いのがコンプレックス。そのため、人間界の美容整形にとても興味を抱いています。

もともと美作家は天狗一族の長を務めてきましたが、燈真の父が急死したため没落。本来であれば燈真がその跡目となるはずでしたが、燈真の妖力が不安定なため先送りされていました。いよいよ長を選挙で決めることとなり、父の意志をついで人間との共存を望む燈真は、人間との対立を望むもう1人の候補者と対決。その中で、燈真は父の死の真相を知ります。

学校内では運動会で他のクラスへライバル心をむき出しにしたり、同級生といがみあったり、宿題をサボろうとしたりと人間界の男子高校生そのままといった燈真。弟や妹がいるため面倒見がよく、苦労も重ねているせいか堅実な面も持ち合わせています。不器用なところも多いですが、まっすぐ気持ちをぶつけてくるところにはキュンとしてしまいました。

■周防壮介(CV:梶裕貴)

本来、女性しかいない「雪女」の母と、人間の父との間に生まれた少年、壮介。見た目は高校生くらいでも数百年生きている幽魔が多い中、彼は18歳という見た目そのままの年齢です。両親は人間界におり、ずっと手紙のやりとりを続けています。

早く人間界へ自由に出入りできるようになり、両親と共に暮らすことを夢見る壮介。真面目とは言えませんが卒業に向けて努力する一方、見え隠れするのは雪女を束ねる長の存在。純血を尊ぶ彼女たちは、人間との間に生まれた壮介を快く思っていません。そんな中、卒業を目前に控えた壮介に両親から「会えない」という手紙が。理由を確かめるため、壮介と暦さんは掟を破って両親の元へ向かいます。

黙っていればイケメン、時には執事姿もバッチリ決める壮介ですが、口を開けば悪態ばかり。自由奔放な性格に暦さんは振り回されっぱなしですが、実のところは構ってほしい気持ちや愛情の裏返し。だんだんと暦さんに懐き、心を許していく様は可愛らしいものがありました。壮介には本当に、本当に幸せを掴んでほしいです!
■駿河明人(CV:立花慎之介)

さまざまな事業を手掛け、人間界にも幽魔にも多大な影響力をもつ駿河家の嫡男、明人。河童の一族であり、水を操る能力も持っています。ハゲという言葉にとても敏感で、挑発や帽子好きなのも皿を隠すためだとか。

いずれ駿河家を継ぐ跡取りとして、明人は自由でありながらどこか窮屈な日々を過ごしていました。そして家柄に固執する明人の父親は、深まる暦さんと明人の仲を引き裂こうとします。ついには学校の存続に関わる大事に発展し…。普段はハゲだの鼻ペチャだの喧嘩ばかりの燈真との間に垣間見えた、熱い男の友情も見どころです。

暦さんを初対面で口説くほどの女好きで、学校内でも常に女の子に囲まれている明人。最初こそ軽いノリでしたが、徐々に本気になってくるギャップには分かっていてもつい心を動かされてしまいました。個人的な感覚ですが、なんとなく暦さんが檻に囚われたお姫様を助け出す王子様みたいに思えました。ちなみに幽魔の間では、先生と生徒の恋愛は別に珍しいことではないようです。年齢だけ見れば生徒のほうが年上というケースも多そうですね。
■カミル=セッツェリン(CV:木村良平)

カミルは人間界に行くという目的ではなく、吸血鬼としての本能を目覚めさせるために留学のような形で黄泉校へ入学しました。そして300年以上生きてきた中で初めての恋を自覚すると共に、覚醒していく吸血鬼としてのカミル。そしてずっと一緒にいるため、カミルは暦さんへある提案をします。

素なのか、それとも計算なのか分からないカミルの行動に翻弄される暦さん。初恋に戸惑いをみせるカミルがなかなかに可愛く、距離の詰め方にニヤニヤさせられました。そしてカミルがずるいなと思うのは、なんといっても調教モード。失敗すると棒読みで「きゃー」とか言うくせに、時々急に変な声を出すので何度か手が滑りました。
■播磨奏(CV:岡本信彦)

奏は600年以上も生きている猫又。ややジジ臭い…もとい古風な振る舞いが特長的ですが、時折猫の本能が勝ってしまうことも。「にゃー」という言葉遣いがあまりにも自然で可愛らしく、萌えで肩を震わせてしまいました。

もともと奏は人間界で生まれた猫でしたが、主とはぐれてしまい、もう一度会いたいという未練がもとで猫又となりました。しかし猫又は、願いが成就すれば消えてしまう運命。暦さんは奏の願いと、消えてほしくないという気持ちで揺れますが、意外なところで主の生まれ変わりが見つかります。

授業にも真面目に取り組み、奏の素直で邪気のない行動にはとことん癒されます。見た目は周囲の生徒に比べやや幼く、女装姿もばっちり似合ってしまうレベルですが、剣術の心得があり「実は結構強い」のは魅力的でした。ストーリー終盤は本当に切なくて、どうなるのか目が離せませんでした。
■出雲紫苑(CV:杉田智和)

誰か1人をクリアすると解放される、隠しキャラの紫苑先生。暦さんにとっては頼れる先輩調教師であり、イケメンで仕事ができてお酒にも強くて、大人の余裕も魅力もたっぷりな上にバイオリンが得意いうオマケつき。一方、妖怪の総元締めかつ校長であるぬらりひょんをぞんざいに扱い、生徒への調教を嬉々として行うドSな性格をしています。

紫苑先生は実のところ、人間でも幽魔でもありません。しかし、ある理由で暦さんの調教を必要とする上、キスが必要不可欠という展開が待っています。正体そのものはあっさりとバレますが、少しずつ関係が深まると彼が何故この学校にいるのか、何を望んでいるのかが明らかに。チョコレートを好きな理由がまた切なく、「どうしてこんな…」と歯がゆい気持ちになりました。でも、暦さんを大切に思っているからとはいえ、最後の展開はちょっと許しがたかったです。「本当に大事なら、逃げるなー!!」と叫びたくなりました。

ちなみに保険医の日向忍(CV:安元洋貴)とは仲が良いような悪いような、お互いに遠慮のない腐れ縁のような関係です。大人の友情もなかなかカッコイイんですよね。
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やはり調教のインパクトは絶大ですが、コミカルとシリアスがほどよく練り込まれたシナリオも楽しめました。個別ルートをクリアすると「逆調教」というドキドキのスチルも用意されているので、気になった方はぜひプレイしてみてくださいね。ただし、私のように移動中の電車などで遊ぶと大変居たたまれない気持ちになるのでやめておきましょう!