■「うまのお坊さん」こと元競馬関係者のじろーさんと、「ウマ娘」の出会い

──「ウマ娘」を視聴するきっかけになった息子さんとのやりとりや、初めて「ウマ娘」のアニメを見た際の第一印象について教えてください。
【じろーさんのご返答】
実は、このツイートの出来事は半年以上前のことでした。息子がふいに「お父さんがやっていた(関わっていた)有名な馬って何だったけ?」と尋ねてきました。今まで馬に興味を示したことが無かったので驚いたのを覚えています。「エルコンドルパサーとナカヤマフェスタだよ」と答えると、非常に嬉しそうでした。おそらくこの2頭のことは覚えていたけど、ちゃんと確認をしたかったのだと思います。それからどんな馬だったのかを聞かれたので答えました。
2頭ともフランスの凱旋門賞で2着だったこと。
これは現時点で日本馬の最高着順だったこと。
エルコンドルパサーは本当に強くて、僕は史上最強馬だと思っていること。かつ気性も大人しくて、賢くて、丈夫で全てにおいて優等生だったこと。
ナカヤマフェスタは本気でちゃんと走ってくれさえすればとんでもない強い馬だったこと。
けど気性が荒くて一回へそを曲げると全くやる気を出さなかったこと、などを話しました。息子はとても興味を持って聞いてくれていました。さらに両馬のレース適性、脚質なども答えました。ここまで聞かれれば、当然「なんで?」と思います。今まで何度か競馬場にも連れていき、さらには何頭かの勝ち馬記念写真にもおさまっているのにも関わらず、全く競馬に興味を示していなかったのですから。
おそらくゲームだろうとは思いました。ダービースタリオンかな、と思ったのですが意外な答えが返ってきました。「ウマ娘」だと言うのです。なんとなくは知っていました。実馬の名前がついた可愛い女の子のお話、くらいの印象でした。
ちょっとどんなものか見せて欲しいというと、息子は動画サイトのアニメを見せてくれました。この時息子は、少しためらっていたように感じます。僕はバリバリ体育会系の脳筋オヤジだったので、馬鹿にされると思ったのではないでしょうか。
見せてもらったのは、いきなりレースのところでした。まずゲートに女の子が入っている、その絵が衝撃でした。まさか本当に競馬場のコースだとは。本当に女の子が走っているアニメだとは思ってもいませんでした。
「えー! こういう感じなの!」
すぐにレースがスタートし、特に息子の解説はありませんでした。まもなくこのレースは毎日王冠だ、と分かりました。サイレンススズカとエルコンドルパサーが走っていたからです。
展開、位置取りがそのまま実際のレースと同じでした。見ながら、あの毎日王冠を思い出していきます。エルコンドルパサーが追いすがろうとするが全く追いつけないシーン。サイレンススズカが突き放しにかかるシーンなどは、鳥肌が立つほどでした。
「そうそうそう! こんな感じ! こんな感じだったよ!」
最初にアニメを目にした時と同じ言葉を口にしていました。しかし意味合いは、戸惑いのものから感心、感動へと変わっていました。
「けど、お父さんイヤでしょ? こういうの」
レースシーンが終わり、パソコンを閉じながら息子が聞いてきました。父親が関わっていた馬が擬人化されている事。それが何より可愛らしい女の子になっている事。そういったことが、真剣に取り組んでいた人には受け入れがたいのではないか。そういった意味での問いかけだったと思います。
僕の答えは「イヤも何も、感動しちゃったからなぁ」です。
「こんなに良く作ってあるとは思ってなかった」と正直に言いました。「製作者はよほど競馬が好きなんだろうね」というと、息子は「そうなんだ! やってた人がそう思うんだ!」と嬉しそうでした。