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【CEDEC 2016】『チェンクロ』開発者が語る「摩耗しない」モバイルゲーム運営...ストーリー性の価値を説く

8月24日から8月26日までパシフィコ横浜で開催されているゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2016」にて、モバイルゲーム『チェインクロニクル』開発者によるパネルセッションが行われました。

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8月24日から8月26日までパシフィコ横浜で開催されているゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2016」にて、モバイルゲーム『チェインクロニクル』開発者によるパネルセッションが行われました。

「スマホゲームにおけるゲーム性と物語性の”運営で摩耗しない”基礎設計手法~チェインクロニクル3年の運営と開発の事例を交えて~」と題されたこのパネルセッションでは、『チェインクロニクル』のディレクションやシナリオ制作をはじめとしたゲームのコアになる部分すべてに携わっているセガ・インタラクティブの松永純氏が登壇。モバイルゲーム運営におけるビジネスと作品のクオリティを両立させる方法論が語られました。

■モバイルゲームの現状

いわゆるソーシャルゲームの時代が終わり、ネイティブゲームが隆盛となっていると語る松永氏。スマートフォンはPS Vitaやニンテンドー3DSよりもスペックが向上しており、その性能やタッチパネルを活かしたハイエンドタイトルが多く見られるようになりました。ゲームクリエイターは、コンソールやアーケードライクなゲームが作れるかに思えましたが、実際は異なっていたようです。

ゲーム性が作りこまれているのは面倒ではないのか、物語はしょせん添え物にすぎないのではないか、キャラクターはお金を生むための商品ではないか、という業界の風潮が依然として強い状況であると松永氏は語ります。ある一面に関してはそれは正解であるとしながらも、日々の運営が必要となるモバイルゲームでは異なってくるのだとか。

運営する上での宿命は、ユーザーが遊ぶことを面倒になってしまうと続かなくなる、物語を作りこんでもすぐに消化されてしまう、キャラでお金を生まないとタイトルが死ぬ、ということ。これは買切りのパッケージゲームでなく日々の運営が必要となるゲームだからこそ起きるものだとしています。システム、物語、キャラクターといった作品としての魅力は、ゲームがリリースされる際にはユーザーや市場の価値に反映されています。


しかし、作品の価値と開発内容は運営していくにつれて摩耗していくことになります。キャラクター性能のインフレ、複雑なルールの追加、シナリオの陳腐化、キャラの布面積が減る等です。そのため、最初から作品価値を作りこむべきではないという思考が生まれるのだと松永氏は説明しています。

■長く遊ばれるゲーム性

松永氏は「ずっと面白いゲーム性」について、自身が開発に携わっている『チェインクロニクル』を例に解説。運営中に起こり得ることとして、「パラメーターのインフレ」「SRのさらに上のレアリティ追加」「間違って壊れスキルを実装してしまう」「新要素を追加したことでゲームが複雑化する」「メインゲームと関係ない要素を追加してしまう」「偉い人が開発中にゲーム性を減らせと指示する」などがあげられました。これらを防ぐために大切なのが、「ゲームのコアデザイン」と「ゲームの拡張要素」、そしてこの2つを分解して設計することなのだそうです。


コアデザインと拡張要素の定義


『チェインクロニクル』のコアデザインと拡張要素

これらを分解したうえで重要なのが、「コアデザインがどれだけ複雑につくられているか」であると松永氏は強調します。


『チェインクロニクル』のコアデザインにおけるフィールド要素。


6×3のマス目に合わせてプレイヤーが移動できるように見えるが、実際はマス目を無視した移動や、微妙な位置に立ち止まることもできる。何億ポイントもの地点がパラメーターとして存在しており、複雑な状況を作り出せる仕様となっている。


6×3マスだけのゲームでパターンを考えると少ないパターンの遊びしかできなくなるが、フリー座標であればなぎ払い攻撃一つにしても数パターンを作りだせるようになる。

このようにコアデザインを複雑にしておくと、拡張要素が作りやすくなります。もしコアデザインのパラメータ要素が少ない場合、拡張させるときに複雑化していく傾向があるとのこと。ただ、ユーザーからゲームが複雑そうだと思われると敬遠されてしまう可能性があるので、複雑なゲームですがシンプルに見えることが重要であるとしています。


