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『NintendoDREAM』ディレクター サオヘン氏インタビュー 第二回

・第一回

ゲームビジネス その他
第一回

ゲームクリエイターへの思い


― サオヘンさんと言えば、これまでいろんな方にインタビューされてきたと思うんですが、インタビューで印象が残っていることはありますか?

サオヘン任天堂系の雑誌を10年やってきて感じるのは、宮本茂という人物のことを、日本人は知らなさすぎると思うんです。うちの編集部に遊びに来る読者さんとかがいて、「マリオ作った人知ってるよね?」ってきくと「知らない」って答える人もいるんですよ。

― すごい意外ですね。

サオヘンうちの読者さんなのにね(笑)。そんなとき僕はジジイっぽい説教をたれることにしています(笑)。たとえば『マリオ』や『ゼルダ』で遊んで、それで感動したら、「このソフトはどんな人たちがつくったんだろう」と想像しようよって。いまはインターネットなんかでいろいろ調べられるでしょって。それで作り手のことを知ったら、そのソフトのことがますます好きになると思うんですよね。その点、取材でアメリカなんかへ行くと、向こうの人はクリエイターに対する見方が違うなあと思うんです。

― E3で宮本さんが登場すると観客は大騒ぎですものね。

サオヘン宮本さんの人気は本当に凄いです。こんなに海外の人から愛されてる日本人がいるんだと、とても誇りに思いますね。E3と言えば、一つエピソードが・・・。『ポケモン金銀』が出る年に、E3に併せてポケモンのイベントが開かれて、任天堂が現地の小学生記者を招待したんです。そのときに案内の人が「発売前の『ポケモン』の新作で遊びたい人はこっちに、ポケモンを作った人からサインをもらいたい人はあっちに並んでくださーい」って言うと多くの子供たちはサインの方に並んだんです。あれは凄く感動的でした。

― 日本じゃ絶対逆になりますよね。

サオヘンそうでしょ! きっとアメリカの子供達って、小さいときからモノを創る人たちに対して尊敬するようなところがあるんでしょうね。ただ残念だったのはその場に田尻智さん(*8)がいなかったこと。田尻さんが会場にいたら、きっとファンに会うことでエネルギーをもらって、次の仕事に生かせてたと思います。

― 日本じゃないところでファンに出会えるのってすごく嬉しいことでしょうね。

サオヘンイチロー選手がアメリカ人に好かれているように、優れたゲームを作った人たちも尊敬に値するわけで、その人が日本人だろうが、アメリカ人だろうが彼らにとっては関係ないんですよ。ニューヨークのロックフェラーセンターで、宮本さんのサイン会が開かれたことがありましたよね。あのとき警察が出てくるくらいのすごい行列ができて、中にはヨーロッパからやってきた人もいたという話ですよね。あと、思い出すのは、HALL OF FAME(*9)を宮本さんが一番最初に受賞されたときのこと。宮本さんがステージに上がっただけで、みんながスタンディングオベーションで出迎えてましたからね。僕はその場にいることができて、本当に幸せでした。だから、これほど外国の人たちに愛されている日本人がいるんだよということを、たくさんの人たちに伝えたいなあと思ってるんです。

― そういうのもあってニンドリにはインタビューがたくさん載ってるんですね。

サオヘンゲームクリエイターって、人を楽しませたり驚かせたりするのが仕事じゃないですか。そういうことを日常的に考えている人と会って話をして、それが楽しくないわけがないですよね。だからこそ、作り手を見ないで、作品だけを楽しむ人たちがいるのを見ると、「もったいないなあ」と思っちゃうんです。『スーパーマリオ』を作った人ってどんな人なんだろう? 『スマブラ』を作った人って誰なんだろう?ってみんなが興味を持ってくれれば嬉しいですよね。それでもし『スマブラ』から桜井さん(*10)のことが好きになったら、『メテオス』も遊んで欲しいと思うんです。桜井さんもとても若いのに、すごく魅力的な人ですし、宮本さんも感覚がすごく若々しくて、たぶん会ったらみんな幸せになると思いますよ。

― ぜひお会いしたいんですけど(笑)。

サオヘンそこが雑誌の強みですよね(笑)。クリエイターさんの貴重な時間を、インタビューの間は独占できるわけです。ただ、失敗は許されないというプレッシャーもありますけどね(笑)。


ニンドリ博について


― そもそもニンドリ博はどのようなキッカケでやることになったのですか?

