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【hideのゲーム音楽伝道記】第57回:『ニーア オートマタ』― アンドロイド達の戦いを彩る、感情を揺さぶる音楽

インサイドをご覧の皆さま、ごきげんいかがでしょうか。ゲームとゲーム音楽を愛するライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第57回目となる今回は、『ニーア オートマタ』をご紹介いたします!

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インサイドをご覧の皆さま、ごきげんいかがでしょうか。ゲームとゲーム音楽を愛するライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第57回目となる今回は、『ニーア オートマタ』をご紹介いたします!


『ニーア オートマタ』は、2017年2月23日にスクウェア・エニックスからプレイステーション4で発売されたアクションRPGです。開発はプラチナゲームズが手掛けました。なお、3月17日にはPC(Windows)版もSteamで配信開始されています。


主人公の2B(左)と、9S
 
本作の舞台は、遥か未来の地球。突如侵略してきた異星人が繰り出す兵器「機械生命体」の圧倒的な戦力の前に、人類は地上を追われて月へ逃げ延びていました。地球を奪還すべく人類側が組織したのは、アンドロイド兵士による抵抗軍。さらに、膠着した戦況を打破するため、新型アンドロイド部隊「YoRHa(ヨルハ)」を投入します。プレイヤーはヨルハに所属する女性型の戦闘用アンドロイド「2B」(ヨルハ二号B型)となって、彼女をサポートする「9S」(ヨルハ九号S型)とともに、地球を奪還するための戦いを繰り広げていきます。


本作は、『ベヨネッタ』などのアクションゲームに定評のあるプラチナゲームズが開発を手掛けたこともあって、60fpsの滑らかな映像で表現される爽快なアクションが楽しめます。また、それと並んで大きな魅力となるのが、心を震わせるシナリオと音楽です! 本作の作曲は、サウンド制作会社MONACAの岡部啓一氏、帆足圭吾氏、高橋邦幸氏が手掛けました。前作『ニーア ゲシュタルト/ ニーア レプリカント』も音楽面の評価が特に高い作品でしたが、今回も心を揺さぶられる名曲ぞろいですよ!

本作では、前作に引き続いて美しくも哀愁感にあふれた『ニーア』ならではの音楽が物語を彩ります。また、特徴的なのは、「ほぼすべての楽曲に歌が入っている」こと。今回は前作から引き続き参加するエミ・エヴァンス氏や中川奈美氏に加えて、ジュニーク・ニコール氏と河野万里奈氏が新たに参加し、より多彩な歌姫たちが彩る楽曲を堪能できますよ! それでは、本作の音楽をピックアップしてご紹介していきましょう。

◆多彩な歌い手が彩る、『ニーア オートマタ』の音楽世界



ゲームを開始してまず印象深いのは、最初に2Bが工場廃墟を探索する際の楽曲「顕現シタ異物」です。低音のベースから徐々に入ってくる中川氏によるハイトーンのコーラスが、この先に何が待ち受けているのかわからない……といったゾクゾクした感覚を音楽で演出してくれますよ。

続いては、工場廃墟の奥で待ち受けている、超大型兵器とのボス戦などで流れる音楽「終ワリノ音」。こちらも、中川氏による美しさと力強さがありながらも儚さを感じさせるコーラスが、カオスで終末的な雰囲気を演出しています。この楽曲は、ここ以外にも多くのシーンで流れるので、おそらく多くの方の印象に残ることでしょう。


やがて2Bと9Sは、とある指令を受け、朽ちてぼろぼろになったビル群が立ち並ぶ廃墟都市に降り立ちます。このフィールドで流れるのは、「遺サレタ場所/斜光」。やや物憂げな雰囲気を帯びたジュニーク氏によるボーカルは、退廃的でありながら幻想的な雰囲気を合わせ持っている廃墟都市の情景にぴったりで、プレイヤーをどんどんゲームに引き込んでいきます。


ヨルハ部隊よりも前に地球に降下したアンドロイドたちが拠点にしている、「レジスタンスキャンプ」。ここで流れるのが「穏ヤカナ眠リ」という楽曲です。穏やかなギターで奏でられる旋律が、戦いの中のひとときの憩いという感じで癒されますね。また、レジスタンスのリーダーであるアネモネという女性に話しかけると、エミ氏の繊細で美しいボーカルが入ってくるのですが、これが本当に絶品の美しさで、より癒され度が増しますよ!

