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「シンプルに、楽しいゲームを作っていく」ネクソン代表オーウェン・マホニーが語るゲーム業界の未来とは

G-STAR 2016会期中に同社の代表取締役社長オーウェン・マホニー氏にインタビューを行い、今後のNexonの戦略、日本を含めたゲーム業界の未来をどう見ているのかを語ってもらいました。

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――差別化や興奮させる要素としてe-Sportsという手段があります。自分がゲームをできなくても見てて楽しめます。日本でも2年ほど前からブームが来ていますが、ネクソンとしてはe-Sportsに対して考えていることはありますか?

マホニー:e-Sportsに関しては私達も長年取り組みを行っている領域であり、韓国のカンナムにNEXON ARENAという韓国最大規模のe-Sports専用の施設を保有しており、そこでは年間200回程度のイベントを行っています。キャパシティは500人ほどですが、毎回満員です。時々韓国の芸能人を呼んでゲームを紹介したりというイベントも開催し、かなりの頻度でイベントの放送もしています。そのため、e-Sportsに関しては支持しています。

日本と韓国においてはe-Sportsについての状況が異なっていると思っています。韓国では長年(20年ほど)にわたり、PCオンラインゲームがプレイされてきていますし、土台が違います。例を挙げると、韓国では15年前でもPCのRTSゲームが放送されていたという事例もあります。そう考えると、韓国においてはe-Sportsは新しいものではありません。

また、ゲームの好みも日本と韓国では少し異なっており、韓国ではオンライン対戦(PvP)が人気ですが、一方日本ではあまり人気はありません。そういった観点も含め、日本においてe-Sportsでこれからどう発展するかも期待しています。

――韓国の方々はe-Sportsをe-Sportsと捉えていないと思っています。どのようにすれば日本でもよりe-Sportsが浸透すると思いますか?

マホニー:正直なところ、明確な答えはないでしょう。ただし、プロセスに関してはお話できるところがあると思っており、e-Sportsを実際に試してみることのできる(=触れる事のできる)場の提供というプロセスが必要だと考えています。その例の1つとして、e-Sportsの体験ができるポップアップブースが挙げられます。この方法が日本で確実に成功するかどうかは分かりませんが、ゲームを体験してもらって直接ユーザーに感想を聞くこともできますし、より多くの人にe-Sportsに触れてもらえるということは大事だと考えています。

――ゲームに対するハードルはかなり下がり、ゲームをプレイしてくれるユーザーが増えたと思います。ビジネスとしてゲームを制作する中で、カジュアルユーザーをコアユーザーに育てるにはどうすれば良いと思いますか?

マホニー:少し話が外れてしまうかもしれませんが、心理学や脳の病気(うつなど)を診ている方たちが研究している「ハピネス」(何が人を幸せにするか)というジャンルに関する例を、1つ挙げさせてください。この研究は20年ぐらい前から行われていて、長い歴史を持つ心理学の分野では比較的最近の研究にあたります。その研究発表の中にあったのが、戦争や不安定の家庭状況といった不遇な環境下にいる人たちの方が、安定的な生活を送っている人たちよりも強く幸福感を感じている、という研究結果です。

例えば、収監者が社会貢献活動の一環としてチームで建築作業などを行い、建物を完成させると、収監されているという過酷な環境下にあるため、建物を建てるというシンプルな目標を達成しただけでも幸福を感じることができます。この現象は、アスリートや作家、音楽家などが、1つのことに集中して他の状況、時間を忘れることで、幸せを見つけることができる状態と同じであり、「ステートオブフロー(State of Flow)」と言われています。


処理能力と難しさがちょうどマッチした時に「ステートオブフロー」の状態に到達することができます。簡単すぎても難しすぎても良くありません。

ゲームに話を戻しますが、多くのゲーム会社が言っている「Easy to learn、Hard to Master」が重要だと考えています。初期段階で難易度が高すぎると、ユーザーが離れてしまいます。日本のゲームで例を挙げると『スーパーマリオ』シリーズが良い例で、5才児でもできるような簡単なプレイが特徴です。そのため幅広い層のユーザーを獲得しています。ただ、『スーパーマリオ』でもハイレベルになるとどんどんと洗練されて難易度が上がっていき、実際私の子供は私よりもハイレベルなプレイをしています。

ここまでお話してもうお気付きかもしれませんが、心理学を含む一連の話では、課金やマネタイズ、DAU(デイリーアクティブユーザー)ではなく、いかに楽しいゲームを提供して、長年に渡って自分たちのファンになってもらうかが大事かという事をお話してきました。これこそが、ゲームビジネスにおいて、重要なことだと思っています。

――ネクソンブースのスローガン「Life Beyond」の意味はなんでしょうか?

マホニー:大きく2つあります。1つ目は「現実を超えていく」という意味で、これまで見たことのない・体験したことのない次元へ来場者を連れていきたいという意味です。2つ目は、元々ネクソンが使っていたスローガンで、原点に戻ろうという意味も込めています。

――日本のゲーム業界に対しての意気込みを教えてください。

マホニー:とてもシンプルです。私は日本人ではなくアメリカ人ですが、日本で多くの時間を過ごしています。日本で感じたことは、日本の友人は芸術に関して素晴らしい感性を持っています。欧米の友人と比べても突出しており、特に感受性が優れていると感じています。そういった中で、ネクソンを含め私達ゲーム業界に携わっている人たちは、優れた感覚を持った日本人に対して、プラットフォームにかかわらず、ユーザーを満足させられるようなクオリティのゲームを提供できていないと思います。素晴らしいゲーム、すなわち楽しくて差別化されたゲームを提供できれば、日本のユーザーはついてきてくれると信じていますし、長年に渡ってゲームを楽しんでもらえると信じています。2016年下半期以降、日本では月1本のペースで新作ゲームの配信を開始しています。これだけ速いペースで新作を配信していることもあり、運用チームやマーケティングチームなどが非常に頑張ってくれています。市場のニーズに合った適切なゲームを選定して日本のユーザーにお届けすれば、成功はついてくると信じています。


――ありがとうございました。楽しみにしています。
《森 元行》

森 元行

海外のゲームショウにてeスポーツの大会に出会い衝撃を受け、自身の連載「eスポーツの裏側」を企画・担当。プロプレイヤーはもちろん、制作会社や大会運営責任者、施設運営担当者など「eスポーツ」に携わるキーマンに多くのインタビューを実施。 2022年3月 立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 博士課程前期課程(修士/MBA)修了。

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