──続いては物語面に移りますが、ストーリーにおけるテーマや見所などを教えてください。
齊藤氏:先ほど少し触れましたが、人間とメダロットの関係ですね。この世界では人間とメダロットが共存して生活していますが、その設定に説得力を持たせるためにそのまま実際の現実社会に置き換えても、ユーザーさんの中には受け入れられにくい方もいるのかなと思います。なので、まずは「この学校内ではこういう関係性ですよ」という形で表現し、そこを入り口にして、この世界全体もこういう関係性なんだとイメージしてもらいやすくなるかなと考えています。


──人間とメダロットが共存しているという状況に、これまで以上に迫るのが『メダロット9』なんですね。
齊藤氏:人間とメダロットの関係性をどうどのように表現するかは、チーム内で何度も何度も議論を交わしました。そして最終的な結論であり、僕のリクエストでもあったのが「隣の席で一緒に授業を聴いている関係性にして欲しい」というものでした。それぞれが別の趣味や考え方を持っていてもいいし、関係性もそれぞれでいい。ただ、メダロットたちも、それぞれがこの学園で生活している。そういうのを、説明するんじゃなく「見てわかる」ように、ちゃんと描こうと、開発陣に伝えました。
──体験版でも、主人公だけでなくメダロットにも学生証を渡すというシーンがありましたね。権利と責任を、人間ととメダロットそれぞれが持つ。そんな印象を受けました。
齊藤氏:教室のシーンで隣りにパートナーのメダロットがいる、というのはずっとやりたかったんですよ。なので、本作でその場面を見たとき、ちょっと胸がじーんとしましたね。
──感慨深さもあったと。
齊藤氏:シリーズファンの方々にとっても、どんな物語が展開されるのかワクワクしてもらえるんじゃないかと思っています。
──ただ隣りに席があるというだけではなく、人間とメダロットの関係性に関して深く踏み込んだお話になっているんですね。
齊藤氏:はい、ただそこはあまり重くならないように、あくまでも表現として、ですけどね。
──ファンにとっても見逃せないポイントとなりそうですね。ちなみに、人間とメダロットの関係を描くという点以外では、どのようなものが盛り込まれていますか。例えば、探検部5人の成長とか?
齊藤氏:キャラクターの成長だったり、「世界を救う」といった壮大な目的のようなものは、今回はあまり意識していません。すごく個性的なキャラクターばかりなので、その魅力をただひたすらに描いています。例えて言うなら、タランティーノ監督の映画のような感じですね(笑)。お話や設定をいかに掘り下げて説得力を持たせるかではなく、登場している人物やメダロットがどんなヤツなのかを描くということに注力しました。



登場キャラクターたち
──「世界を救わねば!」みたいな、肩に力が入るような感じではなく、ただただ楽しんで遊べるという感じですね。
齊藤氏:決して押しつけることがないような形を目指しました。それぞれの個性を持ったキャラクターたちに命を吹き込み、彼らとともに自然に行動していくことでストーリーが進行する、といった感じになっていると思います。
──どんな物語が紡がれるのか、非常に気になりますね。ところで、本作に登場する面々はいずれも個性豊かですが、特に注目して欲しいキャラクターはいますか?
齊藤氏:登場するキャラは全員好きなんですが、個人的には探検部部長のクニギクですね。「たまにいるよね、こういう人」という感じが実にいいです(笑)。どのキャラも魅力的ですし、いわゆるモブキャラもストーリー進行に合わせて台詞が変わるので、マメに話しかけてもらえると嬉しいですね。それと余談ですが、登場するキャラクターたちとはいつでも手軽にロボトルをできる仕組みも本作では導入しています。
あとこれまでは、メダロットが増えるというのは「メダルとティンペットを手に入れた」という意味でしたが、本作では「仲間とそのパートナーが加わった」という形になります。そのため、仲間が増えていくというワクワク感も、大きな魅力として受け止めてもらえるんじゃないかなと。
──キャラクターと言えば、これまでは頼もしい印象が強かったメタビーやロクショウが、実に謎めく立場となっています。この点もシリーズファンにとっては、気になるポイントとなりそうですね。
齊藤氏:そうですね。その真相に関しては遊んでもらって直接触れていただきたいところですが、僕個人の感想としましては、メタビーやロクショウはこれまでのシリーズ通して最もカッコよく描けているという風に思います。


メタビー/ロクショウ
──おお! 期待が膨らみますね。
齊藤氏:個人的な感想ですけどね(笑)。
──このほかにも、シリーズファンにぜひ見て欲しいと思うポイントはありますか?
齊藤氏:前作に引き続いて、本作のキャラクターデザインも神藤かみちさんにお願いしたんですが、『8』のプロジェクトが終わった時に、「もっとキャラの個性を出せるようにして欲しい」とリクエストしたんです。そしたら『9』のプロジェクトが始まる前に、目や顔のかき分け、服装の描き方など、ずっと影で練習してくれてまして。なので、ゲーム性だけでなく、キャラクターデザインも進化しているのでぜひ注目して欲しいですね。
──なるほど。ビジュアル面に関しても、“整った”わけですね。
齊藤氏:はい、色んなタイミングが噛み合った一作となりました。
──ところで本作では、世界観が一新され、新主人公機も登場するため、これまでシリーズに触れたことがない方にとっても入りやすいのかなと想像しているんですが、そういった意図などはあるのでしょうか。
齊藤氏:基本的に、過去のものにこだわる必要はあまりないかなと考えています。今回はキャラクターだけでなく主人公機も変更しましたが、今まで遊んだことのない方に対してというのは主目的ではありません。過去の資産に頼りすぎず、今の時代に合わせつつ、僕自身が面白いと思うものを作ったというのが正直なところです。


新主人公機のジッパー/ソウエン
──その姿勢というのは、本作に関してだけでなく、シリーズ全体を通して常にあったわけですか?
齊藤氏:そうですね。新しい作品を出す時は新しいチャレンジをしないと意味がないと思ってますので、賛否両論を巻き起こしてナンボかなと(笑)。いわゆる「置きに行く」という余裕は僕たちにはないので(笑)、毎回新しいものに挑戦したいと思っています。
──それぞれの時代で、挑戦とよりよい提案を繰り返してきたのが『メダロット』シリーズであり、『メダロット9』でもあるわけですね。
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