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【追悼】ありがとう岸本良久さん!『くにおくん』シリーズは僕らにとっての「秘密基地の主」だった!

『熱血硬派くにおくん』を筆頭にする「くにおくんシリーズ」の生みの親、ゲームクリエイターの岸本良久氏が4月2日に亡くなりました。

ゲーム コラム
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熱血硬派くにおくん』を筆頭にする『くにおくん』シリーズの生みの親、ゲームクリエイターの岸本良久氏が4月2日に亡くなりました。

岸本氏が送り出した『くにおくん』シリーズは、コンピューターゲーム史にはっきりとその爪痕が刻まれています。当初からメディア展開されている作品をゲーム化したというわけではなく、最初から「ゲームの中だけのキャラクター」だったくにおくんは、ゲームセンターの常連か子供たちしか知らない存在でした。まだまだコンピューターゲームの社会的地位が低かった時代、くにおくんは「秘密基地の主」と言えるキャラ。そこはまさに、親たちが知らない世界でした。



「正義の不良」が喧嘩からスポーツまで何でも挑戦!

『くにおくん』シリーズの第1作は、『熱血硬派くにおくん』というアーケードゲームです。発売は1986年5月。社会現象になったインベーダーブームは既に過去の話となり、ゲームセンターが大衆の娯楽として定着しつつあった頃でもあります。

『熱血硬派くにおくん』は、不良学生を題材にした内容です。

当時、不良は社会問題になっていました。ただしこの内情は、「不良が問題を起こしていた」というよりも「教育を提供する側と享受する側の思惑のズレ」が表面化した現象と言えるものですが、ともかく80年代当時は良くも悪くも不良が注目されていました。くにおくんは、親友がぶん殴られたことに激怒し仕返しをしてやろうと思い立った「正義の不良」です。

駅やディスコ、果ては暴力団の事務所でくにおくんは次々に襲いかかる敵を殴ったり蹴ったりマウントポジションを取ってパウンドしたり、とにかく「不良」と呼ぶに相応しい泥臭い肉弾戦を繰り広げます。当時としては精緻なグラフィック、そして電子音声を組み込んだギミックが施され、『熱血硬派くにおくん』はたちまちのうちにゲーセンのスターとなりました。

しかし、くにおくんはその後、『熱血高校ドッジボール部』がアーケードゲームとして発売され、そして同作品がファミコンに移植されてから際立った化学変化を起こします。

『熱血高校ドッジボール部』で繰り広げられるドッジボールは、単なるドッジボールではありません。何と、相手の体力が尽きるまでボールをぶつけあうというルールです。その上で、この作品にはアーケード・ファミコン共に対戦プレイが実装されています。ファミコン版はハードの性能の問題でアーケード版よりも簡略化された部分はありますが、それでもアーケード版では単なるモブだったキャラの個性化、必殺シュートの実装など、数々の創意工夫で「アーケード版以上のファミコン版」が実現したのです。

90年代の子供たちにとっての「くにおくん」とは

その後も『くにおくん』シリーズは作品数を積み重ね、岸本氏が手掛けた作品だけでなく、『熱血硬派』シリーズ、スポーツシリーズ、そして『ダウンタウン』シリーズと分岐していきます。

その中で、注目すべきは1989年4月に発売のファミコンソフト『ダウンタウン熱血物語』。これは、『くにおくん』シリーズ第1作の『熱血硬派くにおくん』のコンセプトを引き継ぎつつも、キャラクターがデフォルメされて子供たちにとっても遊びやすくなった作品です。筆者個人の思い出と経験から考えても、この『ダウンタウン熱血物語』が当時の子供たちにとっての「くにおくんの受容」につながったと感じています。

『ダウンタウン熱血物語』は今で言うところのアクションRPGで、アイテムを使うことでパラメータを上げていきます。敵から武器を取り上げて、それを自分のものとして使うこともできます。何と、遥か後世の作品『龍が如く』のように、モブキャラにも名前(苗字)がついています。

90年代に小学生だった人にとっての「くにおくん」とは、『熱血硬派くにおくん』のリアルなビジュアルではなく、『ダウンタウン熱血物語』のデフォルメキャラだったはずです。そして、そんなくにおくんは当時の親世代以上の大人には「謎のキャラクター」でもありました。

家庭用ゲーム機という名の「メディア」

くにおくんは、冒頭にも書いた通り「既存の作品をゲーム化したキャラ」ではありません。

たとえば、「北斗の拳」の原作は週刊少年ジャンプ連載の漫画で、テレビアニメにもなっています。「水戸黄門」は江戸時代の講談から始まり、歌舞伎、読み物、映画、そしてテレビの時代劇ドラマにもなっています。そうした「メディアのバックボーン」を、くにおくんは最初から持っていたわけではありません。くにおくんは「ゲームの中だけのキャラ」だったのです。

コンピューターゲームがあくまでも「子供の玩具」と見なされていた時代、家庭用ゲーム機を一つの情報メディアとして考える大人は少数派でした。それは登場間もないテレビが、映画関係者から「電気紙芝居」と嘲笑されていたこととよく似ています。しかし、ファミコンで遊んでいた子供たちにとって「メディアの種類」はどうでもいいこと。目の前で躍動しているくにおくんは彼らの親友であり、親の知らない「秘密基地」を管理してくれる先輩でした。

家庭用ゲーム機が今や一つの娯楽メディアであることは、誰にも否定できない事実。それを『くにおくん』シリーズは、いち早く証明してくれたのでした。


《澤田 真一》
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