流行りの撮影手法
会場では機材制限がなかったため、ストロボやソフトボックスを大々的に使うカメラマンが多くいました。一方で、混雑するのもあってか、移動も楽でライティングの設定もほぼ不要なLEDを使うカメラマンも。

中華系カメラマンが多いのもあってか、LEDライトを使っているカメラマンは中華メーカー・ZHIYUNの「MOLUS X100 COMBO」をはじめとする機材を使っていました。日本でも認知が広がっているメーカーで、圧倒的に小型なのに光量がパワフルなのが持ち味です。

また、目を見張ったのが、手持ちの小型スモークマシンを使って撮影をしているカメラマンもいたことでした。大したスモーク量ではないとはいえ、日本だと同様の環境でも使用は躊躇われるかもしれません。それだけ貴重な機会に良い写真を残したい気持ちの表れでしょう。
なぜ、海外のコスプレイヤーは東南アジアに注目するのか

同イベントでは、26人のコスプレイヤーがサークル出展していました。こちらは主催側が事前に公募し、選抜されたコスプレイヤーたちで、東南アジアだけでなく、台湾からの出展者もいました。運営に聞いたところ、3日間で約700~800シンガポールドル(日本円で8~9 万円)の出展料がかかるそうですが、今回は100人ほどの応募があったそうです。多数の応募から選ばれたのはマレーシアのコスプレイヤーが半数以上だったとのこと。実は東南アジアではマレーシアのコスプレイヤーのクオリティが高いと評価されています。

そして、シンガポールドルは日本を含む各国通貨よりも高いため、ここで写真集やグッズを頒布することは大きな利益を獲得するチャンスがあります。ざっと計算してみても、日本からサークル出展する場合、現地の販売価格を参考にすると、原価が変わらないのに日本で販売するより利益が多くなりました。
東南アジアでコスプレイヤーの人気は非常に高く、ファンが熱烈なことも知られています。実際、東南アジアで開催されるイベントには韓国や台湾などのコスプレイヤーがゲストで呼ばれることも多くなりました。一方で、日本のコスプレイヤーは国内のイベントが充実しているのもあって、海外に出る人が少ない印象です。マレーシアのイベンターにお話を聞くことができましたが、自国イベントには海外のコスプレイヤーを招待したいものの、キャスティングのための視察はもっぱら台湾までとのこと。日本は距離的なハードルだけでなく、言葉の壁もあるかもしれません。例えば、シンガポールやマレーシアであれば英語と中国語が通じるので、中華圏の国との交流がしやすいのです。


筆者は2019年から同イベントを取材していますが、今回は出展する日本企業が増えただけでなく、日本や韓国から参加するコスプレイヤーも増えたように思いました。コスプレイヤーとしての活動の場所を広げたいと考えるなら、東南アジアは魅力的な地域です。経済的にもこれからますます発展しますし、エンタメ系の日本企業の展開も広がる中、アニメやゲームのイベントも増えるのが見込まれています。サークル出展やゲスト、または企業からのオファーを獲得するチャンスも広がるかもしれません。また、SNSを通してすでに現地のファンがいるケースもあります。実際、日本のコスプレイヤーであるしょこらさんは現地でインドネシアの方を中心に、「しょこらさんですか?」と何度も声をかけられていました。
カメラマンにとっては、海外遠征費を賄う方法が難しい面がありますが、そこさえクリアできるなら、日本と比べて撮影したコスプレイヤーの写真をSNSに投稿するまでのハードルは低いし、日本では撮れないコスプレイヤーたちに出会えるのは大きな魅力に感じました。
撮影:乃木章(X:@Osefly)