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【特集】『世界一長い5分間』1万字インタビューをお届け!…のはずが、開発陣が突然の記憶喪失に

 

ソニー PSV
【特集】『世界一長い5分間』1万字インタビューをお届け!…のはずが、開発陣が突然の記憶喪失に
  • 【特集】『世界一長い5分間』1万字インタビューをお届け!…のはずが、開発陣が突然の記憶喪失に

◆エンディングは分岐あり、気になるプレイ時間は……?



──これは自分の勝手な思い込みなんですが、『世界一長い5分間』を初めて知った時、「世界5分前仮説」(※)をゲームにしたのかなと思ったんです。

※これまでの出来事はあくまで「記憶させられている」だけで実際の体験ではなく、世界そのものはたった5分前に始まった、という哲学的な思考実験。

横田氏:ほほう!

──『世界一長い5分間』の中で勇者は、振り返ることでこれまでの冒険を思い出していきますが、実は「思い出す」んじゃなくて、その瞬間に「過去を作り出している」「思い出を上書きしている」のかな、と……。

横田氏:いい深読みですねー!(笑)

浜中氏:次はその企画書を出してみますか(笑)。

──そういう裏テーマとかあるのかなと、勝手に勘ぐっていました。


横田氏:じゃあそれを裏テーマってことにしましょう!(笑)

──そんなあっさりと(笑)。

浜中氏:これも、「過去の改変」なのかもしれませんね(笑)。

──色々と深い一言ですね(笑)。でも本作は本当に、受け手側が色々と想像したくなるような切り口を持っているのかなと感じているんです。

横田氏:想像して欲しいというのは、ありますね。(グラフィック面でも)ドット絵という性質上、受け手の想像力に頼る部分もあるので。ドット絵ですが巨乳キャラもいるので、そこも脳内で補完して欲しいですね(笑)。


──ビジュアル面でも想像の余地がありますし、例えば「旅立ち」や「王様との謁見」などの場面はありますが、その間に関しては直接描かれてませんよね。そういった空白の部分を、想像できるのも楽しいですよね。

横田氏:はい、そこも楽しんでいただけると嬉しいですね。思い出というのは曖昧なもので、印象深い思い出もあれば、そうじゃない「余白」のようなものもありますから。

──主人公が思い出さない「余白」は、プレイヤーが“思い出す”んですね。

横田氏:そんな遊び方をしてもらえれば何よりです。

──長くて短い「5分」の間に、主人公と勇者がそれぞれ色んなことを思い出しそうですね。ところでこの「5分」という時間ですが、「3分」や「10分」ではなく、なぜ「5分」になったのでしょうか?

横田氏:そうですね、ここは割と直観的な部分だったと思います。語感もありましたし。『世界一長い3分間』よりも『世界一長い5分間』の方が、響きとしてもいいかなと。

──「魔王と戦う時間」は大体5分くらいだろう、という感じもありましたか?


横田氏:それもありましたね。実力が拮抗している者同士の対決って、そんなに長い時間戦うことはないですよね。それこそ一瞬で勝負がついてもおかしくないような。なので、「5分」くらいがちょうどいい長さなのかなと、直感で決めました。

浜中氏:あとタイトルに関してなんですが、実はニコニコ動画のタグに「世界一長い3分間」というものがあったんです。それは、いわゆるつまらない動画を見せられてると時間がすごく長く感じる、といったネガティブな意味のもので。

横田氏:タイトルをつける時、出来るだけカブらないように検索とかするじゃないですか。で、もうほとんど使われてなさそうなそのタグが引っかかりまして。「こういうのあるんですがどうしましょうか」と日本一さんに相談とかしたんですが、「(タイトルは変えなくて)いいんじゃないですか」とか言われたので、そのまま今に至ります(笑)。

──今まではネガティブな言葉でしたけど、本作が出ることでポジティブな意味も加わったので、タグも喜んでいるかもしれませんね(笑)。

横田氏:タグが喜ぶって、いいですね(笑)。

──そのタイトルが意味する主人公・バックの記憶喪失ですが、思い出を失っているというのは、プレイヤーが物語に入りやすい形とも言えますね。

横田氏:あ、そう……なんですよ。








あれ、何か思い出しそうな……

記憶喪失……思い出す……

思い出で強くなる……

それはいつ生まれたんだ……?












最初の企画にはなかったっけ……第2稿にもあったかな……

じゃあ開発中に思いついたのか……もしくは年明け……

まさかのマスターアップ前に……いやいやそれ間に合わないから……はっ!





横田氏:主人公が思い出を失っているというのは、最初の企画書にはなかったんですよ。第2稿で盛り込んだ部分です。

──そうだったんですか。では「記憶喪失」はいつ盛り込まれたのでしょうか。

横田氏:「魔王戦からゲームが始まる」というのが最初のキモで、それをより分かりやすく、更に面白くするにはどうしたらいいかと考えて、第2稿の時に「思い出がなくなっている」という要素を盛り込みました。それに付随して「思い出補正レベル」などのシステムも加えたので、“思い出が失われている”というのは後付けと言ってもいいのかもしれませんね。

でもゲームを完成させてみたら、「思い出」という要素がゲームの深い部分にまで入り込む結果になっていたので、いい設定だったなと僕は思っています。


浜中氏:うん、よかったと思うよ。

──そうだったんですか。正直、後から加えた設定とは想像もしませんでした。それくらい、この要素が自然に、そして重要な核として機能しているように感じます。

横田氏:なんだか不思議な感じですね(笑)。


──今お話に上がった「思い出補正レベル」ですが、非常にいいシステムですよね。思い出を振り返るゲーム内容なので、主人公たちの強さが場面場面で変わってしまいますが、プレイヤーが介在した冒険で得た経験値が他の思い出でも役に立つという。しかも、「主人公が思い出を美化する」という理由付けがまたユニークですよね(笑)。

