6桁の番号で電話をかけると、そこに広がるのは奇妙な世界。ピクセルアートで描かれた、自動生成されるフィールドを渡り歩き、謎めく真実に近づいていく──そんなアドベンチャーゲーム『Strange Telephone』が、ニンテンドースイッチに登場しました。
本作は、一足早くスマートデバイスやPC向けにリリースされており、ゲームの概要などは既に耳にしていました。ですが、いわゆるゲーム紹介程度の内容しか知らず、気になっていたものの未プレイだったため、このスイッチ版の発売を機に触れてみました。事前情報は皆無で、いわゆるジャケ買いに近い状態。文字通り、手探りな『Strange Telephone』初体験です。
本作の目的は、主人公の少女「ジル」と電話の「グラハム」が協力し、閉じこめられた世界「Core」からの脱出を目指すというもの。そのための手がかりは、ジルがいる「Core」と繋がっている無数の世界にあります。この無数の世界へのアクセス手段は、6桁の番号。この番号によって、ジルが向かう世界が生成されるのです。

ゲームを開始すると、まず目につくのがジルの可愛さ。元々がスマホアプリなので、スイッチのゲーム画面として見るとピクセルアートのドットは大きめ。ですが、シンプルながらも魅力的なデザインになっており、ちょっとした動きにも愛らしさが感じられるほど。台詞を喋らずとも、そのビジュアルや仕草だけで「彼女を助けたい!」という気持ちに駆られます。

6桁の電話番号で奇妙な世界に行けること。他の世界に長居し続けると、世界が崩壊(=バッドエンド)すること。そういった最低限の情報は提示されますが、それ以外のナビゲートは特になし。おそらく、考えるよりも先に行動するゲームなのでしょう。そこで、手探りな第一歩を踏み出すべく、プレイを開始した当日の日付け(191113)を入力してみます。

そして初めて辿り着いた世界は──なにがなんだか分かりません! 何かがあるのは見えますが、視界が乱れており、ピントが合っていない状態です。調べても「この状態では何も分からない・・・」と出てしまい、探索のしようがありません。

しばらく奇妙な世界を歩いたものの、状況は改善されず、何も分からないまま。このまま留まり続けると世界が崩壊してしまうため、電話を切って「Core」へと戻ります。そこで改めて周囲を見てみると、「太陽のランタン」を発見。もしや、これを使えば・・・?

別の世界に飛び、早速ランタンを使ってみると、視界がクリアに! Aボタンでチェックすると、反応もしっかり返ってきます。スタート地点の探索は、ゲームの基本。奇妙な世界に気を取られ、すっかり忘れていました。ともあれ、これで探索を始められそうです。

この展開は筆者が迂闊だったせいですが、『Strange Telephone』の進め方はこの流れが基本となります。まずはアイテムを入手し、次に的確なタイミング(ある人物に渡したり、特定のオブジェクトに使ったり)で使用することで、状況が変化。新たなアイテムを入手したり、行けなかった場所に行けたりと、次の一歩に繋がります。

「太陽のランタン」のように、使い方が分かりやすいものも多いのですが、「寂しそうなこの人には、何をあげたらいいんだろう・・・?」とプレイヤー側の推測が必要な場合もあり、想像力が問われる場合もあります。そしてこの“想像力”こそが、『Strange Telephone』を楽しむための素質でもあるように感じました。

ゲームを進行させるアイテムの使用については、メニュー画面にある「書庫」にヒントが書かれている場合もありますが、プレイヤー自身の“気づき”が主軸となります。加えて、この世界の存在や物語、そして結末も含め、ゲーム内で明確な答えは提示されません。

本作には様々なエンディングが用意されていますが、その多くは謎めいていますし、更におかしな状況に誘われること。6桁の番号で繋がる世界より、もっと奇妙な“現実”に繋がってしまう場合すらあります。散りばめられている断片を拾い集め、生じている空白をどのように埋めていくのか。プレイヤーが想像力を発揮することで、『Strange Telephone』が持つ面白さは大きく変わります。

謎めく世界に翻弄されながら、エンディングリストを全て埋めた(と思う)筆者ですが、その全てを解明したと言える自信はありません。人物やオブジェクトを一覧できる「書庫」の中には、未だに「?」の項目があるなど、ゲーム内にもまだまだ謎が残されているようです。

ゲームの中で、世界と世界を繋げるのは“6桁の電話番号”ですが、本当の意味で世界を繋げるのは、プレイヤーの想像力に他なりません。故に、万人にお勧めできるとは言いにくい面がありますが、この奇妙な世界に惹かれる方や、考察が好きなプレイヤーにとっては、刺激的なひとときを味わわせてくれる一作となります。

もっと導線を用意し、物語や世界をテキストで表現すれば、門戸の広いゲームになった可能性は充分にあります。ですが、そのゲームはきっと『Strange Telephone』ではなくなります。最初から最後まで明るく照らされた道を歩くのではなく、「太陽のランタン」を見つけ、自ら掲げた光で道を見つける。その足跡が、『Strange Telephone』の真実を描き出してくれるのでしょう。

そして、これは蛇足となりますが、最後にひとつだけ。事前情報もなく手探りで『Strange Telephone』を遊びましたが、とあるエンディングに辿り着くための情報を、ひとつだけゲーム外で集めてしまいました。それは、本作の作者であるyuta氏が作った映像です。
「あとひとつだけ、辿り着けないエンディングがある・・・」と悩み、その手がかりだけでも欲しいと思った方は、このyuta氏の動画を思い出してみてください。その動画を見れば、あなたが辿り着きたい“奇妙な現実”が見つかる──かもしれません。
動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=57httcEh9u0