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【インタビュー】3D監督に訊く「ガルパン劇場版」の挑戦…「カットによっては本当にフル3D。最後の方は『楽園追放』と変わらなかった」

水島努監督が挑んだ初のオリジナル作品『ガールズ&パンツァー』。全12話のテレビシリーズが終わる頃には舞台となった茨城県大洗町に多くのファンが訪れ、作品の評判と共に聖地巡礼、コンテンツツーリズムなどのキーワードでも大きく注目された人気アニメだ。

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◆水島努監督の演出スタイル


――『ガルパン』ではディテールや設定がリアルな戦車が、いざアクションになるとジャンプしたり、見せ方が絶妙です。

柳野:そこは水島監督の世界観が、大きく担ってる部分があると思います。TVのとき最初に決めたのが「学園艦」という大ウソをつくことで、SF的なやり方でよくありますよね。大きなウソを一つ入れて、そのまわりをリアルで固めるという。そのやり方に近いのかなと。

戦車の動きといった演出に関しても、おっしゃるように戦車がジャンプしたり、すごいドリフトをしたりと極端な動きをするわけですが、大嘘の演技の周辺はとにかくリアルな挙動を入れるなどして妙な説得力を持たせるようにしています。

――カールもそうですが、本編中で観客におっと思わせる演出が随所にあり、最後までテンションが持続して、本当に引き込まれました。

柳野:水島監督の設計には独特な部分がありまして、特にテンポにこだわりを持たれてますね。TVのときも監督自身がコンテを描かれたり、演出された回というのは明確にほかの話数と違うんですよ。ただ、監督とは長くおつきあいさせていただいてるので、わりとそこに3Dを足したり引いたり、こちらから提案してやらせていただいた部分が結構あります。

カールの場合ですと、最初は着弾を作画でやる予定でした。それを3Dのエフェクトでやってみたら明確に威力の差が出ておもしろいんじゃないかとか。ちょうど「楽園追放」でエフェクトが得意だった市川さんにお願いできたので、かなり迫力とツメタメの効いたものに仕上がりました。あと、ほかの戦車とカールは質感を変えてあるんですよね。いままでの戦いとは何か違うことが起こっているという雰囲気が出るようにと。

今回の劇場版はいろんなスタッフのこだわりを、水島監督が絶妙なバランスで汲んでくれた一つの結果なんじゃないかと思っています。


――3Dでエフェクトを手掛ける機会は少ないのでしょうか。

柳野:そこは作品次第ですね。TVシリーズのときはアフターバーン(※AfterBurn:炎、煙、爆発の標準的なプラグイン)を使って、作画素材の上に合わせて発砲や着弾を描きました。劇場版では全部フューム(※FumeFX:リアルな煙や炎を描く最新のプラグイン)で起こして、それをフュームを知らないスタッフでも使えるように落とし込んでおいたんです。

――それらのプラグインは3ds Max専用ですよね。CGアプリケーションとしてはいかがですか。

柳野:使いやすいと思います。特に細かいプログラミングとか深い知識がなくても、ある程度のところまでつくれる部分が強みですね。あとはスタッフの増減などにも比較的対応しやすい。必要な機能をプラグインで補完できるので、その時々に合わせて使用すればいいという柔軟性があるんです。

――3ds Maxは日本で主流のセルアニメ的なスタイルに強いという印象です。

柳野:そうですね。Pencil+という鉛筆画のテイストを出す日本製のプラグインが使えるという強みもありますし、もともとBipedという人型のセットアップが入ってるんですよ。これが昔から根強い。簡単に人型のアニメーションをつくれるプリセットになってまして、これに慣れてる方がとても多いんですね。

◆演出がこだわるべきところ


――ところで戦車をみせるコツというのはありますか。戦車はこの角度からがイイ、というこだわりがあったら教えてください。

柳野:ああ、逆にそういうところで捉われすぎてはいけなくて、それに準ずるようなカットが出てきたら出すぐらいの感じですね。それよりも、まずはアニメーションとしてツメタメが気持ちよくできているか、、画としての構図がいいかとか、そういう方が重要です。それが欠けていたら切り貼りのコラージュになってしまうので、一連の流れとしてみていいかどうかが大事じゃないかと。

――リアルさよりもケレン味のほうが優先になりますか。

柳野:はい。そこをクリアした上で知っている要素を盛り込んでいくようにしています。この戦車はこういう独特な特徴があるとか、そういうネタを誰も気づかれないようにスッと入れておくんですよ。これは気づいた人がいればいいやぐらいのノリで(笑)。

――結果的にその隠し味が作品のスパイスになるんでしょうね。

柳野:普通に見てじゃまにならない部分に大量に情報を詰め込んで、二回目以降も細かいところでいろんな発見ができるというつくりが、いつも目指している部分ではあります。

――劇場版はリピーターが多いですし、何度でも楽しめますよね。初号試写でご覧になったときの印象はいかがでしたか。

柳野:「あ、本当に終わったんだ」という(笑)。

――こんなにヒットしたら、また次があると思いませんか。

柳野:どうなんでしょう(笑)。

――次回作はさておき、ラストカットでエンドマークどころか、コピーライトも映倫マークもぶら下げない演出には驚きました。あれで観客の気持ちにノイズが入らない幕切れになるんですよね。

柳野:水島監督は全体的なふわっとした部分から細かいところまで結構みてらっしゃるので、そういう姿勢が最終的なフィルムに反映されてくるんだと思います。

[取材・構成:桑島龍一]


■プロフィール/柳野啓一郎(やなぎの・けいいちろう)
1979年、東京都生まれ。演出家。株式会社グラフィニカ3DCG部所属。『ガールズ&パンツァー』(2012)並びに『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015)で3D監督を務める。主な参加作品に『ブラスレイター』(2008)、『ストライクウィッチーズ2』(2010)、PSP『戦場のヴァルキュリア3』(2011)、『劇場版マクロスF 恋離飛翼~サヨナラノツバサ~』(2011)、『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(2014)などがある。 
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