
~はじめに~
本記事は、スーパーファミコンソフト『タクティクスオウガ』の重大なネタバレが含まれます。2022年8月4日に発表された『タクティクスオウガ リボーン』で本作に初めて触れようと考えている方は、特にご注意ください。
弟の身を一番に案ずる優しい姉
今回紹介するカチュアは、主人公デニム・パウエルの姉です。SFC版ではデニムが16歳で、カチュアは18歳という設定でした。物語の舞台となるヴァレリア島は先王のドルガルアが崩御して以来、貴族階級のバクラム人、人口の大半を占めるガルガスタン人、そして少数民族のウォルスタ人による民族紛争が長く続いている内乱の地です。
3つの民族の中で一番立場が弱いウォルスタ人である姉弟は何度も不当な目に逢ってきており、父のプランシーは1年前に拉致されてしまいました。母を早くになくし、2人きりとなってしまった彼らは「ウォルスタ解放軍」の一員となって勝ち目のないゲリラ活動を続けています。

とはいえ、カチュアは戦いに身を投じるよりも「たった一人の大切な肉親であるデニムにまで死んでほしくない」という思いが強い少女。神父である父から手ほどきを受けたプリーストの身でありながら、デニムの安全のために他者を利用しようとする姿すら見せます。


プレイヤーの選択次第ではありますが、デニムは「理想に燃える若者」というイメージがある少年ですので、序盤から姉弟の心は少しずつすれ違いを見せていきます。その溝が埋まらぬまま戦い続け、やがてカチュアはバクラムに与する暗黒騎士団ロスローリアンに拉致されてしまうのでした。
閉ざされた心の扉を開けず「リセット祭」開催!
そんなカチュアを最も象徴する出来事が、最終章「Chapter4 手をとりあって」でデニムと再会した際のやりとりでしょう。暗黒騎士団に命を奪われるでもなくわざわざ拉致されたカチュアは、自身が先王ドルガルアと侍女の間に生まれた落胤だと知らされ、大きなショックを受けます。
今まさに政争の道具として利用されそうなことはもちろん、大切に思っていた弟のデニムは実は血の繫がりすらない赤の他人だったのです。絶望しきった彼女は、暗黒騎士団を打倒すべくバーシニア城に攻め上がってきたデニムたちと一度は敵対してみせます(※直前の選択肢次第では、戦闘は避けられます)。

戦闘後にはそんなカチュアを説得するチャンスが生まれますが、前述のように直接敵対してしまった場合は、彼女の問いかけに対して「置き去りにしたわけじゃない」を選ぶと一発アウト。デニムの説得もむなしく、彼女は自ら命を絶ってしまいます。
当然のごとくリセットして別の道を探りますが、その次の二択でも間違った方を選ぶとやっぱりアウト! 本作屈指の難関ポイントです。ここは筆者のみならず多くのプレイヤーにとって難関だったようで、カチュアは段々「めんどくさい姉さん」としてのイメージも強固なまでに固めてしまうのでした。
Let us cling together!
余談ですが、本作はゲームスタート時に行う主人公の名前入力で「MUSIC_ON」と入力すると作曲者のコメント付きサウンドテストモードに移行できる裏技が用意されていました。
そこではカチュアのテーマ曲「a cygnet」が「発酵女(お姉さま)」というあられもないタイトルになっており、作曲した崎元仁氏のコメントも「タイトルどおりのヒロインですよね(笑)。薄幸の発酵女」と、冗談めかしたものになっていました。とはいえ、薄幸だと分かっているならもうちょっと手加減してあげてー!?

さて、2022年8月4日には本作を元にシナリオの大幅な加筆などを施した2010年発売のPSPソフト『タクティクスオウガ 運命の輪』をさらに進化させた『タクティクスオウガ リボーン』が発表されました。2022年11月11日(金)にPS5/PS4/スイッチ/Steamで発売予定です(Steam版のみ翌日の12日発売)。
民族紛争や差別が横行する世界での重厚なストーリーや歯ごたえのある難度に酔いしれ、そしてカチュア姉さんのめんどくささに閉口しつつも、嫌いにはなれなかったみなさん! 令和の世でも再び、ヴァレリア島をめぐる戦いに身を投じてみませんか?





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