2Bたちはその後も砂漠や森などさまざまな場所で機械生命体との戦いを続けてゆくことになるのですが、その中でも特に印象的な場所が、遊園地廃墟ですね。ここはかつて、たくさんの人で賑わっていたのですが、今は人間が姿を消し、かわりにピエロのような格好をしたたくさんの機械生命体たちが舞い踊っている――という場所なのです。ここで流れる楽曲、「遊園施設」が特に素晴らしいですよ! エミ氏による繊細な歌声が、“きらびやかな異様さ”があるこの場所の雰囲気に絶妙にマッチしています。この楽曲はぜひぜひ、実際にゲームをプレイしながら聴いてみていただきたいですね。遊園地廃墟のロケーションと一緒に音楽を聴くと、きっと強烈な印象を受けると思います。

本作は基本的に女性ボーカルの楽曲が多いのですが、それ以外の歌声が入っている楽曲にも印象深いものがあります。たとえば、「パスカル」という楽曲。これは、機械生命体にもかかわらず争いを嫌う平和主義者「パスカル」たちが暮らす村で流れる音楽なのですが、可愛らしい子どもの歌声(あるスタッフの娘さんが歌われているそうです)で、まったりと癒される楽曲ですよ。……ただ、ゲームをプレイすると、この曲に子どもの歌声を使っていることに、頭を抱えてしまう部分もあるんですけどね(苦笑)。

あと、機械生命体に関連する楽曲の中で印象深いのが、機械生命体の一団と和平協定を結ぶために2Bとパスカルが工場廃墟を訪れた際などに聴ける、「生マレ出ヅル意思」という楽曲ですね。これは、基本的には男声コーラスによる荘厳な印象の楽曲なのですが、機械生命体たちが「カミニ!ナル!」「コノママジャダメ!」といったフレーズを連呼する別バージョンがあり、これが強ッッッッ烈に耳に残ります! 僕はゲームで初めてこれを聴いた後、しばらく頭にこびりついて離れませんでした。というか、今でも時々突然頭の中によみがえってきて、ぐるぐるループすることがあります。異様な中毒性のある楽曲です……(笑)。


ところで、本作はエンディングが複数存在する「マルチエンディング」形式になっていて、周回を重ねるごとにそれぞれ違う見せ方の物語を楽しむことができます。3周目のオープニングで流れる「崩壊ノ虚妄」という荘厳なコーラスとオーケストラ調の楽曲があるのですが、もう、これが見事な出来栄えで。ふつふつと血がたぎるような熱い演出もあいまって、先の展開が気になり、プレイが止められませんでしたね……! 寝不足になるくらいハマりました(笑)。プレイされる際には、ぜひすべてのルートを体験してみていただきたいです。

あと、個人的に本作の中で最も深く印象に残っている音楽は、AルートおよびBルートの終盤のイベントで流れる楽曲、「曖昧ナ希望/氷雨」ですね。ネタバレを避けるため詳しい説明は差し控えますが、とある絶望的な状況の中で、激しい葛藤の末、2Bがとある人物に対してある行動に出るのです。美しくも哀愁に満ちたエミ氏のボーカルと繊細なピアノが織りなす、降りしきる氷雨のように冷たいハーモニーが絶品で、切なさにあふれたシーンを演出します。また、この楽曲はDルートの最後のノベルパートでも流れるのですが、9Sの心情描写と音楽のマッチングが、心を切り裂かれそうなほど非常に切なく、僕は思わず涙をこぼしてしまうほど激しく感情を揺さぶられました。ぜひ多くの方に聴いてみていただきたい1曲ですね。

