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ゲーム人口拡大に必須のコミュニティ作り、格闘ゲーム『BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT』の取り組み・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第9回

立命館大学、京都衣笠キャンパス充光館地下のシアター型教室においてにて6月12日、アークシステムワーク株式会社協力の元、今月1日に発売されたPS3/Xbox360向けの『BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT』を題材としたeスポーツイベントが開催されました。

ゲームビジネス 市場
ゲーム人口拡大に必須のコミュニティ作り、格闘ゲーム『BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT』の取り組み
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立命館大学、京都衣笠キャンパス充光館地下のシアター型教室においてにて6月12日、アークシステムワーク株式会社協力の元、今月1日に発売されたPlaystation3(以下、PS3)ならびにXbox360(以下、360)向けの『BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT』(以下、『BBCT』)を題材としたeスポーツイベントが開催されました。主催はこれまでも同学において様々なゲーム産業関連のカンファレンスを開催してきたゲームアーカイブプロジェクト。なおイベント自体の企画運営は、立命館大学映像学部ゲーム研究会が、告知やイベント後の懇親会などはIGDA関西が担当しました。

昨年12月に続く2回目の試みとなる今回のeスポーツのイベント。日本においてはなじみ深い格闘ゲームの中でも、特に若い人たちの間で人気の高い『BBCT』を選んだ事、京都市内でも格闘ゲームプレイヤーコミュニティとの関係を大切にしているa-cho(www.a-cho.com/)と、早期から告知などでの協力をお願いすることで最終的には50名ものプレイヤーがトーナメントに参加しました。中には、名古屋から馳せ参じた人もいたということで、予選も11時から開始という盛況ぶり。2人1組のチームに分かれたトーナメントは最初から大接戦を繰り広げました。その後13時から本選が開始され、準決勝まで行われました。

BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT


■モリプロデューサーが語る『BB』シリーズ開発に賭ける格闘ゲーム時代再興への想い

ここでいったんトーナメントは休憩となり、『BBCS』プロデューサであるモリトシミチ氏ならびに同ゲームプランナーでありながら格闘ゲーム界屈指のプレイヤーでもあるPachi氏による講演が行われました。講演は二人による掛け合い形式でおこなわれ、これまでのゲーム開発者セミナーとは一線を画したエンターテインメント性あふれる形式で行われ、終始笑いやどよめきが起こっていました。

まず、モリプロデューサが第一作目である『Blazblue Calamity Triugger』(以下『BBCT』を立ち上げたときからのビジョンについて言及。モリ氏は『BBCT』開発時、格闘ゲーム界の最大の課題は格闘ゲーム人口が少なくなってきていたことだったと、当時を振り返りました。しかし、「ただ新たな格闘ゲームを出しても人は戻ってこないと思った」とモリ氏。そこでとにかくゲームセンターに人が戻ってくるにはどんな形でもいいから注目される必要があることを意識。結果として重視したのが、格闘ゲームというジャンルに囚われず、エンターテインメントとして作っていくことだったとのこと。また、どのような要素でもいいので、まずはゲームを触ってもらい、興味をもってもらい、格闘ゲームは楽しいものなのだということをプレイヤーに理解してもらうことを意識した結果がBBシリーズだったとのこと。

『BBCT』においても新規のプレイヤーを増やすためにさまざまな工夫をこらしたとのこと。 そのためにビギナーモードの導入と「見て楽しい」と思えるためのゲームデザインをおこなったとのこと。ビギナーモードについてモリ氏は、コンボの使い方が分からない人もプレイを楽しみ、しばらくはビギナーモードで頑張ってもらって、ある程度慣れたところで車の運転でオートマからマニュアルに切り換えるように自分でコンボを決めていってもらえればいいと語りました。一方、「見て楽しい」と思えるゲームデザインについては、ストーリーモードを濃くする、キャラクターを際立たせる、人気のある声優を採用するという結論に至ったとモリ氏。キャラクターや声優をきっかけに入ってきてくれたプレイヤーも最初は格闘ゲームが全く分からなくても、徐々に覚えていってもらう事がユーザー数を増加させるうえで重要だとのこと。

