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E3で逆に目立つ横スクロール。アメリカで高評価のタクティクスRPG【オールゲームニッポン】

テレビゲームの世界は、新しいデバイスや技術の普及によって、その形は大きく進化している一方、楽しさを追い求める姿は変わりません。変わるものと、変わらないもの。過去と未来。そして我々が宿命的に背負う日本という存在。なかなか考える余裕のない現代ですが、少しだけ立ち止まって一緒に見つめてみませんか? 毎月1回、「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」ゆるーくお届けします。
山崎浩司(以下 山崎): 6月です。まずはおめでとうございます。安田さんが原作・シナリオ・ディレクターをつとめられた『GOD WARS~時をこえて~』が6月22日に発売されました。今月はE3 2017も開催されましたので、オールゲームニッポンは内容が盛りだくさんになるかと思いますが、よろしくお願いします。

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テレビゲームの世界は、新しいデバイスや技術の普及によって、その形は大きく進化している一方、楽しさを追い求める姿は変わりません。変わるものと、変わらないもの。過去と未来。そして我々が宿命的に背負う日本という存在。なかなか考える余裕のない現代ですが、少しだけ立ち止まって一緒に見つめてみませんか? 毎月1回、「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」ゆるーくお届けします。

山崎浩司(以下 山崎): 6月です。まずはおめでとうございます。安田さんが原作・シナリオ・ディレクターをつとめられた『GOD WARS~時をこえて~』が6月22日に発売されました。今月はE3 2017も開催されましたので、オールゲームニッポンは内容が盛りだくさんになるかと思いますが、よろしくお願いします。

安田善巳(以下 安田): どうもありがとうございます。よろしくお願いします。

山崎:まずは……E3を振り返ってみたいのですが、平林さんの感想はいかがだったでしょうか?

平林久和(以下 平林): ごめんなさい。今年も現地に行くのをサボってしまい、日本でネット中継を見ていました。そのうえでの感想ではありますが、Nintendo Switchが軌道に乗ったことを示したE3だったのではないでしょうか。Nintendo Switchはローンチ時期がたまたま好調だったのではなく、これからもコンスタントに売れそうな雰囲気を世界にアピールできたと思います。

山崎:そう考える理由は? 

平林:『スーパーマリオ オデッセイ』をはじめとする人気ソフトが今後、ほぼ毎月発売されることが明らかになりました。今まで任天堂社内でのソフト開発体制は、携帯型と据え置き型、ふたつに分かれていましたが、Nintendo Switchでは一本化されました。その効果が出ていますね。

ソフトがコンスタントに見込みが立ったので、証券界からの任天堂への期待は大きいようです。6月の任天堂株は連日大商いが続いて、年初来高値を更新し続けていました。

山崎:特に注目したゲームは何でしたか?

平林:『ヨッシー for Nintendo Switch』と『星のカービィ for Nintendo Switch』(ともに仮称)がいいですねー。今のゲームは完全に3Dの時代になりました。2本のアナログスティックに親指を乗せて立体空間を移動するゲームが主流です。



そんな時代だけれども、あえてカジュアルゲーマーでもわかりやすい横スクロール型のゲームをつくる。ただし、平板で古臭くならないように奥行きの演出入れて現代的にする。そんな意気込みを感じましたし、その狙いが見事に成功していると思いました。

山崎:そういえば今月は、『ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン』も発表されました。ニンテンドークラシックの人気って、十字ボタン操作のわかりやすさと関連しているのかもしれませんね。


平林:同感です。レトロゲームが好き、という気持ちには当時のシンプルな操作が好きという気持ちも込められていると思います。

山崎:ところでウチの編集部では、今年のE3でも出展タイトルから優れた作品を表彰する「INSIDE x Game*Spark Presents E3 Japan Awards 2017」を実施しました。Best of Showとして3つの作品を選出して、会場内でアワードメダルを贈らせていただきました。

安田:どんなタイトルが選ばれたんですか?

山崎:まずはカプコンさんの『モンスターハンター:ワールド』です。エリア間のロードがないシームレスなマップになりました。グラフィックスも今までとはガラリと変わりました。

平林:見た目も戦い方もゲーム的なデフォルメ要素が減って、グッと写実的になった印象です。

山崎:はい。写実的といえば、映画のようなリアル映像の『スパイダーマン』と『シャドウ・オブ・ウォー』の2作品も選出しました。というわけで、任天堂のヨッシーやカービィのようなタイトルがあるかと思うと、超リアルな『スパイダーマン』やZ指定の『シャドウ・オブ・ウォー』もある。今年も日本のゲームと世界のゲームの違いを実感したE3でした。

さて、『GOD WARS』のお話をしたいのですが、安田さん、まえまえから疑問に思っていたことがあるんです。

安田:何ですか?

