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アルルはどこにいった!? 今とは雰囲気が全然違う“旧ぷよ”は、まるで「平日日中のゲーセン」みたいな作品だ

どんな製品にも「プロトタイプ」が存在します。誰もが知る名作パズルゲーム『ぷよぷよ』の場合も、一般に「旧ぷよ」と呼ばれるプロトタイプ的作品が開発・発売されていました。

ゲーム Nintendo Switch
アルルはどこにいった!? 今とは雰囲気が全然違う“旧ぷよ”は、まるで「平日日中のゲーセン」みたいな作品だ
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どんな製品にも「プロトタイプ」が存在します。誰もが知る名作パズルゲーム『ぷよぷよ』の場合も、一般に「旧ぷよ」と呼ばれるプロトタイプ的作品が開発・発売されています。

11月27日、ニンテンドースイッチ向けソフト『EGGコンソール ぷよぷよ MSX2』(以下『MSX2ぷよ』)の配信が開始されました。これは1991年10月に発売された作品の復刻ソフト。ルールは現代の『ぷよぷよ』と共通していながらも、その雰囲気はまったく異なることで知られています。そんな過去作を、現行機で遊べる日が訪れるとは!

というわけで、早速プレイしていきましょう。

◆アルルはどこ行った!?

ぷよぷよの主人公、そして看板キャラといえば、お馴染み「アルル・ナジャ」です。

アルルは元々はコンパイルの『魔導物語』というRPGの主人公。当時としては珍しい一人称視点のRPGで、今でも根強いファンがいる名作です。この『魔道物語』に出てくるキャラをそのまま用いたパズルゲームが『ぷよぷよ』だった、ということでもあります。

『MSX2ぷよ』のパッケージにも、アルルの可愛い顔が大きく描かれています。この作品には、今やアルルの代名詞にもなっている「ファイヤー!」「アイスストーム!」「ダイアキュート!」といった掛け声が収録されているはず……と思って『MSX2ぷよ』に手を出してしまう人もいるかもしれません。

ちょっとまった! 『MSX2ぷよ』ではアルルの掛け声を聞くことはできませんよ!

実際にプレイすれば、そのことをほんの数分の間に思い知ることができます。パッケージやタイトル画面には登場しているアルルですが、なんとゲーム本編には姿を表しません。あ、あれっ!? アルルは一体どこへ行った???

ぷよの色が全6色、CPU戦がないといった現代ぷよとの違いも目立ちますが、やはり「ゲーム本編にアルルが登場しない」というのが最も大きな違和感になってしまうはず。そうです、『MSX2ぷよ』はあくまでも純粋に落ち物パズルを楽しむための作品で、シナリオやキャラクターの躍動といった要素は一切ありません。

◆『テトリス』が作った「可能性」と「苦悩」

80年代後半から90年代にかけて、ゲームセンターでは落ち物パズルが一世を風靡していました。このきっかけは、旧ソビエト連邦で開発された『テトリス』の世界的ヒットです。

『テトリス』は、グラフィックの進化がまさに日進月歩だったコンピューターゲーム業界に一石を投じる役割も果たしました。落ち物パズルゲームに過度なグラフィックはあまり必要なく、さらに「上から降ってくるブロックを、横一列に隙間なく並べて消していく」という単純なルールが、実は底知れない奥深さを生み出すということを見事に証明しました。

鉄のカーテンの向こうから国際進出した『テトリス』は、瞬く間にゲームセンターの主役になっていきます。もちろん、家庭用コンピューターにも『テトリス』がやって来ました。この作品は、世界中の人々を魅了した数少ないソビエト製品だったのです。

そこから落ち物パズルゲームというジャンルが流行し、様々な作品が開発されていきます。しかし、『テトリス』があまりにも洗練された作品だったため、それに並ぶほどの人気を獲得するタイトルがなかなか出てこなかったのも事実。「ポスト・テトリス」が台頭してこない状況の中、登場したのが「旧ぷよ」だったのです。

◆平日日中のゲームセンターのような雰囲気

我々は、その後の歴史を知っています。伊豆に幽閉されていた源頼朝が平家を打ち破ったことも、三河の弱小豪族のせがれだった徳川家康が天下を取ったことも、社会常識としてインプットしています。それと同じように、『ぷよぷよ』シリーズは世界的人気を獲得し、いくつものシリーズ作品が販売され、セガ曰く約3900万人のプレイ人口を抱えるようになったということを知識として把握しています。

しかし、『ぷよぷよ』がキャラクター主軸のゲームになったのはセガが開発・発売に携わるようになってからのこと。『MSX2ぷよ』は、敢えて繰り返しますが「プロトタイプ的存在」の作品です。

『MSX2ぷよ』を実際にプレイして感じるのは、どことなく「ゲームセンターのような雰囲気」が漂うということ。MSX2とはホビーパソコンの規格ですから、これが本当にゲームセンターに置かれていたという意味ではありません。

ゲームモードは「エンドレス」と「ミッション」、そして2P対戦だけという今の目で見れば極めてシンプルなもの。「エンドレス」は文字通り、上から降ってくるぷよをひたすら消していくルールです。アルルの登場は一切なく、もちろん彼女の「ファイヤー!」という掛け声もなく、ただただ、ぷよを消化していきます。このあたりが、まさに「平日昼間のゲームセンター」に似た雰囲気を醸し出してくれます。

筆者自身、かつてゲームセンターの店員だったため日常的に見てきた光景ですが、平日の日中にゲームセンターを訪れる人はほぼ間違いなく「手の空いた会社員」です。ちょっとした時間潰しのためにゲームセンターに足を運びます。この人たちは対戦ゲームよりも「自分ひとりで消化するゲーム」を求めるため、結果として落ち物パズルゲームを選ぶ傾向にあります。

現在のぷよぷよと全く異なる雰囲気の『MSX2ぷよ』は、そのような意味合いから「落ち物パズルゲームの本来のプレイヤーニーズに沿った作品」とも言えるかもしれません。

◆「イメージの再設計」に成功したゲーム

1984年生まれの筆者は、実は『MSX2ぷよ』を触るのは今回が初めて。筆者にとっての「初めてのぷよぷよ」は、スーパーファミコンの『す~ぱ~ぷよぷよ』です。

『す~ぱ~ぷよぷよ』の頃のぷよは、既に現在につながる「キャラクターが躍動するゲーム」になっていました。アルルが可愛らしいキャラデザのライバルたちを次々に倒していく、という内容です。今回『MSX2ぷよ』を経験して強く感じるのは、『ぷよぷよ』を明るく気楽なイメージの、それこそ小学生がこぞってプレイしたがるようなゲームに再設計した当時の制作陣の卓越した開発戦略です。

歴史を順番通りに観察していくと、「このゲーム内容をよくここまでリニューアルすることができたよな!?」ということに気づかされ、人間の英知と創意工夫に大きな希望と尊敬の念を抱かざるを得ません。『MSX2ぷよ』が、それを教えてくれます。


《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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