当初登壇予定であった、株式会社ドワンゴの代表取締役・川上量生はあいにくの病欠となったが、代理である株式会社ドワンゴ技術コミュニケーション室室長・清水俊博と、スタジオ・ジブリ出身で現在は東京大学大学院情報学環助教の岩澤駿、そして現在株式会社スタジオ・ジブリでエグゼクティブイメージングディレクターと務める奥井敦が登壇し、動画も交えながら詳細な解説がなされた。
「OpenToonz」は、Digital Video社が開発した「Toonz」というソフトウェアをもとに、スタジオ・ジブリがカスタマイズしたものをベースとしている。「Toonz」は1995年公開の『もののけ姫』からジブリに導入され、それ以降、仕上げ、色指定、撮影はすべてこのソフトウェアを使用、さら2010年公開の『借りぐらしのアリエッティ』からは現代のアニメ制作スタイルに合わせて独自のカスタマイズが重ねられてきたという。
映像関連のソフトウェア開発に携わってきたドワンゴが、Digital Videoよりソースコードを買収し、SDKの開発とともに、独自にカスタマイズされたジブリエディションの無償配布を決定、イベント当日である3月26日よりソフトウェアのダウンロードもできる公式WEBサイトが公開されている。
ドワンゴの清水からは、一般のアニメ制作会社が独自にソフトウェア開発することは難しいが、オープンソース化することで最新の研究をTVアニメの現場に活用可能となるような、制作現場とシステム開発と映像研究をつなぐ新しいエコシステムが生み出せるのではないかという、本プロジェクトの狙いが語られた。
また例外的に開発エンジニアを雇っていたスタジオ・ジブリで、2014年までソフトウェア開発を行っていた岩澤からは、このソフトウェアの機能解説が。特徴として、20年にわたるスタジオ・ジブリでの使用実績、オープンソース/商用・非商用問わず無料で使用が可能、日本版インターフェイスへのローカライズ、ラスター/ベクター両方の作画形式への対応が挙げられた。そのほか、動画とともに、デジタルペイント(仕上げ)時に活用できる機能や撮影処理におけるタイムシート型(縦型)インターフェイスの紹介、「OpenToonz GTS」による手描き作画と互換性を持つワークフローなどがなされた。
最後にスタジオ・ジブリの奥井から、長年Toonzを活用し作業してきた体験をもとにしたコメントが。現在、アニメの撮影で使用されるツールというとAdobe After Effectsが主流だが、OpenToonzはそれと比べるとエフェクト(特殊効果)に弱いところがあるとしつつも、オープンソース化によって撮影に関するプラグイン開発が進めば大幅な強化が可能になるのではと、今後への期待が語られた。
「OpenToonz」「OpenToonz GTS」は下記のサイトでダウンロード可能。日本語マニュアルはまだ一部公開にとどまっているが、随時更新されるという。
https://opentoonz.github.io/
AnimeJapan 2016
ビジネスエリア: 2016年3月25日(金)~3月26日(土)
メインエリア: 2016年3月26日(土)~3月27日(日)
場所: 東京ビッグサイト
ジブリのアニメ制作ツールが無料配布、「OpenToonz」の魅力とは AnimeJapan 2016レポート
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