様々な理由で、クオリティが低いゲームを指す言葉として知られる“クソゲー”。中でもファミコンのクソゲーと聞いてよく挙がるのが、『スペランカー』や『たけしの挑戦状』といったタイトルではないでしょうか。
しかし筆者の感覚からすれば、1,000タイトル以上発売されたファミコンソフトの中で考えると、むしろ良作だと言ってもいいでしょう。
まず、僕は大前提として「クソゲーなど基本的には存在しない」と思っています。と書きますと、今回のお題と矛盾がある様に思われてしまうかもしれませんが、ゲームというのはその遊び方次第で、いくらでも楽しくできるものなのです。

上に挙げた『スペランカー』や『たけしの挑戦状』は、内容そのものは賛否あるものの知名度や話題性が高く、話題にするだけでも盛り上がるという側面があります。こういった味わい方が存在するのであれば、それはそれで楽しいゲームと言えましょう。
しかし世の中には、そんな楽しみすら存在しない、“真のクソゲー”と言うべきタイトルが存在します。クソゲーと一口に言っても、その理由は多岐に渡ります。具体的に書くと、このような感じでしょうか。
- プログラムがヤバイ
- ゲームシステムがヤバイ
- ストーリーがヤバイ
- 難易度(バランス調整)がヤバイ
今回はファミコンの中でもカセットとして販売されたタイトルに絞り、筆者が「これはマジでヤバイ」と感じたクソゲーを紹介します。なおキリがなくなってしまうため「スポーツ系」「占い系」は除いてあります。
『ジーキル博士の彷魔が刻』(1988年4月8日発売 東宝)

この作品。本当に「惜しい」作品だと僕は思っています。
ジキルとハイドをモチーフにして、全く違ったゲーム性(ハイドの時はシューティング的なゲーム)にし、一粒で二度美味しいのですが、ある敵キャラクターによって全てがぶち壊しになっているんです。

なんの前触れもなくパチンコ?銃?を撃ってくる少年にも目をつぶりましょう。問題はこいつ。謎の爆弾男です。

見た目は紳士的なのですが、ジーキル博士が近寄ると突如爆弾をしれっと置いて、猛ダッシュで逃亡します。
そして、この爆弾、見えないのですが当たり判定が異常にデカく、置かれてすぐに距離を取らないと爆風に巻き込まれて大ダメージ!正直、こいつがいなければなかなかの良作だったように思うのです。
推測ですが最終のテストプレイで、「こりゃあ簡単すぎるぞ、どうするべか」となって、無理やり爆弾男を入れたとしか……。
とはいえ、全体的に雰囲気もあり、クソゲーだとは思いますが、爆弾男以外は憎めない作品でもあります。
『バード・ウィーク』(1986年6月3日発売 東芝EMI)

生態系シミュレーションとも呼ばれているようですが、正直そんなに深い内容はありません。

基本的には親鳥が巣で待っている子供に餌を運び、数回餌を与えると巣立っていく~の繰り返しになります。とてもハートフルで素敵な題材なのですが、とにかく単調すぎるんです……。
プレイヤーは親鳥をちょっとクセのある操作感で動かし、空中を飛んでいる蝶?蛾?を捕え、それを巣に運ぶ。

お邪魔キャラとして、ぴょん吉なる名前が付けられたカンガルーネズミや、ワシなどが登場し子育てを妨害してきます……。子育てというのは命がけなのです。
それでもやっぱりとにかく単調すぎるので、脳内でどう変換するかでこのゲームの楽しさは変わってくるかもしれませんね。
『所さんのまもるもせめるも』(1987年6月27日発売 エピックソニーレコード)

当時も今も人気タレントであります「所ジョージ」さんが全面監修したという作品。いわゆる『スーパマリオブラザーズ』亜流のアクションゲームなのですが、一応ストーリもあります。
「都内千代田区でテレビの仕事をしていた所さん。長女さやかのテレパシーでママがロボットになったらしく、外に出るとスタッフが皆レプリカントになっていた。所は、所沢へ向かう……。」

正直カオスですが、この世界観が所さんの魅力なのかもしれません。

しかしゲーム自体の完成度は決して高いとはいえず、微妙な操作性、理不尽な当たり判定や迷路、やられると戻される場所など正直、最後までプレイした人がどれくらいいたのか…といった感じ。今あえてやったら楽しいのかもしれません。
『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』(1989年7月25日発売 新正工業)

いわゆる『オホーツクに消ゆ』系のコマンド選択式アドベンチャーです。
原作にもあった「アンキモ編」や「京極さんに美味いものを食べさせる」や「ラーメン屋を再建する」といった3つのストーリーが収録されていますが、細かい内容はゲームオリジナルになっていると思っていただいて問題ありません。
これを今回クソゲー扱いしてしまったのにはいくつか理由がありまして、まずは全体に漂うシュールといいますか、緊迫感のない雰囲気なんです。

BGMはオリジナルではなくクラシック曲が使用されており、そのシュールさに拍車をかけています。
そして、アドベンチャーゲームの命でもある「台詞」の中にも、「じゅもん」「うそをつく」「バカのまね」といった謎の選択肢が存在。

とはいえ、ギリギリですが「美味しんぼ」の世界観を楽しむことはできます。お時間がありましたら、お味見ください。
『キャプテンED』(1989年8月25日発売 CBS・ソニーグループ)

筆者はゲームのコレクターでもありますので、おそらくはファミコンに関しては全ての作品をプレイしています。
ですので今回、販売本数や知名度を度外視した真のクソゲーという企画をさせていただいたのですが、筆者的にはこの『キャプテED』が控えめに考えても最強だと思っています。
まず、『キャプテンED』というタイトルですが、これは当時ディズニーランドで人気だった、「マイケル・ジャクソン」が主演の3D映像アトラクション『キャプテンEO』(この、DとOの違いな……)から(おそらく)きています。
言ってしまえば、『ドラゴンクエスト』と『ドラゴ“ソ”クエスト』を「読み違えてくれたらラッキー」的なタイトルの時点でお察しですが、その内容も相当なもの。

ゲームは赤い部分を踏んではいけない&非常に雑な作りのシューティングが基本。道中、ショップに入ると女の子が燃料補給をしてくれます。そして、合間合間に挟み込まれる意味不明のギャグと、謎のロックンロールバンドのようなボス…。

今となって見ればある意味「楽しめる」作品ですが、これを当時5,900円で買った子供達がいたと思うと泣けてきますよね。ゲームソムリエを名乗る筆者として、ファミコン最強のクソゲーはこの『キャプテンED』です。
販売本数や知名度といった枠を取り払って、見つめ直すクソゲーの世界。いかがだったでしょうか。今回紹介したカセットはもちろん、ディスクシステムにも中々の“猛者”がおりますので、皆様のご希望がありましたらまたやらせていただきたく思っております。
お読みいただきましてありがとうございました!
SUKESANより
ちなみに、現在私SUKESANは普段はとっても真面目な広告動画クリエイター等をやっているのですが、なぜか現在、色々な意味で話題のTKO木下さんと彼のYouTubeチャンネル内において、ゲームコンテンツに出演、ディレクションをしております。よろしければご覧ください。
今回は初代『ファミリースタジアム』で僕とTKO木下さんが対戦!
■著者紹介:SUKESAN

元ファミ通の編集者、現在はCM、番組ディレクター・プロデューサーとして活動中。新垣結衣をはじめ、アイドルやタレントのピアノ・歌の講師でもある。
《SUKESAN》