id softwareと言えば、『Wolfenstein 3D』以降、一人称視点のシューティングゲーム、すなわち、FPSというジャンルの立ち上げに大きく貢献した米国テキサスの老舗ゲームスタジオ。その同社が現在最新作『Rage』を最新技術idtech5をベースに開発中とのことで、早速インタビューを行ってきました。 ちなみに、『Rage』はZanimax Media傘下となってからのid software第一作目。というわけでクリエイティブ・ディレクターTim Willits氏に話を伺った。―――Tim Willitsさんは、id softwareでゲーム開発に携わってから何年がたちますか? Tim Willits氏(以下、Tim):もう17年になるね。95年からだから、『Quake』や『Ultimate Doom』からだね。そのときはレベルデザイナーさ。『Rage』では、クリエイティブ・ディレクターをやっているよ。―――クリエイティブ・ディレクターとはどのような仕事ですか? Tim:クリエイティブディレクターは作品の開発進捗に合わせてその役割も変化するんだ。初期段階は、コンセプトやストーリー、レベルフローを詰め、開発の最中はプログラマーとデザイナーたちが共に同じ目標をもって開発を進められるよう調整する役割を、そして開発が最終局面を迎えたときは、PRやマーケティング戦略も考えていなかくちゃならない。―――ご自身の経験を踏まえた業界は如何に変化してきたと思いますか? Tim:すごく変わったよ。いまやゲームは世界で数十億人もの人たちがプレイするマスマーケットのコンテンツだ。消費者もゲームに対する知識が豊富だ。かつて僕らは如何にユーザーを教育していくかが重要だったんだ。FPSの遊び方もイチからね。もはやそのような日々は過ぎ去り、いまは、具体的に自分たちがつくったゲーム作品の面白さを伝えていかなければならない。ゲームシステムという点において他の作品と比較してどの点が馴染みのある要素でどの点が違うのかをね。 また、ゲーム全体の規模も大きく且つコンピュータ処理能力も早くなった。それに合わせ凄く良く出来たタイトルもたくさん生まれている。ゲーム業界はこれからも更に発展するって改めて思うよ。―――御社が常に業界をリードしてきた理由は? Tim:まず、「Doomエンジン」や「Quakeエンジン」をはじめゲームエンジン開発で常に業界をリードしてきた、ジョン・カーマックの存在だよね。彼は先端技術が本当に好きで自分自身をプッシュし続けるんだ。またプログラムチームもね。多分やろうと思えば『Doom3』、『4』、『5』と開発し続けることも出来たと思う。でも彼はそれをしなかった。新たな技術とともに新規コンテンツの開発を決定したんだ。それによってFPSの新機軸を打ち出すためにね。これが僕らの企業哲学なんだ。―――『Rage』で採用されたidtech5は新たにどのような技術が導入されたのですか? Tim:まずは、Mega Textureだね。これによって絵画のように独自のTextureをポリゴンに張り付けられるようになった。だから、各ステージやそれぞれの街の様子等、全く違う雰囲気で描き出すことが出来る。あと、エンジン自体高速で従来は30fpsだったのが、60fpsで画像処理出来るんだ。これはゲーマーにとってより確かなリスポンスを得ることが出来ることを意味する。ゲームにより深く繋がっている感覚を得ることが出来、体験も、よりスムーズになるんだ。 ―――『Rage』はこれまでのid Software作品とは違い、非常に広い空間を体験出来ますよね。 Tim:それもMega Textureが実装されてるからさ。三角ポリゴンのプロセスが優れているんだ。従った、より遠くへと広がる仮想空間をつくりあげることができるようにある。オブジェクトが近づくことでTextureがメモリーで処理され、空間移動がおこなわれることでシステム内を移動してく。それによって広大な空間の生成が可能になるんだ。つまり、必要に応じてTextureを呼び出し、仮想空間に反映することができるわけさ。『Rage』がid tech5を使用して開発された最初のゲームタイトルということになる。 ―――ゲーム体験という視点からこの新技術はどのような形で新たなプレイ体験に貢献しているのですか? Tim:idsoftwareの ゲーム魂を受け継ぐ狭い場所での熾烈な攻防の後に、荒涼とした大地を車でドライブしその空間に浸るといたバラエティ豊かな体験が出来、ユーザーを常にゲームへと引き込むことが出来るようになる点だね。―――対応しているプラットフォームは? Tim:マルチプラットフォーム対応だから、PS3、Xbox360、そしてPCの経験が全く同じになるんだ。デベロッパーにとってはこれまでよりも大きなキャンパス上に自身の想像力に任せてより素晴らしい世界をクリエイトしながら且つ楽しく、レスポンスの速いゲームをつくることが出来る。―――作品としての『Rage』はどのような特徴がありますか? オープニングの雰囲気とゲームプレイの世界が全く違うので驚きました Tim:その世界の広がりこそが重要なんだ。プレイヤーが操るのは、高度文明がまだ全盛期だったころの過去の人物。だからナノテクノロジーで体が改造され、特殊能力を身につけている。でも気がつくと、荒涼とした大地の中で、Authorityという謎の敵と対峙しているんだ。そのような中から、プレイヤーは様々な秘密を探っていくことになるのさ。―――世界が広いということはオープンワールド型でしょうか? Tim:かなり物語中心になるね。つまり、オープンワールドというよりは物語の展開とともに広大な世界を移動することになる。当然オープンワールド的要素もあるけどね。だけど『Rage』の良さはあらゆる面で限界を試していることだね。世界観づくりにおいてはより説得力がある壮大な世界背景づくりに注力し、A.I.はよりロバストで賢く、ゲームデザインについては、レーシングや車体同士の戦闘システムの開発など、一点が抜きん出て優れているというよりはトータルで面白いんだ。『Rage』に携わって誇りに思うことは、全体的にハイクオリティに出来あがったということさ。―――では、最後に日本の読者にひとことメッセージをお願いします Tim:僕らは『Rage』が完成間近を迎え、本当にエキサイトしてるよ。当社のリードアニメータが日本人なんだけど、彼によればローカリゼーションもうまくいったとのことだ。声優の演技が素晴らしかったってね。だから、日本の皆さんにもしっかり楽しんでもらいたいな! ―――ありがとうございました!
《中村彰憲》
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