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コンシューマ版『魔法使いの夜』体験版という「10年越しの魔法」に触れて─フルボイスで得た“声の演出”は、ロンドン橋も落ちる衝撃度

ニンテンドースイッチとPS4に向けて登場する、懐かしくも新しい『魔法使いの夜』。果たして本作は、どんな魅力を備えているのか。体験版のプレイを通して実感した手応えを、未経験者とPC版のファンに向けてお届けします。

ゲーム プレイレポート
コンシューマ版『魔法使いの夜』体験版という「10年越しの魔法」に触れて─フルボイスで得た“声の演出”は、ロンドン橋も落ちる衝撃度
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2000年に頒布したADV『月姫』が、同人ゲームとして類を見ないほどの大ヒットを記録。その人気ぶりは商業作品に負けないどころか、この同人版『月姫』を原作とするコミカライズやTVアニメ化を実現させたほど。さらに2021年には、ニンテンドースイッチ/PS4向けにリメイクした『月姫 -A piece of blue glass moon-』をリリースし、20年越しのコンシューマ展開も話題となりました。

また、『月姫』と直接的な繋がりこそないものの、平行世界的な関係性を持つ『Fate』シリーズは、2004年発売の『Fate/stay night』から始まり、今では多数の作品が広がる一大コンテンツへと成長。特に、スマートデバイス向けにリリースされた『Fate/Grand Order』は、数あるスマホアプリの中でも指折りの人気作として、今も活躍を続けています。

この『月姫』や『Fate』を生み出したのは、武内崇氏・奈須きのこ氏の両名が率いる「TYPE-MOON」。かつては同人サークルとして、そして今はゲームブランドとして名を轟かせており、長年にわたる活動と実績を積み重ねています。

そんなTYPE-MOONが新たに放つ作品は、2012年に発売したPCゲームをベースに、フルボイスやフルHDなどのパワーアップを備え、10年の月日を跨いで放つ『魔法使いの夜』です。オリジナル版はPCのみの展開でしたが、今回はニンテンドースイッチ/PS4向けの展開となり、家庭用ゲーム機に『魔法使いの夜』が初登場します。

『魔法使いの夜』、ファンの間では『まほよ』の愛称でも知られている本作の新たな装いに、喜んでいるファンも多いことでしょう。一方、10年前の人気を知らず、今回のコンシューマ版で初めてその存在を知った方もいます。

その両方のユーザーに向けた体験版の配信が既に開始されており、その配信に先駆け、体験版『魔法使いの夜』をプレイする機会に恵まれました。そこで本記事では、この体験版に触れた手応えやその内容についてのレポートをお届けします。

ですが、『まほよ』をプレイ済みか否かで、この体験版に向ける視線や気になるポイントも変わるはず。そのため、『まほよ』を知らない方と、すでにPC版でプレイ済みのユーザー、それぞれに向けたレポートを分けて綴ります。ご自身の立ち位置に合う方に重きを置きつつ、ご覧ください。なお、今回プレイしたのはPS4向けの体験版です。

■演出に特化したADVの名作は、10年経っても色褪せない片鱗を体験版で“予告”する

まずは、PC版の『魔法使いの夜』を知らず、ADVゲームのひとつとして気になる方に向けて、本作の特徴や体験版のプレイ内容をお伝えします。原作に当たるPC版が発売されたのは2012年ですが、作中の時代背景は更に遡った1980年代後半。スマホどころかインターネットもなく、ゲームハードで言えばファミコンが現役の時代で、PCエンジンやメガドライブがあるかどうか、といったところです。

1980年代後半は、本作に初めて興味を示す人のほとんどがまだ生まれてもいなかった頃。TVは今のような薄型ではなくブラウン管で、家具調や正方形に近いものが一般的でした。そんな、どこか古めかしく、しかし生活の隅々に科学と文明が行き渡った日本にある、坂の上に建つ屋敷に住む3人の人物に焦点を当てる物語が、『魔法使いの夜』で綴られます。