そして、もう1曲だけご紹介しておきたいのが、本作のスタッフロールにて流れる楽曲「Weight of the world」。非常に叙情的な旋律とボーカルで織りなされる、情感あふれる名曲ですよ。ゲーム中では、Aエンディングにてジュニーク氏が歌う英語バージョンを、Bエンディングで河野氏が歌う日本語バージョンを聴くことができます。河野氏が歌うバージョンでは、後半にまるで泣き崩れるかのような歌い方になるのですが(演出的にあえて崩した歌い方にしたのだそうです)、この日本語歌詞をとある人物の心情と重ね合わせて聴くと、よりグッとくるものになるかと思いますね。

また、この楽曲のEエンディングで流れるバージョンは、ゲームの演出的にも音楽的にも凝ったことがされていて聴きごたえがありますよ! ネタバレを避けるため詳しい紹介は伏せますが、非常に感動的な演出で、鳥肌が立ちました。個人的には、ゲームの歴史に残る素晴らしいエンディングだと思いますので、ぜひ実際にご覧になって確かめてみていただきたいと思います。

◆ぜひ、自分自身の手でプレイしてみてください


 
「アンドロイドは、感情を持つことを禁じられている」。これは、2Bが物語の冒頭で9Sに対して言った言葉です。アンドロイドは人類のための兵器であり、感情を持つことは規則で禁止されているのだ、と。しかし、2Bや9Sは、様々な出来事を経験する中で、しだいに“感情”という芽が己の中でふくらんでいきます。共に行動する中で、少しずつお互いを思いやる気持ちが育まれていく2Bと9S。「感情を持ってはいけない」彼女たちが紡ぐ物語は、果たしてどんな結末を迎えるのか――。ご興味をお持ちでしたら、ぜひ、あなた自身の目で見届けていただきたいと思います。

本作の音楽は、演出効果として非常に大きな役割を果たしていて、大いにプレイヤーの心を揺さぶってくれると思います。彼女たちは「人間たちに作られた」存在ではありますが、プレイを終える頃には、きっと彼女たちのことを、生身の人間と同じように感じられることでしょう。そして、彼女たちが紡ぐ物語は、「生きる意味とは何なのか?」ということを考えさせてくれるはずです。

最近はゲームの実況プレイ配信が流行っているようですが、このゲームに関しては、人のプレイを動画で見るのではなく、自分自身でプレイしてエンディングを迎えることを強く、心から強くおすすめします!! 自分でプレイして最後のEエンディングを迎えると、きっと、えもいわれぬ強烈な熱い感情が心の底から湧きあがってくると思いますので……!

「興味があるけど、アクションゲームは苦手なのよね~」という方もご安心ください。本作では難易度をいつでも変更することが可能です。さらに、EASYモードには自動的に敵の攻撃を回避できる「オート回避」や、自動的に敵を撃つことができる「オート射撃」といったゲームプレイを補助してくれる要素が搭載されているので(各項目ごとにオンオフの設定が可能です)、アクションゲームが苦手な方でもプレイしやすいと思いますよ! アクションゲームが苦手だけど興味がある、という方でも、ぜひ触ってみていただければと思います。

ちなみに……本作は、前作『ニーア ゲシュタルト/ ニーア レプリカント』とのストーリー的な繋がりはほんのわずかなので、本作から遊んでも問題無いと思います。ただ、本作には前作のキャラクターも少しだけ登場して、そのキャラクターたちのテーマ曲がアレンジされて使用されていたりもします。特に、最後の「塔」に入る直前のイベントで流れる、前作の某人気曲は、テンションが上がりますよ!そういった部分も楽しみたい方は、できれば前作を先に遊んでおいたほうが、より深く本作を堪能できるかと思いますね。

◆サウンドトラック情報



本作のサントラCDとしては、『ニーア オートマタ オリジナル・サウンドトラック』が発売中です。本作の世界を彩る楽曲が、CD3枚組でたっぷり収録されています。『ニーア』サウンドのファンにはマストアイテムです! また、より高音質なハイレゾ版のサントラもMoraにて配信されていますので、ご興味をお持ちの方はチェックしてみてください。