サオヘン最初に、本誌で『ニンドリ学園』を担当しているかややんが『ドリキン展』をやりたいって言い出したのがキッカケです。かややんは『どうぶつの森展』(*11) を取材してインスパイアされたようですね。でも、そういった展示会は、一度はやってみたいなあと思ってきたことなんです。スペースワールドで投稿イラストを展示したいと、任天堂に提案したこともありましたしね。で、せっかく雑誌が10周年を迎えたわけだし、投稿イラストを展示するだけでなく、バックナンバーも置こうとか、いろいろやりたいことが増えていったんです。それで、会場を探してみると、たまたまMYCOM(*12) の中にいい場所があることがわかって、しかも広いスペースを確保できたので、知り合いの人とかに声をかけて、いろんなものを展示することになったんです。個人的にも、いろんな資料を捨てずに自宅の押し入れなんかにしまっていたので、みんなに見て欲しいということで展示しました。ところで、サイン入りのDS Lite、見ました? あれもね、ちゃんと物語があるんですよ(笑)。

― 物語ですか(笑)。

サオヘン毎年E3では、任天堂のパーティが開かれますよね。そこではタダでおいしい料理が食べられたり、お酒が飲めたりするんですけど、そんなことはどうでもいいんです。あのパーティの魅力は、普段はなかなか会えないようなクリエイターさんと自由に会話できるところにあるんですね。パーティ会場はものすごい数の人でごった返しているんですけど、そんななか僕は宮本さんを探すわけです。もうこれは習性みたいなもので(笑)。今年は、岩田社長とも話すことができて、宮本さんはどこだー?って感じで探していたら、暗がりのなかのテーブル席に座っているヒョウ柄の人を見つけて。

― 伊藤あしゅらさん(*13)ですね(笑)。

サオヘンそう(笑)。で、その席が凄いメンバーで、小島監督(*14)、宮本さん、『ファイアーエムブレム』の成広(通)さん、そしてあしゅらさんがいて、宮本さんの前の席がちょうど空いてたんです。で、「ここいいですか?」って座らせてもらったあと、みなさんからDSLiteにサインをいただいたんです。で、任天堂の発表会などの印象を話していたら、小島監督と入れ替わりで桜井さんが来たんですね。それですかさず「サインしてください」って言ったら、桜井さんがちょっと動揺したんですよ。どうしてなんだろうと思っていたら、翌日に『スマブラX』が発表されて・・・。そのときはまさか『スマブラX』にスネークが登場するなんて思ってもみなかったですし、桜井さんのサインは小島監督のすぐ下に書いてもらったんです。だから、あれは、個人的には『スマブラX』発表記念DS Liteというわけです(笑)。


次回に続きます。

【注釈】

*8 田尻智さん:ポケモンの生みの親でゲームフリーク代表取締役社長。
*9 HALL OF FAME:アメリカのゲーム業界に貢献した人を称える殿堂。宮本さんは第一回受賞者。
*10 桜井さん: 桜井政博さん。『大乱闘スマッシュブラザーズ』や『星のカービィ』『メテオス』など常に名作を生み出している第一線のクリエイター。
*11 どうぶつの森展:文字通り『どうぶつの森』を題材にした展示会。『どうぶつの森』にちなんだいろいろなイラストやオブジェが展示されていた。
*12 MYCOM:ニンドリの発行元。毎日コミュニケーションズ。
*13 伊藤あしゅらさん:伊藤あしゅら紅丸さん。漫画家、イラストレータ、CGデザイナーなど多くの肩書きを有している。元クリーチャーズ代表取締役で、全米の新聞でポケモンのコミックを連載したことも。いつもヒョウ柄の服を着ている。
*14 小島監督:小島秀夫監督。KONAMIの小島プロダクション所属。代表作は『メタルギアソリッド』シリーズなど。現在は『メタルギアソリッド4』の制作に携わりながら自身のブログでラジオをやっている。無類の映画好きとしても有名。
《ヤマタケ》
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