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『シャドバWB』開発・宮下尚之氏インタビュー「カードではなく、ルールで課題を解決する」―遊びやすさと競技性の両立の裏側

『シャドウバース ワールズビヨンド』リードゲームデザイナー・宮下尚之氏にインタビュー! 20年、30年先を見据えた本作についてお話を伺います

ゲーム 特集
『シャドバWB』開発・宮下尚之氏インタビュー「カードではなく、ルールで課題を解決する」―遊びやすさと競技性の両立の裏側
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前作『シャドウバース』のリリースから9年目となる6月17日、Cygamesの新作カードゲーム『シャドウバース ワールズビヨンド(以下、シャドバWB)』のサービスが開始されました。

これまでデジタルカードゲームの国内における人気を牽引していた前作から、新ルールや追加要素を加えた上でリニューアルされた本作。いかにして前作の課題と向き合い、新たなゲーム体験が構築されたかについて、2025年7月に開催された「CEDEC2025」でのセッション「シャドウバース ワールズビヨンド、二度目のDCG開発でゲームをリデザインする~遊びやすさと競技性の両立~」にて語られました。


編集部では今回、「CEDEC2025」での講演に登壇したCygamesの宮下尚之氏にインタビューを実施。前作および本作でリードゲームデザイナーを務めた宮下氏に、前作の経験から生まれた設計思想、開発のターニングポイント、そして「20年、30年先」を見据えてリニューアルを行った『シャドウバース』IPが目指す未来についてお話を伺います。

◆より遊びやすく、より新規に開けた『シャドバ』に

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、リリース後のプレイヤーの反応についてお聞かせください。

宮下尚之氏(以下、宮下):本当にありがたいことに、たくさんのユーザーさんに遊んで頂いており、正直、想定以上の盛り上がりを感じています。

前作から心待ちにしてくださっていた方はもちろん、昔やっていたけど久しぶりにやってみようとか、カードゲームは初めてだけどやってみようという方が本当に多くて。その点で、『シャドバWB』の狙いであった「新規・復帰ユーザーに向けて遊びやすくする」という部分が実現できたのかなと、非常にありがたく感じています。

ーー今回、コアシステムに「超進化」や「エクストラPP」など要素が大きく追加されました。その新要素や、新たに導入された「シャドバパーク」への反応について、開発陣としてどのようにご覧になりましたか?

宮下:やはり「エクストラPP」追加への反応は大きいと思っています。これはセッションでもご説明した通り、先攻・後攻の有利不利を補正するのが主目的のルールです。

前作では他のカードゲーム同様に「先攻が有利だよね」というお声を多くいただきましたが、『シャドバWB』ではそこが「後攻の方が戦いやすい」「いや、さすがに先攻でしょ」と意見が分かれるようになりました。意見が分かれることで目的を達成したというか、前作の課題感を一つ解決できた部分なのかなと思っています。

シャドバパークに関しても想定外の盛り上がりを感じました。開発中もメンバーみんなでパークのプレイテストはしていましたが、リリース後に実際のユーザーさんがパークに入ってロビーが満員になったり、配信者さんの300人ロビーでたくさんのアバターがわいわいしているシーンを目の当たりにしたり、開発メンバー一同すごく感慨深かったですね。

実際に盛り上がっているシーンを体感して、狙い以上の効果を感じたメンバーが多かったと思います。

ーー後継作という位置づけの中で、初代から進化させるにあたって難しさを感じた部分はありましたか?

