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【インタビュー】『人喰いの大鷲トリコ』上田文人氏に訊く―世界観は最後に作る

美しいグラフィックで描かれる、独特の透明感に包まれた世界で、大鷲トリコと少年が冒険をするPS4向けアクションアドベンチャーゲーム『人喰いの大鷲トリコ』。今回は、監督・ゲームデザインを務めた上田文人氏にインタビューを行いました。

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──明確なストーリーを描いてないのには、理由がありますか。

上田: 2つ理由があります。ひとつは、細かい設定を伝えることに終始してしまうとカットシーンやテキストが増えてしまうのでそれを避けたい。もうひとつは、自分自身が俳句や短歌のような表現が好きということです。季語はそれ自体の意味にくわえ、受け取る側の経験や記憶によっていろいろなことを想像させます。ゲームのなかでもストーリーをそのように受け取ってもらえればいいなと思っています。

──本作のカメラワークについて、絶妙な構図から見られることが多かったのですが、上田さんが意図されたものだったのでしょうか。

上田: 決まった構図で見せたいという気持ちはありますが、ゲームプレイのなかで自然にそのようなビジュアルになってくれればいいな、という思いがありました。通常のゲームの場合、カットシーンはカメラマンの役割を担うスタッフがいるのですが、トリコの場合は「少年なめのトリコ」や「背景なめのトリコ」など、どこに少年やトリコがいても、プログラムで画になるように生成しています。そうして、できる限り完成された構図で見えるように、プログラムされています。

──エリアを作るのは大変でしたか。

上田: 過去作品のなかで、『ICO』は無駄な場所がない閉鎖空間で行うパズルだったため、エリアを作ることへの苦労はありませんでした。『人喰いの大鷲トリコ』では、僕自身がゲームプレイのなかでの移動にあまり意味を見い出せない時期でもあったため、それならば無駄な移動は極力少なくしようと思い、エリアデザインをしていました。小さな少年の細かな移動と、トリコの巨大さを利用したダイナミックな移動との対比を印象的に見せたいという狙いもありました。

──対比構造はエリアデザインにも反映されていますか。

上田: はい。最も意識したのは、巨大な生物に合わせたレベル設計ではなく、そこに存在していたのは人間なので建造物も人間サイズである点です。そうした空間を作ることで、巨大なものが移動する爽快感やスケール感が出るかなと考えました。

──谷が舞台だったので、風の表現がとても豊かなのが印象的でした。

上田: 風については、本作で押さえておきたいポイントのひとつでした。風が単に吹いているというのではなく、気持ち良い風をプレイヤーに感じられるようなものにするために、実はかなり複雑な計算をして作っています。トリコも風の吹く方向によって毛の逆立ちが見られるなど細かく表現できていると思います。ぜひ風の気持ちよさや湿気などまで感じていただけたらうれしいです。

──音楽へのこだわりはありますか。

上田: 『ICO』のときはあまりゲームっぽくないものにしたかったので、当時のゲーム音楽にはまだ珍しかったコーラスを使いました。『ワンダと巨像』では、民族楽器などを取り入れた無国籍な世界になじむような音楽を使用しています。『人喰いの大鷲トリコ』では、少年と動物という直球でわかりやすいテーマだったので、音楽でそのあたりを強くアピールしてしまうと表現的にありきたりなものになってしまうと思いました。そのため、本作では盛り上げるというより抑えの効いた控えめな音楽を意識しています。

──ところで、上田さんは創作を行う上で、普段どのような物事からインスピレーションを受けたり、インプットをされているのでしょうか。例えば、映画ですとか。

上田: おそらく、僕はみなさんが思われているイメージとは少しちがっていると感じていて、本当に”普通”です。もちろん映画やテレビも観ますが、普段の生活にある身近なものを見たり聞いたりして、それらごく普通のものを分け隔てなく組み合わせられることが自分の得意とする部分だと思っています。

──作品の美しい世界観について、なにか原体験があるのでしょうか。

上田: 世界観や雰囲気の作り方についてはよく質問されますが、自分はあまりわかっていません。ゲームなので、まずはルールやデザインがあり、ハードの表現力があって、そのなかで最適なものを選択していった結果、そういう雰囲気、世界観になるというのが正直なところです。

──具体的にはどのように作られているのでしょうか。

上田: 例えば、霧がかった風景は遠くを見せないための苦肉の策、廃墟という舞台は必要な場所に階段を設置したり壁を壊して光を差し込ませてプレイヤーを誘導する、といったレベルデザインとしての自由度の高さから選択しています。ゲームの制作は、クリエイターが自由に世界を表現できるものではなく、技術的な制約や、ハードのスペック、スタッフの能力など、そういった既に決まったパズルのピースの形があり、それをビデオゲームという枠のなかにはめていくようなものなのです。そのため、どこかに柔軟性があるピースがないと枠のなかにはぴったりとはまりません。自分にとっては柔軟性があるピースが、世界観やゲームの設定部分にあたります。世界観やストーリーからスタートすると思われがちですが、実はどちらも最後に作っています。そうしないとうまく枠にはまらず完成度の高いものにはならないと思っています。

──上田さんが設立したスタジオ「gen DESIGN(ジェン・デザイン)」について教えてください。

上田: 設立した目的としては、よりクリエイティブに集中し、いろいろなことにチャレンジしていきたいという思いからです。また、『人喰いの大鷲トリコ』規模のタイトルでは数十人から百人以上のスタッフが必要となるため、どうしてもフットワークが鈍くなってしまいます。それを避けるため制作部隊とクリエイティブを分けたかったんです。新スタジオではこれまで一緒に長くやってきたスタッフもいるので、意思の疎通がスムーズにできるのもメリットです。

──『人喰いの大鷲トリコ』の制作を終えて、今後の計画や目標はありますか。

上田: 『人喰いの大鷲トリコ』を作っているなかで、こういうゲームを遊びたい、作りたいというのはありました。ただ、『人喰いの大鷲トリコ』を生み出すのに苦労したこともあり、すぐに次、とは考えていません。ゲーム制作というのは多くの人たちの人生を巻き込むものなので、今あるアイデアを、その覚悟を持ってしても作ろう、作りたいという状態まで育てている状況です。
もちろん、次はそんなに時間をかけずに作れればと思っています。

──ファンも上田さんのこれからに期待していると思います。本日はありがとうございました。

(C)2016 Sony Interactive Entertainment Inc.
《カミヤマ》

ゲームを買うのが生きがいです カミヤマ

家庭用ゲームが大好きなインターネット老人会の積みゲーマーです。毎週木曜日を楽しみに生きています。

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