複雑なものをシンプルに見せる例。


要素が少ないと組み合わせパターンが少なくなってしまう。

松永氏は、ゲーム性を追求するうえで開発者が認めないといけない2つの要素としてあげたのが、「人は同じゲームにいつか必ず飽きる」「運営スタッフは要素が乏しいと無茶をしないといけなくなる」ということ。


中身が複雑でもユーザーからみて簡単そうに見せれば、偉い人にも文句を言わせない運営が可能となる。

コアゲームの設計時点でパラメーターをできるだけ多く持たせ、尚且つ簡単なゲームに見えることが、運営でゲーム性を迷わせないために必要であるのだと松永氏。

■ゲームにおける物語


松永氏が語った物語をとりまく3つの"あるある"。

開発中にストーリーがカットされるのは、ストーリーが運営の邪魔になるという先入観を持った人がいると起こり得るそうです。この誤解は、コスト感とクオリティを伴っていればストーリーが最高の消耗品になりえるということで解くことができるのだと松永氏は述べます。


運営が行き詰まった際にできる施策例。どちらも限界があり、ユーザーが最初に触った感覚より良くなることはない。

運営していくにつれ摩耗していくゲーム性やキャラクター性とは異なり、「ストーリー」は無限に拡張することが可能となります。イベント設計を変えることは大きなリスクになりますが、「ストーリー」を投下することはリスクにはなりません。しかし、開発責任者がためらう要因もあります。それは、「ストーリー」は開発効率が悪く、価値を出すために多くのコストがかかってしまうからです。


ストーリーの開発における問題

松永氏は、ストーリー要素を入れたいときに考えることは、どうやって効率を上げるかの一点であると述べます。効率化の方法としては、「書き手が早く・良い物語を作れるようになる」「物語を効果的に配置する」の2つ。

書き手に関しては精神論になってしまう部分があるので割愛。効果的な配置に関して、『チェインクロニクル』ではスタート地点の酒場に出現する☆1のキャラクター「ナックル」の専用シナリオを「非常に面白い」と思えるクオリティに調整しています。ヘビーユーザーしかたどり着けない場所よりも、初心者でも行ける場所に配置することにより、多くのユーザーが「良い物語」に触れることができます。また、ずっと濃いシナリオが続くと読む人が疲れてしまうので、間に軽い物語が入る設計やシステム的に行間を取らせるなどして緩急をつけることが効率的であるとしています。


『チェインクロニクル』における効果的配置の例

達成感とシナリオクオリティを結び付けることも、効果的な配置となります。ゲームとしての感情の起伏がないときに物語を読ませるのは非効率であるとし、『チェインクロニクル』では、バトルの後に物語を配置することで価値を上げています。さらに、ガチャでキャラを引いた瞬間が達成感を一番感じやすいため、短いドラマが挿入されるようになっています。これは、引いたカードをユーザーにキャラクターなのだと認識させることにも一役買っています。


すべては効率。

■キャラクターの価値を守るために必要なこと

ゲーム性と同じく摩耗するキャラクターですが、原因としては「新キャラがかぶる」「既存キャラがぶれる」ということが考えられます。多くのキャラクターを出す場合にこれらを回避する方法は「すべてのキャラクターに唯一無二の特徴を持たせる」ことしかなく、そのためには、キャラクターの特徴を多く出しやすい環境設計を初期段階で用意しておく必要があると松永氏は語ります。


『チェインクロニクル』では国ごとに特徴づけを行うなど世界観を分けて設定。各国ごとの勢力を細分化させたりギルドを多く用意することで、そこに属するキャラクターに独自性を持たせている。

最後に松永氏は、ゲーム性、物語性、キャラ性のすべてに共通することは、初期設計で合理的に設計されているかが最も重要であると述べています。加えて、優れたゲームを作るためには、情熱なしでは成し遂げることはできず、作品を幸せにするためには論理性や合理性も求められるとしています。パッケージを売るだけでは成功しない市場であることを踏まえたうえで、「損なわれないものづくり」を目指したユーザーも満足させるゲーム開発を会場に呼びかけ、パネルセッションは終了しました。
《Daisuke Sato》
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