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【hideのゲーム音楽伝道記】第41回:『ICO』― 手を繋いで進む、少年少女の物語を彩る静寂と音楽

インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第41回目となる今回は、『ICO(イコ)』をご紹介します。

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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第41回目となる今回は、『ICO(イコ)』をご紹介します。


『ICO』は、2001年12月6日にソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)からプレイステーション2で発売されたアクションアドベンチャーゲームです。2011年9月22日にはプレイステーション3でHDリマスター版も発売されました。


イコ(左)とヨルダ(右)

本作の主人公は、生まれつきツノを持った少年・イコ。彼が生まれた村では、ツノが生えた子どもは、とある島にそびえ立つ無人の古城にいけにえとして捧げられることになっていました。そしてイコが13歳になった日、彼はいけにえとして、城内の棺のようなカプセルに幽閉されてしまいます。しかし、彼を閉じ込めていたカプセルが偶然壊れたことにより、城内を探索できるようになった彼は、檻に囚われていた言葉の通じない少女・ヨルダと出会うのです。

このゲームの目的は、イコを操作して、ヨルダと一緒に古城から脱出すること。イコはヨルダと手を繋ぐことができ、ヨルダと共に先へと進んでいきます。また、城内では謎の黒い影が襲いかかってくることがあり、その時は黒い影からヨルダを守りつつ戦わなくてはなりません。

手を繋いで2人で進んでいくという独特のゲーム性と、幻想的な世界観が魅力の『ICO』ですが、本作の世界を彩るうえで重要な要素となるのが音楽です。本作の音楽を手掛けたのは、作曲家の大島ミチル氏と、Pentagon(山崎耕一氏と村山光国氏によるユニット)です。

本作では、ゲーム中に音楽らしい音楽が流れることはほとんどなく、“静寂”が場を支配しています。お城の中では基本的に、イコやヨルダの足音、風の音、さざ波の音、燭台の炎が揺らめく音、鳥のさえずりなどといった環境音や効果音のみが響く形になります。これらのサウンドは非常にリアルに作られており、城内の幻想的な風景とも相まって、プレイしているうちに自分自身がイコと一体になるかのような感覚で、プレイヤーを『ICO』の世界に引き込んでくれます。また、イコやヨルダが走る時には、2人の息遣いが城内に響き渡り、城の静寂をより引き立てていますね。

ゲーム中に流れる楽曲数は16曲と少なめで、かつ、メロディのある楽曲はごくわずかです。しかしそのぶん、粒ぞろいで非常に魅力あふれる、素晴らしい音楽が用意されていますよ! それでは本作で印象的な楽曲をご紹介していきましょう。

●「Castle In The Mist」
タイトル画面でしばらく待っていると流れる、オープニングデモムービーで流れる楽曲です。マンドリンで静かに奏でられる旋律は、儚さを帯びていながら凛とした美しさがあり、この1曲だけでググッと『ICO』の幻想的な世界に引き込んでくれる力がありますよ。

●「Darkness」
城内で、黒い影がイコやヨルダに襲いかかってきた時に流れる音楽です。ヨルダを連れ去ろうと、じわじわと迫りくる黒い影。得体の知れない恐怖を演出する、まがまがしい旋律がプレイヤーの緊張感を否応なしに高めてくれます。

●「Heal」
城内には、ところどころにソファが置いてあることがあります。イコとヨルダが2人で一緒にソファに座るとセーブを行えるのですが、その際に流れる楽曲です。ほっと一息つけるような、穏やかでふわふわしたやさしい音色が癒されますよ。城内の探索や黒い影との戦闘で疲れた身体を休めている2人の憩いの時間を、音楽で演出しています。僕は初めて『ICO』をプレイした当時、この音楽があまりにも優しくて心地良いので、僕自身もしばらくイコ&ヨルダと一緒に、しばしゲームの手を止めて、音楽に聴き入りながら休んでいたこともしばしばありました(笑)。

●「ICO -You were there-」
本作のエンディングで流れる楽曲です。異国情緒あるブズーキとマンドリンで奏でられる哀愁あふれるメロディと、ロンドン聖歌隊(当時)のSteven Geraghty(スティーブン・ガラーティ)氏が歌う、繊細で透明感にあふれた歌声がじつに美しくせつないです。僕は初めてエンディングを迎え、崩れゆく城の情景とともに静かに流れ出すこの楽曲を耳にした時、心が震えると同時に全身が総毛立ち、ただただ呆然と画面を見つめていました。本作はゲーム全体に「静」のイメージがあるからこそ、ボーカルの入ったこの楽曲が特に引き立っていて、強烈な印象を残してくれると思います。幻想の中を漂うようなイメージの儚げな旋律と歌声で、プレイヤーをやさしく包み込んでくれるような深い魅力がありますね。

ちなみに、サウンドトラックCD(後述)のライナーノーツに綴られている大島氏のコメントによると、実は「ICO -You were there-」の歌い手は、当初はSteven氏ではなく、違う少年が担当する予定だったのだそうです。しかし、レコーディングの直前にその少年が声変わりしてしまっており、急きょSteven氏が担当することになったとのこと。もう叶わぬことですが、本来担当する予定だった少年による「ICO -You were there-」も、できれば聴いてみたかったですね。


本作のサウンドトラックCDは、『ICO ~霧の中の旋律~』というタイトルで発売されています。iTunes Storeでも販売されていますのでこちらもどうぞ。僕は数年前にCDを購入して以来ずっと愛聴していますが、特に「ICO -You were there-」は何百回聴いたか分からないほど大のお気に入りです。何度聴いても心が震える、まさに名曲だと思いますね。ゲームをプレイされたことのない方にもぜひ聴いてみていただきたい逸品です!

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

『ICO』は、イコとヨルダが手を取り合い協力して進めていく冒険や、自然描写、空気感など、ゲーム全体の雰囲気が洗練された、“体験する幻想世界”として非常に純度の高い作品です。こういったピュアで不思議な魅力を持った作品は、今までのゲームの歴史を見渡してみてもそうそう類を見ない、唯一無二のものだと思います。

何も分からぬまま、古城に幽閉されてしまったイコ。言葉が通じないヨルダという少女。手をつなぎ、助け合って一緒に先へ進み、信頼と絆を育んでいくイコとヨルダ。彼らの冒険の果てに、はたして何が待っているのでしょうか――。様々な想像をかきたたせてくれる幻想的な物語を、ぜひあなたの目と耳で……否、五感をフル活用して体験してみていただきたいです。アーティスティックかつ幻想的な情景、イコやヨルダが“そこにいる”と感じさせてくれるリアルな効果音、そして胸を震わせる美しい音楽で織りなされる『ICO』の世界を、ぜひご堪能ください。

最後に、本作のCMで流れていた『ICO』のキャッチコピーをご紹介して本稿を締めくくらせていただきます。『ICO』の世界観を見事に表現した名コピーだと思いますね。


「この人の手を離さない。
僕の魂ごと離してしまう気がするから」



■『ICO』公式プロモーションビデオ

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬

ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、ゲーム音楽関係の記事を執筆しています。『ICO』ディレクター・上田文人氏の最新作『人喰いの大鷲トリコ』も楽しみです!
[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

(C)2001-2011 Sony Interactive Entertainment Inc.
《hide/永芳英敬》
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