横田氏:それが面白いよねっていう企画なんです(笑)。

浜中氏:思い出というのはある意味、主観ですからね。主観によって捉え方も変わりますし、より美しい、より力強い思い出に書き換わることもあるわけです。

──一思い出というのは曖昧ですからね。


横田氏:思い出の美化は、日常的に起こり得ることですから。誰でも少なからず美化はしてますし、本当の意味で正確な思い出を持っている人間はいないと思っています。

──逆に、「アイテム」は引き継がないんですよね。

横田氏:はい。「思い出」間のアイテムやお金は引き継ぎません。

──これは個人的に感じた部分なんですが、アイテム・お金を引き継がないのもひとつのポイントかなと思いました。個々人で感想は異なると思いますが、「引き継がないなら思いっきり使ってしまおう」という気持ちになれるんですよね。

横田氏:ああ、なるほど。

──自分なんかは、エリクサーとか使えないタイプなんですよね。ラスボスでも使わなくて。「じゃあお前いつ使うんだよ」って言われても仕方ないんですが、なかなか踏み切れなくて(笑)。

横田氏:いますよね、そういう人(笑)。でも引き継がないなら、いっそ使ってしまえと。

──はい。装備も気軽に買えますしね(笑)。


入間川氏:それでも勿体なくて使えないという場合でも、バックたちが思い出の合間に使ってくれるので、安心してください(笑)。

──なるほど、そうやって消費されるから引き継がないと。よかった、使われないアイテムはないんですね(笑)。

横田氏:バックがいいところで使ってくれてますから、大丈夫です!

──戦った分の苦労は「思い出補正レベル」という形で引き継ぎ、アイテムやお金は思い切って使えると、RPG面における特徴なども掘り下げてきましたが……ずばり「本作の魅力」は思い出していただけたでしょうか?

横田氏:うーん……かなり出かかっている感じはあるんですが、もう少し後押しが欲しいですね。


──分かりました。ではもう少しシステム面について伺いますが、「思い出補正レベル」が魔王戦に影響を与えたりしますか?

横田氏:こういう表現にさせていただきますが……「思い出補正レベル」は上げといて損はありません。具体的にどう関わってくるのかは、まだ言えませんが(笑)。

──おおー! 上げて損はないんですね。

横田氏:はい、ガンガン上げましょう。

──ちなみに、プレイヤーの行動によってエンディングが変化したりしますか?

横田氏:エンディング……。







あれ、どういう風に終わるんだっけ? ハーレムエンド?

いやいやパーティには男キャラもいるし……でも恋愛の形は自由だしな……

待て待て、そんな話じゃない……そう、世界の半分をもらうとか……

なぜか怒られる気がしてきた……ええと……。







横田氏:します! 分岐はあります。そんなにややこしい分岐ではないんですが、気付いてくれるかどうか、がポイントになると思います。

浜中氏:企画書の段階では結構な数のマルチエンディングだったんですが、「マルチエンディングって回収が大変だよね」となりまして、プレイヤーに負担がかからない範囲のエンディングを用意しました。

横田氏:分岐を増やすよりも、この5分間をしっかりと描いた方が満足度も高いだろうと思いまして。なので、エンディングの分岐は最期の最期にあります。

──では、その分岐の内容自体は、大きく異なりますか?

横田氏:そうですね、大きく違います。

──見る甲斐がある内容になっているわけですね。

横田氏:それはもちろん。全部見て欲しいです。


入間川氏:大した手間ではないので、プレイした人はみんな見られるんじゃないかなと思います。

横田氏:数も多くありませんし、NEW GAMEで最初からやり直すということもありません。

──結末はひとつではなく、しかし周回プレイをする必要などはない手軽さで分岐を楽しめると。本作はそのゲーム性も気になりますが、どんな結末を迎えるのかも想像付かないので、そこも楽しみなんですよね。

横田氏:結末は……魔王を倒しますよ(笑)。

──ええ、そこはもちろんそうなるんだろうなと思いますが、記憶を失っていた勇者がどんなラストを迎えるのか想像もつかなくて。「お前の行く先が気になる」みたいな(笑)。

横田氏:あ、なるほど(笑)。

──主人公がなぜ記憶を失ったのか、クリアすれば分かりますか?

横田氏:はい、そこも含めて色々スッキリします。満足してもらえると思いますよ。

──おお! 物語面にも期待が膨らみます。ちなみに、RPGパートとなる「思い出」の総数は、大体いくつくらいになりますが、

横田氏:それぞれのRPGパートでプレイ時間はまったく異なり、一瞬で終わるものもあれば割と時間のかかるものもありまして。それらを全部含めて、40前後ほどあります。


──40前後の思い出を振り返るわけですね。では、プレイ時間の目安はどれくらいでしょうか。

横田氏:そこに関しては、我々もしっかり伝えていきたいと思っている部分でして。概算で15時間くらいとなります。なので、「5分と15時間」ですね(笑)。

──5分と15時間! なるほど、了解しました。

浜中氏:日本一さん調べです(笑)。


横田氏:「5分で終わるんじゃないか」みたいな、あっという間に終わるゲームだと思われてるところもあるので、これくらいしっかり遊べるというのはお伝えしたいですね。ご安心ください(笑)。
《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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