
さる5月17日、ディライトワークス株式会社にて、「肉会(MEAT MEETUP)Vol.12 第5制作部キャリア相談会 ~“おもしろい”をつくるコツ教えます~」が開催されました。
「肉会(MEAT MEETUP)」は、同社の仕事に興味のある方に向けて定期的に行われており、情報交換や交流、キャリアの相談などを目的として実施されているイベント。今回は第5制作部ジェネラルマネージャー、東山朝日氏が登壇。見たもの、体験したことに対し、なぜ「面白い」と思うのか、その理由を分析し、東山氏がどのようにゲーム作りに活かしてきたかを解説。そしてどうしたら面白いゲームを作れるかを受講者と一緒に考えていきます。


東山氏はナムコ~バンダイナムコゲームスで家庭用ソフト開発およびデバイス開発を、タイトーでは業務用マシンの開発を手がけ実績を残してきました。家庭用ソフトの代表作は『エースコンバット』(プランナー)、『エースコンバット2』(ディレクター)、『機動戦士ガンダム戦記』(製作プロデューサー)など。

会場は社内のオープンスペース。アースカラーをベースにした空間と落ち着いた間接照明でリラックスできます。 受講者用のクッションも気持ちよさそう。

今すぐかぶりつきたいところですが、お肉は講演の後のお楽しみ。食レポものちほど……というわけで、講座レポートをお届けします。
◆「なぜ面白いのか」を考えるクセをつける
本講座は受講者と東山氏の対話に重きを置き、一緒に考えながら作っていくものとなりました。

まず東山氏は最近あった面白い出来事について受講者から訊き出していきます。受講者から「新幹線変形ロボ シンカリオン」の展覧会を観に行くために広島まで日帰り旅行をしたというエピソードが飛び出すと、東山氏はその場で同作がなぜ面白いのかを分析します。「『シンカリオン』のモチーフはこどもにとって馴染みの深い公共機関であり、現実と地続きのファンタジーなところに、エキゾチックな魅力があるのではないか」と分析する東山氏。

そして受講者に「なぜ面白いのだろうと考えたことはありますか?」と問いかける東山氏。面白いものが面白い理由を常に意識し、掘り下げていけば自分のクリエイティブに活かすことができる。では、東山氏はどのように活かしてきたのでしょうか。
◆「面白い」を「仕組み」化して作ったゲームの具体例

東山氏は、面白いと思った理由を分析・分解・抽象化し、「仕組み」化することが大切であるとし、実例を紹介していきます。

東山氏自身が面白いと思うものは、映画、バイク、アニメ、落語、任侠モノなど。スクリーンには、それぞれなぜ面白いのかを分析した内容が映し出されます。これらを抽象化し、「仕組み」化した内容が、『エースコンバット2』などのゲームに活かされているというのです。

例えば映画のあるシーンで、「ハラハラ」体験はなぜ生まれるのか? それは異なる視点を交互に繋いで臨場感や緊張感を演出した「カットバック」の技法が使われているからです。
ここで東山氏は、この「カットバック」を参考にしたステージの例を挙げます。ステージの進行度に合わせて敵・味方に気を配らねばならない状況を作り出し、カットバックに似た「緊迫感」を体験させたと東山氏。
「このステージをプレイして誰も映画を元にしたとは思わないでしょう」。シーンやデザインをそのまま使うのではなく、一度抽象化し、「仕組み」化することが大切であると説きます。



次はバイクの面白さである「スリル」と、乗り物を「制御する楽しみ」を抽出・「仕組み」化したステージを紹介。 狭所はまさにバイクで車の間をすり抜けていくスリルをそのまま再現したもの。さらに同じマップでハイパワーな機体を与えることで、「機体を制御できる楽しみ」を体感させ、最終的にマップ制作コストを下げることにも成功しています。

そして、あるロボットアニメで得たクライマックスの高揚感・シンクロ感は、ミッションの進行と音楽の切り替えによって再現したと東山氏。ミッション冒頭は不安感を煽る曲調でスタートし、敵の弱点が露呈したタイミングでマーチ曲に切り替える演出を施したと語ります。
当時、1つのマップにいくつものBGMを差し込むことはあまりなく、制作依頼をしたところ難色を示されたのだとか。別のBGMが必要な理由を説明することで納得してもらったそうです。当時の苦労を思い出しながら「なぜこれが必要か、理性的に仕様を書くことが大切」と語ります。

落語の桂枝雀師匠の名言「笑いとは緊張の緩和によって生まれる」を応用したステージでは、緊張状態を作るために場所を高低差を把握しづらい氷原に設定。高度に上限を設けることで緊張感を煽ります。
ちなみにこのマップでは途中に高い山を置くことがポイントになっているとのこと。当初、制作側から「難易度を高くしたいならミサイルランチャーを置けばいいのでは?」と指摘されたそうですが、ここは視界を遮り、山の向こうに何があるかわからない状態を作ることがポイントであると説きます。 高い山を越え緊張状態を脱し、開けた視界の先にある基地を蹂躙する気持ちよさ。 確かに、面白くないはずがありません。


任侠モノは前半必ず敵にボコボコにやられストレスを感じますが、後半は必ずそれを解放するシーンがあり、カタルシスを感じます。この「ストレスと解放」を「仕組み」化し、プレイヤーが操る機体に当てはめた例を挙げました。一番最初はプレイヤーを強力な機体に乗せ、順に性能の落ちる機体への乗り換えを強制していき、徐々にストレスを与え、再び最初の強力な機体に乗って爽快感を感じる仕組みにしたのだそうです。基地にも油断を誘う仕掛けをつくり、シナリオに合ったシチュエーションへと誘導することにも成功しています。
◆最前線でゲームを作り続けるには「仕組み」化が必要である

このように日常的に感じる「面白さ」を分析・分解・抽象化し、「仕組み」化することでゲーム作りに応用していった東山氏。受講者から抽象化を確立するまでにかかった年数について質問されると、「駆け出しの頃は意識していなかった」と答えます。『エースコンバット』がなぜヒットしたかを考えることで、抽象化のきっかけができたのだとか。「そこから7年、1万時間はかかったのではないか」と振り返ります。
「年を取れば感性がニブります。だからこそ最前線でゲームを作るには「仕組み」化が必要になるのです」と語る東山氏。常にインプットを怠らず、量をこなし、新しいジャンルに飛び込む東山氏。「新しいジャンルに飛び込むことに不安はないか」との質問も飛び出しましたが、「5年に1回のペースでハードの革新などのパラダイムシフトが起こるゲーム業界では、新たな挑戦をしていく方がバランスを取れる」と答えていました。今回の講座はゲームデザインに限ったことではなく、多くのクリエイティブに通じることではないかと感じました。

◆メニューは5月らしく…

さて、講座後はお楽しみの肉会です! 講座中に野菜もレイアウトされ、見た目の鮮やかさがアップ!

今回は5月開催ということで「端午の節句」がテーマ。肉ちまきや、鯉のぼりから連想した
「カツオのガーリックバターステーキ」、「マグロの頬肉の甘辛しょうが焼き」などが並びます。



飯テロ的お肉料理の数々。ワイルドな見た目に反してどれもジュ―シィで柔らかい!

いいお話が聞けて美味しい料理も食べられて、心もお腹も大満足です。
ディライトワークス主催の「肉会(MEAT MEETUP) Vol.13」は2019年7月開催予定。開催日時やテーマは決まり次第Peatixにて告知されるとのこと。気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。