宮下:はい、当初『シャドバWB』は一度リリースを延期させて頂きました。最初に発表した際はカードゲームの他にも麻雀やRPGといった要素があり、それがメタバース的な空間で繋がるというのが大きなコンセプトでした。その時はカードゲームを「カードゲーマー向けのコンテンツ」として考えており、今よりも前作に近いゲームデザインを志向していました。

ですが、リリースの延期を経てアプリ全体のコンセプトが「カードゲームにフォーカスし、シャドバパークで新しい楽しみを追加する」と大きく変わりました。そこでカードゲーム部分もメインコンテンツとして新規ユーザーに向けて間口を広げることを考え、これまでの『シャドバ』のeスポーツとしての実績と、新規ユーザーを取り込む遊びやすさという、対立するような二軸を両立させることが最大の課題になりました。それが今回のセッション内容に繋がっていきます。

ーー開発延期を経て「エクストラPP」などのアイデアが固まっていったのですね。

宮下:そうですね。「エクストラPP」自体はその前からも構想の一つとしてありましたし、「超進化」もまた違う形で実装はされていました。ですが、より遊びやすく、より新規に開けたものにするため、それまで作っていたカードの能力を作り直すことも多かったです。新しいターゲットに合ったものになっているかを見直し、本当に何度も作り直してブラッシュアップしていきました。

◆「カードではなくルール」で奥深さを追求

ーー先ほどの講演内にて、本作が「カードではなくルールで奥深さやゲームの共通の課題を担保する」というお話がありました。これはやはり、前作を運営される中で感じてきたことなのでしょうか。

宮下:前作『シャドウバース』は9周年を迎え、おかげさまでかなり長く運用させて頂きました。ただセッション中にもあったように、IPとして20年・30年先の未来を目指す中で、このタイミングで『シャドバWB』という後継作を出すことで新規の方を取り込み、さらにIPを発展させるという大きな目的がありました。

9年間運用してきた中での改善点も当然多くありましたので、そういった部分をしっかり反映させ、『シャドウバース』IPをブーストさせるきっかけにしようと。そこで、カードゲームのゲームデザインの方針も再設定したというところになります。

ーーこの「カードではなくルール」という発想は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

宮下:すごく具体的な例が一つあります。『シャドバ』によくあったカード能力として「自分のリーダーがバトル中に特定の能力を得る」というものがありました。これによってバトル中にずっと能力が働き、デッキのコンセプトを実現したり、強力な動きをしたりと、eスポーツシーンでもすごく活躍したカードが多かったんです。

一方で、リーダーがどんな能力を持っているかは、パッと見では分からない。コアなプレイヤーの方同士であればカードの能力も知っていて認識し合った上でプレイできますが、初めて見たときにどういう状況になっているのか分かりにくいという課題感がありました。それを可視化したいという思いが、『シャドバWB』でいう「クレスト」というルールに繋がっています。

カードが「クレスト」を付与し、その「クレスト」がバトルを通して能力を働かせる形にすることで、今まで画面をタップしないと見えなかったリーダーの能力を、バトル画面のオブジェクトとして可視化したのです。これは『シャドバWB』の開発がスタートしたときから前作からの改善点として提案し、仕様を盛り込んでいきました。

今までカードの能力テキストに全部文字で書いてあったものが、ルール上でビジュアル化・可視化されることで分かりやすくなる。そういったUIやルール側でフォローできるものはそちらに任せるという流れが、「エクストラPP」などのルール制定に繋がっていきました。

ーーご紹介頂いた「クレスト」のほかにも、本作では「超進化」「エクストラPP」も新システムの目玉となっています。これらの新要素はどのような経緯で出来たのでしょうか?

宮下:「超進化」が分かりやすい例ですが、これはかなり前の段階で、プロデューサーの木村から「『シャドバWB』の新しいバトルの目玉となるシステムを最後に一つ追加してほしい」とオーダーが来たのがきっかけです。そこで複数案を出した中の一つが「超進化」でした。

当初の「超進化」は、通常のEP(進化権)が一定ターンになると「超進化権」に変換される、という少しコア向けのテクニカルなルールでした。例えば、先攻はEPが3つというルールで、5、6ターン目でEPを使い切ると7ターン目の超進化権が1つしか変換できないから、進化権を温存するかどうか……といった駆け引きになるようなものでした。

しかし、先ほどお話した通り『シャドバWB』に大きな方針転換があり、よりとっつきやすく遊びやすいルールへとブラッシュアップされていきました。今のように「超進化するとカードが大きくなる」「相手を吹っ飛ばす」といった派手でキャッチーな、まさに新作の顔になるルールに変わっていった経緯があります。