モリプロデューサー


■チュートリアルモードで植田佳奈 を起用した理由

新規ユーザーの取り込みを前提としたという点で、更に重要になってくるのがチュートリアルの導入。モリプロデューサーはガイドとして起用したレイチェル役の植田佳奈さんがアフレコに臨んだときのエピソードを教えてくれました。シナリオを渡した際、数ページをめくったあとに「これ、ほんとにやるの?」と植田さんが聞きなおしたとのこと。結局、収録は6時間にも及んだのですが、これは植田さんが1日に(アフレコなどで)しゃべった量としては最も多かったとのことでした。この一つの理由として挙げられたのがセリフの難しさ。最初は「このボタンを押して」といったシンプルなところからはじまったものの、最後になると専門用語がどんどんはいってきたとモリプロデューサ。植田さんは格闘ゲーマーというわけではないので後半部分のアフレコはかなり大変だったのこと。

そこに「チュートリアルモードのいい点を全く紹介してないですよと!」Pachi氏がすかさずつっこみを入れ観客の笑いを誘いました。実際にチュートリアルモードの原稿執筆を担当したPachi氏は「格闘ゲーマーからすれば当たり前のことも、格闘ゲームをこれまでやったことがないひとのことを意識して構成した」と当時の状況を明かしました。結果的にガードからはじまり、下段、中段ということも噛み砕いて説明を追加していったとのこと。「格闘ゲームは本質的には勝負をするジャンルであるため、負けることを恐れてしまったり、負け続ける事が、プレイへのモチベーションが下げてしまう」とPachi氏。多種多様なライフスタイルの人たちの受け皿をどれだけ大きく出来るかということを考えた結果行き着いたところが「レイチェル教官」がやさしくプレイ方法を教えるというアイデアだったとのことです。

またシステム面においてもユーザーの敷居を高くするシステムはたとえ面白い要素であっても採用しなかったとのこと。「F-1レーサーだけで車を作るとレーシングカーになってしまい誰もの乗れなくなってしまう」とモリ氏。自分は、スポーツカーを作りたかったと『BB』シリーズを車に例えてその位置づけを説明しました。また、『ギルティギア』シリーズはフォースロマンキャンセル出来ないと、格闘の醍醐味を味わえないとしながらもそれによって作品自体の敷居を一気に高めてしまったとモリ氏。『BB』シリーズのシステムがこれからどうなるかを明らかにすることは避けつつも、出来る限り多くの人が楽しめるものにしていきたいとこれからの希望を語りました。

また、『BB』シリーズは格闘ゲーマーを意識して開発してきたという点についても言及。たった1、2フレームのラグでも格闘ゲームにおいては致命的であることを前提に、現在は液晶テレビ全盛期になっていることで生じる遅延の対策が重要とPachi氏。先行入力を簡単に出来るようにした点、ならびに硬直中にボタンを押しっぱなしにしているとその指示を受け入れるような調整も施すなどリスポンス面でプレイヤーがストレスを感じないように意識したとのことです。

■コアゲーマーを意識して開発されたチャレンジモード

また、『BB CT』家庭用版で導入したチャレンジモードについても言及。レベル7、8、9になると、開発者である自身ですらクリアはほぼ不可能であることをモリプロデューサーが明かし、コアゲーマーにとって歯ごたえがありそうなゲームモードであることを示しました。一方、「既存のユーザーをないがしろにするという気持ちはまったくない」とPahi氏。キャラクターもコンセプトにおいてそれぞれの強み、弱みを踏まえつつ、どのキャラクターが熱い、寒いという感覚は濃く出しているとのこと。このバランスは前作よりも細かく作りこんでおり、数字の調整にしても様々な使い方を想定し、実際にゲームをしながら作りこんでいったと緻密なゲームデザインを明かしました。

