中国のハードウェア技術者Wenting Zhang氏が、M5StackのE-inkディスプレイ搭載マイコン開発キット「PaperS3」上で、動作するゲームボーイエミュレーター『Paper Boy S3』を動かす様子をYouTubeに公開しました。
Zhang氏は自身の会社Modos Labsで、高リフレッシュレートなE-inkディスプレイを「Modos Flow」開発したことでも知られています。Modos Flowプロジェクトで同氏は、一般的なE-inkディスプレイのコントローラーを強力なFPGAに置き換え、各ピクセルを独立した表示領域として扱うことで、各フレームで、画面上の実際に変化する部分だけを更新するという仕組みを構築しました。

『Paper Boy S3』でも、Zhang氏は上記技術を用いています。初代ゲームボーイのディスプレイは160×144pxという低解像度な液晶画面でしたが、PaperS3のディスプレイは960×540pxであり、ゲームボーイの4階調グレースケールを再現するためのディザリング処理に十分な余裕がありました。
ただこの処理のために、PaperS3が搭載するデュアルコアチップ「ESP32-S3」の2個目のコアをフル稼働させており、ゲームボーイのエミュレーションはもっぱら1個目のコアで行われると説明。なお、1個目のコアのわずかな空きリソースを使ってオーディオ再生処理も行われます。
「Paper Boy S3」は、液晶ディスプレイを含むゲームボーイの前面部分を再現しており、画面下部にはタッチ操作対応の十字キーとABボタン、Startボタン、Selectボタンが表示されます。

「Paper Boy S3」には、ゲームプレイを補助するいくつかの機能が実装されています。さらに、Bluetooth LEコントローラーの部分的なサポートや、エミュレーターの状態を保存する、専用のクイックセーブ/クイックロード用タッチボタンを実装、フロントエンドから直接、ゲーム状態をロードできるため、中断した場所からすぐに再開することを可能としました。

ただ、やはりいくつかの制約もあります。まずゲームはタッチスクリーン操作のみで、振動機能はハードウェア上再現できません。
さらに、PaperS3は音源を搭載しておらず、ビープ音を鳴らすことしかできないため、BGMや効果音に関しては本物を再現することはほとんど不可能です。とはいえ、疑似ポリフォニー手法を応用して、ある程度のサウンドは再生を可能としています。
Zhang氏によれば、今回のプロジェクトは動画やゲームに不向きとされてきたE-inkディスプレイの弱点に対する技術的な反証としての意味合いも持つとしています。またE-inkならではのシャープで見やすい表示は、従来のゲームボーイの小型で暗いLCDとは異なり、比較的高い視認性を確保できています。

ゲームボーイエミュレーター「Paper Boy S3」は、すでにM5Stackが提供するファームウェア書き込みツール兼アプリストアの「M5Burner」上に公開されており、PaperS3を所持しているユーザーはすぐに試すことができます。
ただ残念なことに、PaperS3はすでに製造を終了しているデバイスであり、いまから入手するのは難しいかもしれません。
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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
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