なお、サントラCDの初回特典として「HACKING TRACKS」が存在します。こちらは、9Sが敵の機械生命体などに対してハッキングを行う際に流れる、8bitアレンジバージョンの楽曲が収録されているCDです。初回限定生産のため数に限りがあり、今から入手するのは難しいかもしれませんが、ご興味をお持ちでしたら探してみてくださいね。

この、ハッキングの際に音楽が8bitのピコピコしたバージョンに変わるという仕掛けも、違和感なくスムーズに音楽が変化していくのが素晴らしかったですね。ゲームへの没入感を損なわない音作りがなされていました。こちらはぜひ、実際のゲームで体感してみていただければと思います。

◆唯一無二の個性を持つ大傑作です


『ニーア オートマタ』は、退廃的な雰囲気と終末感にあふれており、狂気と愛に満ちた独特な世界を存分に堪能できる作品です。人を選ぶ部分はあると思いますが、終末的でディストピアな世界観が好みな方はまず間違いなくハマると思いますよ! そして音楽面も、2Bや9Sといったキャラクターの心情を表現し、そしてプレイヤーの感情をかきたててくれる、情感あふれる美しい音楽が本当に素敵でした。『ニーア』をプレイしていると、切なすぎて心が深くえぐられることもよくあるんですけど(笑)、そんなところも含めて僕は『ニーア』が大好きです。現在のところ、個人的に『ニーア オートマタ』はゲームとしてもゲーム音楽としても、2017年に発売された作品の中でトップクラスの出来だと思います。今年はまだ8か月ほどあるので、ちょっと気が早いですが(笑)。

本作は、ディレクターであるヨコオタロウ氏が持つ唯一無二の強烈な個性をはじめ、プラチナゲームズのスタッフの皆さんの高い開発力、吉田明彦氏の魅惑的なキャラクターデザイン、2B役の石川由依氏や9S役の花江夏樹氏をはじめとした声優陣の熱のこもった演技、MONACAの皆さんが作る素晴らしい音楽、ヴォーカリストの皆さんの熱唱……といったゲームを構成するすべての要素が良い方向に絡み合って、非常に濃密な世界が作り上げられています。ぜひ多くの人に触れてみていただきたい大傑作です!

少し余談になりますが、ゲームに限らず優れたエンターテインメント作品に必要なことは、「どれだけ人の心を動かせるか」だと僕は思っています。そういう作品こそが、多くの人の記憶に残り、後世に語り継がれていくのではないかと思うのです。そして、そういう作品が生まれるうえで必要なのは、作品を創るクリエイターさんの熱いこだわりやパッションです。その点、『ニーア オートマタ』は徹底した作り込みがなされていて、「人の心を動かす」ということも、きちんとやり遂げられています。実際、僕は本作をプレイして、大きな感銘を受けました。

僕は前作の『ニーア』をプレイした時から、そういう「心を動かされる」部分も含めて大好きな作品でした。そういう意味でも今回の『ニーア オートマタ』には大きな期待を寄せていたのですが、期待以上の出来でした! 僕は本作のプレイ中、激しく心を揺さぶられることが何度もあり、「あああああ……!!」とヘンな声を上げつつ「ああ、これぞ『ニーア』だ!! これを7年待っていたんだ!!」と噛みしめつつ、嬉しくなりながらプレイしていました。そういう作品を作り上げてくださった、ヨコオ氏をはじめとした制作スタッフの皆さんに、心から感謝と敬意をささげたいと思います。

いちゲーマーとして、このような遊びごたえのある作品を世に生み出していただけたことを本当に嬉しく思いますし、前作も含めて『ニーア』シリーズに触れる方がもっともっと増えたらいいなぁと心から思っています。これまで『ニーア』を未プレイだった方も、ご興味をお持ちでしたら、ぜひ遊んでみてくださいね!

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬

ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、ゲーム音楽関係の記事を主に執筆。最近は『ニーア オートマタ』のサントラをヘビロテで愛聴しています。人類に!栄光あれ!
[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

(C)2017 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. Developed by PlatinumGames Inc.
《hide/永芳英敬》
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