『BB CS』で新登場したキャラクターについて、アーケードにおける使用率が10%にもなるハザマについては開発時からかなり手ごたえがあったとPachi氏。狙い通りというのは語弊があったものの、開発時に実感していた手ごたえにユーザーがこたえたくれたと率直な気持ちを語りました。一方、ツバキはコンセプト的には初心者向けに開発しており、ハザマと比較すると両極端になっているとPachi氏。ただしガードを重ねるときのテクニックなどもありそれを楽しんでいるゲーマーも確かにいるので現状出しているものとしてはベストの状態であると説明しました。

また、日本におけるeスポーツとしての格闘ゲームの可能性について、モリプロデューサーは競技として成立するにはスター選手が必要であると主張。ルールは知らなくても格好いい選手がいる、スター選手が輝いている状況があるとそれに憧れを抱いて入ってくるプレイヤーが出てくると、実際のプロスポーツ界の現状と比較したうえで、格闘ゲーム界でもどんどんスタープレイヤーが生まれ、最終的には格闘ゲームの大会などがテレビ中継されれば、結果として憧れのステージを目指すプレイヤーの増加とともにeスポーツも盛り上がっていくとしました。

この点についてはPachi氏も同意。そのためにもプレイ人口の拡大が重要であり、そのような意味ではまだ格闘ゲームは初期の段階とのこと。これから更に盛り上げていく必要があると述べました。

これらを踏まえ、格闘ゲーマー人口の拡大をさせるうえで重要なのがコミュニティだとモリプロデューサー。開発する側は新キャラクターや新システム、更には新ストーリーの導入など常に話題性を提供していると自身の努力を語りつつも、これらをきっかけに盛り上げていくのがプレイヤーであると訴えました。「開発者として僕たちが出来るのは場を提供するだけ。それをきっかけに盛り上げていくのがプレイヤーだと思っています。僕らは僕らで場を作るように極力頑張っていきます。だからコアゲーマーも黙っていないで、ぜひ新規ユーザーにプレイの仕方を教えてあげてください。」と参加者に熱いメッセージを送っていました。

■後半戦は、関西を代表するプレイヤーが緊張感高まるバトルを展開

講演会後は赤メス氏(テイガー)、と乱レボ氏(カルル)によるレボメスチームと、辻川氏(タオカカ)とかなた氏(ラグナ)の千和香菜チームによる決勝戦が行われました。ゲームセンターa-choのカリスマ店員にして自身も格闘ゲーマー/実況者である火九氏によると、テイガー使いの赤メス氏は爆発力のある攻撃を仕掛けるプレイヤーとのこと。また、乱レボ氏はカルル使いとして老獪なプレイで知られ、得意技は中下段同時攻撃。一方、千和香菜チームの辻川氏は『BBCT』時代からタオカカ使いとして知られ、挑発コンボやほぼ二匹になる連携コンボなどを開発した張本人であるとのこと。また、今年度の闘劇の全国大会の出場も決定しています。またラグナを使うかなた氏も相手を飲み込むような勢いのあるプレイをするプレイヤーで、関西では名のしれているひとりであるとのこと。このように双方とも名の知れたプレイヤー同士の戦いになった決勝戦。最初は、赤メス氏とかなた氏が、そして最後は、乱レボ氏と辻川氏の対戦となりました。熾烈を極めましたが、名誉ある優勝チームは千和香菜。モリプロデューサー自らより表彰され、辻川氏、かなた氏双方大変満足の様子でした。

以上、予選から講演会、そして決勝戦に至るまで終始熱狂の中で終了した今回のeスポーツイベントは、韓国やアジアでの熱狂をその場で垣間見た気分にすらなりました。考えてみればすがやみつる氏の『ゲームセンターあらし』ではインベーダーの時代からデジタルゲームをスポーツとして捉え、大画面を前に多くの人が観戦に興じるという様子を頻繁に描いていました。今回のイベントはそんなひとつの未来の可能性を示したものだったのかもしれません。モリプロデューサーやPachi氏が言われていたように、より多くの人がこの熱狂を理解し新たなゲーム人口の拡大につながるのはそう遠い日ではないのかもしれません。
《中村彰憲》
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