山崎:テーマは日本。日本神話をモチーフにしたゲームなのに、なぜタイトルは英語表記の『GOD WARS』なのですか?


安田:じつは『GOD WARS』は、僕の確信犯的なネーミングなんです。日本の神様は穏やかで平和を好む、というのは仏教伝来以降、仏様と神様を混同することによって生まれたある種の誤解です。日本古来の神様たちは平和どころか戦いに明け暮れていました。神様同士の戦い、自然との戦い、人の争いを治めるための戦いを繰り返してきました。なかには、ヤマトタケルのように現代から見れば卑怯な手段で戦ってきた神様もたくさん。

山崎:確かヤマトタケルは女装して敵を欺いたんですよね(笑)。

安田:はい、そうです。西洋などの一神教の世界では、神は絶対的な正義で、完全無欠な存在として伝承されています。ところが、万物に神が宿り八百万神がいる日本では、いろいろな神様がいます。神様は戦って負けることもあるし、泣き出すこともある。卑怯なこともしましたし、裏切りもあった。日本の神々に絶対的で完全無欠なスーパーヒーローやヒロインはいません。

別の言い方をすると、日本の神様は弱みや欠点をたくさん抱えた人間味あふれた存在でもあります。このような神話の本質であり、日本神話の醍醐味を伝えたかったので、あえて『GOD WARS』としたんです。



山崎:そういう意図があったんですね。納得しました。ところで、安田さんのご出身地で、私がこの春まで住んでいた島根県の出雲は『GOD WARS』ではどう描こうとされたんですか? ちなみにゲーム内のナレーター、俳優の佐野史郎さんは松江市内を走る観光バスのナレーションもつとめていらっしゃいます。

安田:『GOD WARS』には出雲国、富士国、日向国の3つの勢力が登場します。古代史における出雲はオオクニヌシ神話が示すように、軍事的にも経済的にも栄えていました。時代で言うと弥生時代になりますが、当時の出雲は日本の中心地だったと考えられます。弥生時代の象徴が出雲国だとすれば、それよりも昔の縄文時代の象徴は東の富士国であり、新興勢力の象徴は天孫降臨神話の舞台となる日向国です。

出雲国。富士国。日向国。この3つの勢力を時代考証しながらも、同一時代に争ったという設定にしてゲームシナリオにしました。史実に忠実であることと、ゲームシナリオとしておもしろいこと。その両立はものすごく難しいことですが、結果的にうまく融合できて満足しています。



平林:以前のオールゲームニッポンでもお話をしましたが、幸いなことに神話―歴史―現代が一本の線でつながっているのが日本です。『GOD WARS』のサブタイトルのように「時をこえて」ぜひ多くの人が体感してほしいですね。

安田:ありがとうございます。『GOD WARS』はなかなか骨のあるゲームで、総プレイ時間をかなり長く設定しています。44のステージとやりこみ要素となるミッションバトルを含めると130時間相当になります。設計通りにどっぷり遊んでいただくのが理想ですが、「そんな時間はない」という方にも日本の神話ワールドにひたっていただきたい。

というわけで、ゲームプレイをお助けする禁断のアイテム「三種の神器セット」を6月30日から無料で配信することを決定しました。このアイテムがあれば、タクティクスRPGに慣れていない方でも安心して遊んでいただけると思います。



平林:三種の神器といえば、6月に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」が国会を通過しました。この法案には「三種の神器は贈与税非課税」という条文があると、インターネットで話題になっていました。古事記に登場する鏡・剣・勾玉が現代につながっているんだなと、改めて思いました。

山崎:という日本的なゲームでありながら、『GOD WARS』はアメリカでも評価が高いようですね。

安田:そうなんですよ。ありがたいことに、アメリカのゲームメディアでも「『GOD WARS』 は隆盛を極めたタクティクスRPGの系譜を継ぐ最高の後継作品である。このジャンルの作品が見失った戦術の面白さを復活させる素晴らしい仕事をした」(The Gamers Loungeより)のような高評価をいただいています。

山崎:では安田さん、『GOD WARS』の次回作にも期待しております!
《平林久和》
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