ーーでは一方で、競技性という側面で、特に重視した設計のポイントをお聞かせください。

宮下:デッキの多様性です。セッションでも「ゲーム環境の多様性を担保する」という言葉を使いましたが、そこをかなり重視しています。流行のデッキが何種類かあり、その流行度合いが時と共に変化していくいわゆる「メタゲーム」といったものですね。

今週はAデッキとBデッキが強いと言われていたけど、もう翌週にはそれに強いCというデッキが流行って、またそのCに強いDが流行ってくると、今度はまたDに強いA´、B´がまたブラッシュアップされて出てくるみたいな。

eスポーツシーンで特定のデッキ一強になってしまうと同じマッチアップが続いてしまうので。それはそれで人によっては探求しがいのあるバトルではあるんですけれど、eスポーツシーンが配信などで見られるっていうことを考えると、そこにもやはり多様性があった方がいいなと考えています。

そのために、絶対的に強い、完全無欠なデッキができないように気を付けています。このデッキはこういう強みはあるが、一方でこういう弱点も持っている、と。やはりクラスごとに特徴があるというのがシャドバの面白さだと思うので、その特徴を発揮しつつ、それぞれの長所と短所が内包されていて、多様なデッキが流行によって移り変わっていく。そういった流動性を実現できるように作っています。

ーー多様性を生み出す要素として、リリースサイクルを早めるというお話がありました。このことで、バランス調整の難易度は上がったのではないでしょうか?

宮下:バランス調整の方針と言いますか、開発体制の話になりますが、『シャドバWB』ではテストプレイをデジタル化したことで非常に多くのサンプル量が取れるようになりました。勝率を出したり、決着ターンを見たりですとか、先攻後攻のどちらが有利に傾いているか、AデッキとBデッキはどちらが有利に出るかのような、前作のアナログでのテストでは相当なカロリーが必要だったデータ分析がスピード感をもって可能になり、テストプレイのクオリティは向上しています。

また、テストプレイに参加しているTCGプランナーには、『シャドウバース』で行っていたプロリーグのセカンドキャリア支援制度の一環でサイゲームスへ合流した元プロ選手が何人かいます。やはりプロの第一線で活躍してきた方々の視点や姿勢はとても貴重で、そういった意味で、テストの質の面も向上しています。

デジタル化による「量」の向上と、元プロ選手による「質」の向上。この両面でテストプレイのクオリティが上がったことで、短いリリーススケジュールにも対応可能になっていると考えています。

ーーなるほど、ゲームだけでなく開発体制自体も、前作よりもパワーアップしているんですね。改めて、本作は一言で表現するとどんな人に刺さるゲームだとお考えですか。

宮下:色々な人に刺さるカードゲームかなと思っています。新規の方だけでもなく、コアなカードゲーマーの方だけでもなく、両立させようとしたことを実現できたと考えていますので。本当に色々な層の方に、それぞれの楽しみ方で楽しんで頂けるコンテンツになっていると思います。

ーー最後に、今後のアップデートや展開について、プレイヤーにお伝えしたいことがあればお願いします。

宮下:まずアプリ外でお話ししますと、eスポーツの展開がこれから本格化します。大型のオンライン・オフライン大会やプロリーグの新シーズン、年末には賞金1億円の世界大会もあります。参加される方も、見てみようという方も、ぜひ興味を持って頂ければと思います。

アプリ内では、まだまだこれから色々な機能が追加されます。8月には新しい遊び方「2Pick(ツーピック)」が追加され、8月末には第3弾カードパックを予定しています。今年は目まぐるしく追加要素があるかと思います。

一方で、『シャドウバース』IPは20年、30年と長く親しんで頂けるIPを目指しており、そのための『シャドバWB』開発というお話もさせて頂きました。長期スパンでIPとして盛り上げていきたい、一過性のブームに留まらず、継続的に発展させていきたいという思いがあります。

ぜひユーザーの皆さんと一緒に盛り上げていきたいので、引き続き一緒に楽しんで盛り上がって頂ければ幸いです。

ーーありがとうございました!


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