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【オンラインゲーム一週間】『ギターヒーロー』で価値があるのは音楽か、ゲームか?

急激に秋の気配が深まる10月ですが、今週は音楽ゲームにおける「音楽」と「ゲーム」の価値を考えさせられる出来事が起こりました。

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急激に秋の気配が深まる10月ですが、今週は音楽ゲームにおける「音楽」と「ゲーム」の価値を考えさせられる出来事が起こりました。

『ギターヒーロー』は専用のギターコントローラーを使い、様々なロックの名曲を演奏するという音楽ゲーム。これまでにシリーズ累計2000万本を売り上げるという怪物シリーズとなっています。これだけ売れまくれば関係者はみんな笑顔と思いきや、意外なところでトラブルが起こりました。

ワーナーミュージックのEdgar Bronfmanが「音楽ゲームは曲に依存しているものなので、音楽業界はゲームに対して現在よりも高い著作権料を請求してもよいくらいだ」とコメントしたのに対し、アクティビジョン ブリザードは「音楽ゲームは既存の曲に新たな価値を加えるものである。ゲームをプレイする12歳の子供はスティーブン・タイラーが誰であるか、エアロスミスが何であるか知らないだろうし、多くのお客様は音楽を演奏する楽しさを求めている」と反論したのです。

エアロスミスは1971年にデビュー、大人気となるも80年代前半に低迷、その後奇跡の復活を遂げ現在も活動中という伝説を地でいくバンドで、スティーブン・タイラーはそのボーカリスト。確かに1996年に生まれた12歳の子供は『ギターヒーロー』がなければエアロスミスの曲を知ることは無かったかも知れません。

音楽ゲームにおいて楽曲が重要な役割を果たしているのも確かで、『ギターヒーロー』では新作が発表されるたび、どんな曲が収録されるかが話題となります。10月に発売される『ギターヒーロー エアロスミス』はエアロスミスのデビューとサクセスを体験できるという内容で、これなどは楽曲とバンドの重要性を示すタイトルといえるでしょう。

では、音楽ゲームにおいて重要なのはゲームでしょうか。楽曲でしょうか。恐らく答えは「その両方」というものではないでしょうか。但し、楽曲とゲームの重要さの割合は、状況に応じて刻々と変化していくと思われます。通常を5:5だとすると、プレイ中はゲームの重要さが6となり、演奏をリプレイする時は楽曲の重要さが6になる……というように。ゲームのみが重要なのであれば、音楽ゲームのオリジナル曲を収録したCDの需要はないはずですし、楽曲のみが必要ならば、そもそも音楽ゲームというジャンル自体が存在しないはずです。

『ギターヒーロー』はこうした面では波乱含みで、初期2作の開発元のHarmonixはアクティビジョンに対し1450万ドル(約15億円)のロイヤリティが未払いであるとして提訴(すぐに取り下げ)。ギターで知られる楽器メーカーのギブソンもギターコントローラーの意匠に関して訴訟を起こしています。

こうしたトラブルがあるからといって音楽ゲームの未来を悲観するのは早計です。ギブソンとアクティビジョンは正式にエグゼクティブパートナーシップを結び、現在のギターコントローラーはギブソン公認であることがウリとなっています。このように、互いに歩み寄ることでトラブルは解決できるのです。

少し事情は異なりますが、『スーパーロボット大戦』に「新世紀エヴァンゲリオン」が参戦する際のエピソードはゲームと他ジャンルの歩み寄りの大切さを示すものです。庵野監督自らがゲーム側にイベントを提案したほか、「原作アニメの作中で絶対的な存在とされるバリア(ATフィールド)が他の作品の敵に破られる」ことを公式認定したのです。これにより「エヴァ」の参戦はスムーズなものとなり、ゲームとアニメの両方に利益をもたらしました。

累計2000万本を売り上げた『ギターヒーロー』は、音楽ゲームの世界に新たな可能性を生み出しました。名曲はゲームで再生され続け、世代を越えて生き続けます。新しい芽が権利争いで潰えるというのは、ユーザーも関係者も誰も望んでいないでしょう。売れたことでトラブルを起こすのも人間なら、互いを許し合えるのも人間。音楽とゲームが再び歩み寄ることで、芽吹いた可能性は大輪の花を咲かせるのではないでしょうか。
《水口真》
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