何を言っているのかわからないと思うが、ありのままに今起こったことを話すぜ!などと思わず言ってしまいたくなるような、ゲーム業界を震撼させる衝撃の問題作がE3 2015で発表されました。カプコンがProject Morpheus向けに出展した技術デモ『KITCHEN』です。デモは古めかしいキッチンで椅子に座ったから始まります。プレイヤーが実際にゲームの登場人物として仮想世界に存在する、VRならではのシチュエーションです。目の前には三脚に固定されたカメラがあり、コントローラを持たされた手を伸ばすと、カメラに当たって倒れました。両手両足を縛られ、動くことができません。冷蔵庫の前にはスーツを着た男性が横たわっていました。目を覚ました男は床に落ちていたナイフを拾い、自分を自由にしてくれようとします。しかし、突然背後から出現した女性に刺し殺されてしまいました。女性は黒髪を振り乱しながら自分の方に近寄り、持っていたナイフをプレイヤーの太ももに突き立てます。(もうね、ここで、えーっ! な、なんだってー! です)男性を壁の奥に引きずっていく女性。嫌な音が続き、男性の断末魔が響き渡ります。こちらに投げられてきたボールのようなものを見ると、男性の頭部でした。(ちなみに、この間コントローラをガチャガチャやっているものの、まったく自由になる気配がありません。下を向くとナイフに刺された左足が血ににじんでいます。痛くないのに痛いような、変な感じです)少しの静寂の後、いつの間にかプレイヤーの背後に回った女性が、血まみれの両手で目隠しをしてきます。血で赤く染まる両手。もてあそぶように顔をぐりぐりした後、再び目の前に現れた女性は、ナイフをこちらの胸に突き立てました。ああ、死んでしまったのだと理解したのは、画面が暗転してデモが終了した後です。ふつうゲームってプレイヤーが環境に対して能動的に働きかけていくことで先に進んでいきます。しかし、この技術デモはまったく逆。最初から最後まで椅子に座ったまま絶命してしまいました。まさに究極のマゾヒスティックな体験であり、ゲームならぬコンピュータエンターテインメントだといえるでしょう。本作のポイントは体験を通して視界が大きく変化しないことです。そのためか、VR酔いはほとんどありませんでした。ただ唯一、死ぬ直前に頭をぐいっとねじられたときは、実際の頭は動かないのに視界が急に移動したので、少しだけ不快感があったことを付記しておきます。でも、まあそれくらいでしょうか。興味深いシチュエーションであり、今後は椅子に座って会話するだけのVRゲームというのも、今後あり得るかもしれません。一方でVRコンテンツには現状、触覚や痛覚がありません。しかし、だからこそ実現したVRコンテンツだともいえます。切り刻まれる感覚をリアルに体験したい人など、いないはず・・・ですからね。なお、スタッフクレジットには「MASACHIKA KAWATA(川田将央)」の名前がありました。『バイオハザード5』などを手がける名物プロデューサーです。もしかすると、この技術デモは後に続く何かなのかもしれません。ゲーマーはゲームの中で何千回、何万回と死んでいます。しかし、その中でも最も印象深い「死」を、VRという技術で仮想体験することができました。もしかしたら、VRにとってプレイヤーの「死」は究極のモチーフなのかもしれません。
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