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【GDC 2013】炎上や回収を回避して多言語展開を進める秘訣とは?マイクロソフトのベテランがローカライズを語る

GDCのローカリぜージョンサミットで3月26日、マイクロソフトのZeb Wedell氏が講演し、現状の課題について整理しました。講演は教科書的によくまとまった内容で、すべてのゲーム開発者が知るべき内容となっています。

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商業ゲームと同人ゲームの違いはレーティングの有無だと言えるかもしれません(極論ですが)。1994年に米ゲーム業界でESRBレーティングが制定されて以降、世界各国でこれに類する制度が次々に制定され、運用されてきました。その一方で炎上騒ぎを起こしたり、回収指定を受けたりするゲームも少なくありません。デジタル配信プラットフォームの増加に伴い、こうしたリスクはさらに高まることが懸念されます。

GDCのローカリぜージョンサミットで3月26日、マイクロソフトのZeb Wedell氏は「Leveraging Geopolitical Content Review & Worldwide Age Ratings Submissions」と題して講演し、現状の課題について整理しました。教科書的によくまとまった内容で、すべてのゲーム開発者が知るべき内容だったと言えるでしょう。

1976年にアタリが業務用で『Death Reace』をリリースし、社会問題化して以降、すくなくとも70作品が炎上したり、回収騒ぎに発展したりした・・・。Wedell氏はこのように語ります。2001年にマイクロソフトが発売した初代Xboxはペアレンタルコントロール機能が盛り込まれた初のゲーム機となりましたが、それでも多くのトラブルが発生しました。レーティング制度だけでは、社会との摩擦を回収しきれないからです。

代表的なものには、コーランの一節を引用していたとして、全世界で回収指定となった『格闘超人』があげられるでしょう。他にも『グランド・セフト・オート:サンアンドレアス』『マンハント2』などが問題を引き起こしています。『フットボールマネージャ2005』では、台湾とチベットを独立国として描写するという古典的なミスを犯し、中国で発売禁止となりました(立場によって見解は異なると思われますが)。『ポケモン』もサウジアラビアでカード交換が賭博に相当するという理由から発禁処分を受けています。このように思わぬ理由で社会問題化するリスクが広がっています。

「地政学的な視点からコンサルティングができる専門家などを雇用して、開発中に専門的なレビューを受けることは非常に重要です。テストチームは事前に過去の事例について目を通し、すべての問題を引き起こす可能性のある部分をチェックしなければなりません。また事例を共有し、データベース化することも重要です」とWedell氏は語ります。

こうしたリスクヘッジに加えて、市場ごとのレーティング制度をクリアすることも必要です。現在、世界には30種類の映画・テレビに関するレーティングと、11種類のゲームのレーティングが存在するとWedell氏は指摘します。日本のCERO、米国のESRB、欧州のPEGIは有名ですが、他にも各国でさまざまなレーティングが存在し、問題視されるポイントや優先順位も異なっています。また規準は常に変化していきます。

特にセンシティブなのがMature(日本ではCERO DまたはZに相当)タイトルです。またESRBのT(13歳以上)区分も、オーストラリアではM(17歳以上)区分となり、ブラジルでは14歳以上になるなど、国によって細部が異なるため、海外展開の際には注意が必要です。

これはWedell氏が示した「審査時にチェックされる重要度」の表ですが、これを見るとドイツのレーティングの厳しさが群を抜いていることがわかります(「その他すべて」というのは、いささか大げさな表現ですが、実際にドイツは規制が厳しいことで知られています)。こうした規準の善し悪しについて議論するのは批評家などに任せて、作り手側としては現実的な対応を行うことが重要でしょう。

このほか、近年になって関心が高まっているのが、アプリに関する審査です。コンソールと異なり審査基準がわかりにくいため、時には恣意的とも感じられるリジェクトが発生することもあり得ます。GJCTQ(ブラジル)で課金が数ヶ月凍結、FBP(南アフリカ)では課金システムが変更となり、対応まで課金が凍結―といった昨年実際にあった事例が紹介されました。

最後にWedell氏は、

・レーティングシステムのナレッジを収集し、常にアップデートしていく
・たとえタイトルを発売しなくても、レーティング機関の情報に目を光らせておく
・開発スケジュールに審査と修正対応の期間を最初から織り込んでおく
・審査中に修正を行うことがないように、完成版を提出する

といったことTipsにあげました。

そのうえで「関係性と信頼性構築に関する努力を怠らずに、自分たちのゲームを適切なレーティングで発売できるように配慮し続ける」ことが重要だとまとめました。今やAAAタイトルにおいて20カ国語、30カ国語は当たり前という状況の中、たとえ障害があっても力強く乗り越えていく姿勢に満ちた講演だったといえるでしょう。
《小野憲史》
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