ゲームスタジオの内部は、基本的に外からは見えない場所です。とりわけ世界中から注目を集めるスタジオであればなおさら。その制作環境や空気感、働く人々の姿は、普段は作品や発言の断片から想像するしかありません。
今回、そんな「見えない場所」のひとつであるコジマプロダクションのスタジオを見学する機会を得ました。『DEATH STRANDING』を生み出し、『OD』や『PHYSINT』といった期待作を作っている開発拠点には、どのような設備があり、どのような思想が空間に落とし込まれているのか。そして、あの独特なクリエイティブはどのような環境から生まれているのでしょうか。
本記事では、都内に構えるコジマプロダクションのスタジオに潜入し、その空間設計や展示物、開発環境などを、実際に見て感じた印象とともにレポートします。
エレベーターホールからコジプロの世界観に呑まれる
今回取材するにあたり訪れたコジマプロダクション。エレベーターを降りた瞬間から、すでに雰囲気たっぷりで、世界に引き込まれるような感覚です……!

まずは、廊下の先で「コジマプロダクション」のロゴがお出迎え。暗い空間で入り口を示すようにぼんやりと光るロゴが印象的です。
廊下は黒を基調としたデザインの空間に、ポスターや著名人のサインなどが並べられており、「シアターロード」という名前の通り、まさに映画館を思わせる感覚です。小島監督が「映画好き」であることを強く反映したエリアとなっていました。
廊下を抜けてとある部屋に入ると、案内人の方に「まずはこちらに……」と通され、「白い線の上に立ってください」と指定されます。なんだろう?と思いながら指示通り立っていると……。

これは……!!

これが、かの有名な1/1ルーデンス像……!小島監督のXで幾度となく見てきましたが、こうして眼の前に現れるとその存在感に圧倒されます。



とにかくディテールがすごい。小島監督と新川洋司氏が手掛けたというデザインは、細かな文字やネジ、くすみに至るまで本当に細かく作られています。



まつ毛も1本1本埋め込まれていて、ここも新川氏のこだわりだといいます。スゴい。

この空間は鏡面になっており、左右の空間が無限に続いているように感じます。正面から見て左が過去、右が未来を示しているといいます。こんな空間があるゲーム会社、他に考えられませんね。

次は、さまざまな資料が展示された部屋に。Guerrilla Gamesから渡されたDECIMAエンジンデータ入りのUSBが入れられた桐箱が飾られており、『デススト』はここから始まったのだ……!と、特にグッときました。
他にも、新川氏が描いた最終版とはかなり違う、ダークな雰囲気のサムの初期デザイン案や小島監督の指示がメモされた台本、身近なものを改造して使っていた初期PVの撮影装置など、貴重すぎる資料がずらり。中には等身大サム(ノーマン・リーダス)の頭部模型なんてものも……!?
アメリの首飾りを実際に再現したものもあり、これはなんと世界に2つしかない代物。もうひとつは、アメリを演じたリンゼイ・ワグナーが持っているそうです。


次は会議室へ。白いソファが机を丸く囲むこの空間は、月面基地がコンセプト。机も月のクレーターを思わせるデザインです。TVの下に見えるカメラから見た際に、宇宙船内部のようにみえるそうです。

こちらのラウンジも特徴的。円卓が二重構造のようになっており、内側はソファに、外側はカウンターに。よく考えるとかなり奇妙ですが、照明を含めたデザインのスゴさで納得させられます。
お次はトロフィーロードなる空間です。廊下でもあるこの空間には、これまで得てきたアワードの受賞トロフィーがずらりと並んでいます。こうして改めて見ると、『デススト』シリーズが世界的に支持されている作品であることを改めて実感できました。いろんなトロフィーの実物が見られてワクワクしました。
実際の制作現場やスタッフたちの憩い空間にも迫る
次に、実際の制作現場やスタッフたちの憩い空間も見せていただきました。

こちらが、3Dスキャンルームです。これが、俳優がスキャンされていたあの!?と思いましたが、主役級俳優は別の海外スタジオでスキャンされているとのこと。ここでは小物や食べ物、ゲストNPCなどの用途で使われているようです。とはいえ、この装置の複雑さには圧倒されます。

こちらが撮影スタジオ。グリーンバック・ブルーバック完備で、簡単な動画撮影や素材撮影などに使用されるそうです。

隣接するコントロールルームでは、デジタルミキシングコンソールを完備。収録だけでなく、立体音響に対応した大規模なポストプロダクションにも対応可能。サウンドスタッフはだいたいこの部屋にいるそうで、ビルの高層フロアにこの規模のスタジオがあるのは世界的にも稀なんだとか。THX認証(映画館レベルの音響品質を保証する客観的な認証)も受けており、コジマプロダクションのこだわりがここにも見て取れます。

各スタジオや作業部屋間には待機スペースも。黒いブロック型の家具が設置されているのが目を引きます。机用の背が高いブロックと、座る用の背が低いブロックで、しっかり質感が違うのが印象的でした。

ゲームづくりはやはり座り仕事が基本ということもあり、運動不足が気になりそうなもの。コジマプロダクションにはフレキシブルルームという場所が設けられており、スタッフが運動して身体を伸ばすことができます。また、簡単なモーションキャプチャー収録にも使用でき、その名の通りフレキシブルに用途に合わせられる部屋だそうです。
福利厚生として、毎朝パーソナルトレーナーが来て希望者はここでストレッチが可能。小島監督も毎日ここでストレッチしてから仕事に臨んでいるそうです。




最後に、カフェテリアを紹介。こちらは約150席が用意された憩いの場で、ランチや小休憩に利用されます。非現実的でSFチックな白い空間と、自然で温かみのあるウッドが共存している不思議なデザインです。港区に位置することもあり、窓からはオフィスビル群から東京タワー、東京スカイツリーも見られます。
窓側2面に大型スクリーンとプロジェクターが2機種ずつ設置されており、サラウンドスピーカーも備わっているとのこと。映画鑑賞会なども行われるそうで、お話を聞いているだけでも「こんなところで働きたい……!」という気持ちが湧き出てきました。


カフェテリアには、レゴ認定プロビルダーの三井淳平氏が制作したレゴルーデンスも設置されています。三井氏はCADなどを使わず頭の中で設計して制作するそうですが、最初に見たルーデンスの細かさがレゴになってもしっかり現れていて、あまりにもスゴい……!!
小島秀夫監督の作品はその作家性や世界観に惹かれている方は多いでしょう。その作家性は、こうした働く場所までに及ぶ世界観へのこだわりからも来ているのかもしれません。