本作のジャンルはADVなので、作品が持つ魅力の中心はその物語にあります。また、大きな枠組みとしてはADVに属するものの、ビジュアルノベルとも呼ぶべき本作はゲーム性を極力排除しており、本編には選択肢が一切ありません。

当然、今回の体験版にも選択肢はなく、ボイスと演出に彩られたテキストが画面全体に表示され、屋敷の住人である「蒼崎青子(あおざき あおこ)」と「久遠寺有珠(くおんじ ありす)」、そして居候する形となった「静希草十郎(しずき そうじゅうろう)」たち3人の物語の断片が、発売に先駆けて味わえます。

選択肢がなくて読むだけ、と知って不安になる方もいるかもしれません。もちろん、プレイヤーの判断を選択肢に反映させ、変化していく物語や異なる結末を味わうのも楽しいもの。その意味だけで見ると、『魔法使いの夜』が持つゲームとしての魅力は、やや弱いとも言えます。

ですが、ゲームが表現できる“面白さ”は、分岐やマルチエンディングだけが全てではありません。“見習い魔術師”の青子、“生粋の魔女”である有珠、特別ではないが普通でもない草十郎の3人が過ごす日常は、高校生程度の波乱に満ちた平凡さと、神秘が彩る恐ろしげな世界のふたつを陰陽のように両立しており、どちらの面でも見る者を引き込みます。

その没入感を後押しするのが、選択肢や分岐によるゲーム性を捨て、魅せることに特化した演出の数々。立ち絵と会話ウィンドウで固定化された一般的なADVとは大きく異なり、文章を主体に状況や会話を提示しつつも、キャラクターと精緻な背景で構築された絵作りが視覚的な刺激を放ち続けます。

本作にも立ち絵のようなキャラビジュアルはありますが、状況によって立ち位置を変え、寄りや引きで距離感を演出。また、シチュエーションによって背景も変化し、画一的な構成を見続けるようなシーンはほとんどありません。

本作における立ち絵は「キャラがここにいる」という記号ではなく、背景と共に組み合わされた「その世界の瞬間」を描く要素として画面に馴染んでいます。この演出について誤解を恐れずにまとめるなら、定点のカメラ視点からの解放、とも言えるかもしれません。

また、地の文や台詞といったテキスト部分はプレイヤーの任意で送ることができますが(設定でオート進行も可能)、文章の合間に入る動きのある演出や幕間の表示など、演出部分に関わるものはゲーム側で制御されており、基本的に開発者が想定したテンポで展開します。

これを不便に感じる方もいるでしょうが、徹底して演出に特化した『魔法使いの夜』においては、ひとつひとつの間もまた重要な要素。端折りすぎないシステムに止めているのは、本作の“間とテンポ”を守るためでしょう。

といっても、シーンをざっくりと移動する「早送り」や「早戻し」、また「スキップ」などの設定はあるので、「常に演出が強制される」といった足枷はありません。演出を重視した作品作りはそのままで、遊びやすい環境設定もしっかり用意されています。

縛られないカメラワークと、間も含めた演出に特化した『魔法使いの夜』は、長編の小説ではなく、濃厚な物語を絵や音と共に楽しむ作品と言えるでしょう。敢えて例えるならば「優れた映画を見るような充実感」を味わえるADVゲームです。

そして、この例えに倣うのであれば、今回の体験版は“ゲームの体験”というよりも“『魔法使いの夜』の予告編”という位置づけとして捉えた方がピッタリくるのかもしれません。一般的なADVとかけ離れた演出やカメラワークが、果たして物語にどんな影響を与えるのか。こうした点に興味を抱いた方は、まずは試金石代わりに、この体験版に触れてみるのがお勧めです。試すだけの価値を、この“予告編”は備えています。



《臥待 弦》
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